31 何
お待たせしました。
告白の後。またも不幸男に試練が……。
武藤視点
オレは今、だだっ広い畳の部屋で一人正座をして待っている。
今、オレの頭の中には一つの言葉しか浮かんでこない。
何でこうなった!!??
ことの発端はあの告白なのだと言える。
『覚えておいてくれ。オレはあなたを愛し続ける男です』
今思えば「何しちゃってんのオレ!?」って感じだ。
あんな大勢の前で告白して、彼女を大衆にさらして、恥をかかせたようなものだ。
最大の疑問はその後。
彼女はしばらく固まったあと、オレの鞄を半ば奪うように持ち、「ついてこい」と言って歩き出したのだ。
どこに行くのか聞きたいが、勢いで告白した手前、声をかける勇気がなかった。
そういえばその時の彼女、やたらゆっくりと歩いていた。もしかして、怪我しているオレに気を使ってくれていたのだろうか。
ということは、あの告白で少なくとも嫌われていないということで……。
いや、分からない。もしかしたら恥をかかされたのを怒って……。
いや、彼女は怒るのなら自分で叩きのめすはずだ。
……しかし、この状況は――。
スーッ
(ビクッ)
障子が開き、思わず姿勢を正す。
やってきた人がオレの前にやってきて、座布団に胡坐で座る。
着物を着て、猛禽類を思わせる瞳でオレを睨みつけている人は――――
「翼の父、本田勝正という」
やっぱりお父様でしたーーーーーーーーっ!!!!
や、やっぱりいるよねー。ここ彼女の家だし、外から道場ぽいものが見えてたし。
どうしてこうなったんだろう。
そ、それよりも、ご、ご挨拶だ。
「は、初めましてお目にかかかります。オ……ぼ、ぼく、本田さ……つ、つつ、翼さんの学友で、武藤旭と言います」
畳に手をつけ頭をさげる。
「……」
「……」
頭を下げたまま沈黙が漂った。
ど、どうしよう。他に何か言わなければならないことがあっただろうか。
ハッ、もしかして、お父様はすでにオレの告白のことをき、聞いているのではないか!?
だとしたら、このまま黙っているのは駄目だ!
「も、もう聞き及んでいるかもしれませんが、ぼくは先ほど翼さんに告白しました。まだ彼女の気持ちを聞いていませんが、返事はどうあれ、これからの学校生活をともに歩んでいきたいと考えています」
「……何?」
「え?」
顔だけあげて見ると、ものすごく眉間にしわを寄せていた。
ひ、ひぃ~っ!やっぱり怒ってる!?
慌てて顔を戻し、額を畳に擦り付ける。
「何故、あの子か」
「一目惚れです」
雰囲気が怪しくなってくるのを肌で感じ、急いで言葉を続ける。
「ぼくと翼さんが初めて会ったのは、ぼくがカツアゲされている時で、彼女に救われました。男が女性に助けられるなんてとおっしゃるかもしれませんが、生憎ぼくは武道の心得はありませんし、喧嘩慣れをしているわけではありません。なので、彼女がピンチになった時、同じように助けることはできません」
一呼吸置き、頭を上げてお父様を見る。
「しかし、それでもぼくは助けたいと思いました!凛としていても、常識を知らないというか、どこか不安というか……。と、とにかく、彼女の心を、生き様を、守っていきたいと思ったんです」
お父様は無表情。瞳を閉じ、貝のように黙っている。
オレは判決を待つ罪人のような気分でお父様の判決を待った。
そして、お父様の瞳が開かれ、見透かすような目がオレを睨む。
彼女とそっくりの、鋭い目で。
『う~ふ~ふ~ふ~ふ~』
「な、何だ!」
怪しげな笑い声が聞こえてきた。
現在夕方。つまり逢魔時。ここは風情ある日本家屋……。
ももももももももしかして!
すーっと障子が滑る音がし――――
「……」
「(ニヤリ)」
「……ぎゃあああああっでぇぇぇぇたぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
告白の返事をもらう前にあいさつという展開に。
不憫な子(涙)。




