番外編 リョウ
不幸男の親友、鈴井亮介視点の番外編。
どうも、初めまして。鈴井亮介です。
え~、作者が旭について話せっつうんで簡単に話します。
奴は不幸男です。
…………
何?もっと話せ?
あー、じゃぁ、俺と不幸男の出会いから。
※※※※※※※※※※
俺があいつと初めて会ったのは幼稚園の時だ。年長組で同じ組だった。
餓鬼のころの俺は別に友達を作ろうとも思わなかったし、欲しいとは思わない、生意気な餓鬼だったよ。
今でも覚えてる。あいつが俺に話しかけたのは遊び時間の時。
俺はいつも通り一人木の下で本を読んでいた。すると、
「ねぇ、きみ。なんでいつもひとりなの?」
声をかけられ顔を上げると、かなり近い所に逆さまの顔。
「うわっ!」
流石の俺も驚いた。
いきなり目の前に逆さの顔があったのだ。誰だって驚くだろう。
「ねぇ、なんでいつもひとりなの?」
「……かんけいないだろ」
すぐに冷静さを取り戻して冷たく言ったものの、そいつは「え~っ」膨れて言った。
「もったいないよ。それじゃぁつまんない!」
「べつにひとりでもたいくつしない」
「うそ!」
別に嘘ではなかった。本を読めば退屈しないし、他の子に合わせて駆け回るなんてごめんだった。
なのに、この逆さまの子はそれを嘘だという。俺は怒りを覚えた。
「うそじゃない!」
「うそだよ!だって、わらってないじゃないか!」
逆さまの子が手を伸ばし、俺の両頬を引っ張った。
「ずっとみてたけど、わらったところみてないよ!だってひとりなんだもん」
「へ?」
「ひとりだとね、わらえないんだよ?わらったりするのって、ほかのひとがいなくちゃできないんだよ?」
そういえば、俺が最後に笑ったのはいつだろう。
俺の両親はもういない。二人とも結婚記念日に出かけたときに事故にあって死んだ。
弟二人に妹二人、俺を含め五人の子どもを残して死んでしまった。泣き叫ぶ弟たちを前に、俺は誓った。両親の代わりに俺が弟たちを守ると。俺はお兄ちゃんなのだからと……。
その時からだろう。笑わなくなったのは……。
「っ……う、うるさい!おまえにかんけいない!」
思わず泣きそうになり、ほとんど八つ当たりで怒鳴り、その場を去ろうとした。
「まって!」
本当なら、止まることはなかった。しかし、その叫び声がものすごく必死で切実だったので、思わず止まって振り向いてしまった。
そんな俺に、あいつは真剣な表情で言った。
「助けてください」
木に服が引っかかって降りられないんです。と後半は恥ずかしそうに言った。
唖然としていると風が吹き、くるりと回って背をむいた。
「っ!!?」
背をむいた瞬間、見えたのは可愛い肌色のお尻。どうやら引っかかっているのはパンツのようだ。
「……」
「み、みないで~」
「……ブッ」
我慢できずに吹きだしたらもう駄目だった。込み上げる笑いを抑える事が出来ず、笑いすぎて腹が痛くなるほど声を上げて笑った。
その声を聴きつけた先生たちが駆けつけてぶら下がったあいつに悲鳴を上げていたが、その間にも俺は笑い続けた。
それからことあるごとに問題を起こすあいつに笑い、もう俺は一人じゃなくなった。
小学校に入っても不幸なことになるあいつを見て、当時のクラスメイトはあいつを『不幸男』と名付けた。
ぴったりすぎてまた笑えた。
いつも不幸に見舞われるあいつに積極的に近づくやつはいないと思われたが、あいつはただの不幸男じゃない。
努力する不幸男だ。
だからあいつの周りには人が絶えない。不幸に見舞われながらも自分を不幸だと落ち込まず、いつも前に進む姿に、みんな魅かれる。
名前の通り、『朝日』のようなやつなのだ。
そんなあいつが恋した侍の娘。
急いで教室を出て行ったあいつに手を振りながら、俺はこれからどうなるのか楽しみでしょうがない。
本田翼という娘は一筋縄ではいかないだろう。どこか俺達とは違った空気を持っていて、それが他の人を惹きつける。
だが、その一面だけ見てたら彼女は誰の手にも落ちないだろう。
どうやらあいつはそのことを分かっているようだし、展開によってはもしかしたら、もありえなくはない。
「楽しいねぇ」
窓から校庭を見ると、その侍娘に不幸男が馬鹿でかい声で呼び止めた所だった。
一年生の間で話題になり、この体育祭で顔が知られた彼女だ。その名前を校庭中に聞こえるように呼んだあいつは馬鹿だと思う。
これからどんな状況になったとしても、とんでもないことになることは避けられない。しかも彼女に夢中になってそのことに気付いていない。
不幸男の名に相応しい不幸がこれから待っていることだろう。
楽しみで思わず笑いが漏れた。
そして窓際で笑う亮介を見て不気味に思うクラスメイト……なのでした!
不幸男は小さいころから不幸男でした。
努力する不幸男ってなんだよ(笑)とか思っちゃいけません。彼も頑張っているんです(涙)。




