33 直
武藤視点。
ちょっと長め。
武藤視点
「ぎゃあああああっでぇぇぇぇたぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
襖から覗く白い手と爛々と光る二つの目。
「ひ~っ!山姥――――っ!!」
「あら、失礼しちゃうわ」
明るい声がし、襖がスッと開いた。
現れたのは山姥……ではなく、茶色いふわふわの髪をした着物の女性だった。
「話は全部聞かせてもらったわ!」
「めぐみ……」
「うふふ。ごめんなさいあ・な・た」
あなた《・・・》?
ということは……。
「つ、翼さんのお母さん……」
「はい。翼の母です」
改めて正座をして頭を下げたお母様。
…………
……し、しまったーーーーっ!さ、さっき山姥って叫んで……。
「あ、は、初めましてお母様。武藤旭と申します。さ、先ほどは失礼いたしまし――」
「うふふ。私あなたの母親になった覚えなくてよ?」
「!?も、申し訳ありません!!」
や、やばい。ものすごく怒っている。
好きな子の家族を怒らせてしまうとは……嫌われるだろうか……。
「……めぐみ」
「うふふふふっ!冗談よ、冗談。私のことはめぐみさん、って呼んでね。旭君」
「は、はい!申し訳ありませんでした、めぐみさん!」
畳に額を擦りつけて謝る。
……ん?オレ、からかわれた?
ちらりと頭を少しだけ上げて見ると、お母様……めぐみさんが着物の袖で口元を押さえて「うふふうふふ」と笑っていた。その瞳には悪戯っぽい光が……。
「めぐみ……」
「体調はもう、大丈夫よ。あなたが一日ついていてくれたから」
「……」
「うふふふふっ」
今度は瞳にハートマークが見えるようだ。
どうやらこの二人、ラブラブ夫婦――――
「ところで旭君」
「は、はい!」
今度は逆にびしっと背筋を伸ばすと、めぐみさんはニコリと笑った。
「翼ちゃんには、どんな告白をしたの?」
「……え、え、ええええぇ!?」
顔に熱が集まるのが分かる。
ここには好いた子の両親。二人に向かって、まだ彼氏にもなっていないオレが告白の言葉を言えと?
何の拷問だ!!
「あら、さっきの勝正さんへの愛の告白より恥ずかしいの?」
…………
確かに!
オレさっき何言っちゃってたんだろう!?
『一目惚れ』とか、『守りたいんです』とか、プ、プロポーズじゃないんだから!
い、いや、いずれは?そんなことになるかも……な、なったらいいなぁとか、思ったり思わなくなかったり……。
「お~い、旭く~ん」
「ハッ!」
「うふふ。幸せそうな顔でトリップしてたけど、どんな夢を見てたのかな?」
「そ、それは……」
ちらりとお父様の方を見ると、ギラリと睨みつけられた。
こ、これは目つきが悪いだけじゃない。本当に睨んでいる。
へ、下手な事言ったら切られる!
「べ、べべべべ別に、特に何も!!」
「ふ~ん。ま、いいわ。それで、告白の言葉は?」
ズイッとワクワク顔で身を乗り出すめぐみさん。
い、言えるわけない。
帰る生徒で溢れかえる放課後の校庭で呼び止め、
『覚えておいてくれ。オレはあなたを愛し続ける男です』
なんて叫んだことが知れたら、恥ずかしすぎて生きていけない……。
「素敵!!愛し続けるですって!!」
し、しまったーーーーーーっ!!声に出してたーーーーっ!!!!
再び畳に額を擦り付けると、勢いが付きすぎて、ゴンッという音がしたが、必死のオレには痛みも感じなかった。
「も、もも、申し訳ありません!みんなの前で大事な娘さんに恥をかかせるようなことを……」
「あら、恥と思う必要はないわ」
「え?」
顔を上げると、めぐみさんは相変わらず笑みを浮かべていた。
「確かに、空気読めよ、とか思わなくもないけど……」
グサリと胸に突き刺さる『空気読めよ』。
だが……と、めぐみさんは続けた。
「あの子には、真っ直ぐで愚直で率直で馬鹿正直で適切な言葉だったように思うわ」
……?褒められている?
首をひねるオレに、めぐみさんは陽だまりのような笑顔を向ける。
「あの子は恋愛にかなり、鈍いから。馬鹿みたいに真っ直ぐな言葉じゃないと伝わらないのよ」
「は、はぁ」
「恋愛は素敵よ。誰かのことを思うだけで、どちらも生きていると感じられるから」
「??」
めぐみさんの言葉は難しくって、オレには分からない。けど、告白して怒っていないことは分かった。
正直オレも恋愛初心者だから(チェリーって呼ぶな!)今はちゃんと理解できないけど、いつかは理解したいと思う。
一つひとつ、理解できることが増えていく。それが、成長なのかなって思うから。
ちょっと真面目に締めてみました。
~おまけ~
め「あ、そうだ。足の治療に来たんだった。はい、氷」
旭「……」袋の中で氷が解けて水になっている。
め「あら?」




