28 洗
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週末開け最初は武藤視点。
気絶した後のこと。
あっさり行きます。
武藤視点。
目覚めたのは、泣きそうな保険医の愛あるムチによるものだった。
どうやら、ずっと声をかけたりゆすったりしていたようなのだが起きず、このままでは鼻血の出過ぎで死ぬと思った眼鏡の保険医は混乱して叩き起こすことになったらしい。
おかげで両頬が痛い。
オレが目覚めたことに安心した保険医だったが、今度はオレの顔の状態に慄き、氷の塊を顔に押し付けてきて死にそうになった。
ほんと、死ぬかと思った……。
なんとか顔の腫れも引いてテントから出ると、もう午後の種目になっていた。
慌ててクラスの待機場所に戻ると、亮介がこちらに気付いた。
「大丈夫か?」
席を立って近づいてきた。亮介が手当されたオレの足を見て言った。
手当…………。
「……おい。なんだそのニヤけた顔は」
「ハッ、い、いや、なんでもないよ!」
つい、手当をしてもらった時のことを思い出して……。
「……(駄目だなこりゃ。頭もやられたか)」
亮介が呆れたように何か呟いていたが、オレには聞こえなかった。
「あ、武藤君。怪我は大丈夫?」
その声に緩んでいた顔を引き締めた。いつも本田さんと一緒にいる立花さんだ。隣には渡辺さんもいる。
「鈴井君から聞いたよ。わざとぶつかられたらしいね」
「え、あ、うん」
「まぁ、相手はぶつけ損ね。結局うちが一位取ったからね!あんたは災難だったけど」
立花さんが怪我を見て言った。
「え?い、いや~、それほどでも……?」
またニヤニヤしてしまったのだろう。立花さんたちが怪訝な顔で見てきた。
や、やばい。あのことが立花さんにバレたら何を言われるか……。
あのお昼から今まで、本田さんと仲よくなろうとしてきたが、悉く立花さんに邪魔されてきたのだ!
体育祭のことで二人っきりになるチャンスがあったが、いつの間にか暇な人は一緒に集まることになっていた。聞けば、立花さんが画策したらしい。
他にも、オレが二人っきりで彼女と話そうとしたりすると、必ず彼女が割って入る。
そしていつもその時の目はこう語っていた――。
『簡単に仲良くなれると思うなよ?』
いったいなんなのだ!
しかし、諦めない。だって彼女が言ったのだ
『頑張るやつは、嫌いじゃない』
そう、本田さんに激励をされたんだ。障害《立花さん》を乗り切ってこそ、真の愛が芽生えるのだ!
「あ、そういえば、本田さんは……」
「翼なら次の狩り者競争に出るわよ」
「えっ!狩り者!?」
男たちの障害を乗り切り、やっと手にした彼女と同じ競技。
お互いに頑張ろう!など言って仲良くなるはずが……。
「お、オレ、行かなきゃ!」
「その必要はないわ」
「代役を立てましたから」
「な……に……?」
音楽が鳴り、スタート位置に整列した人たちを見た。
十人いるうち、左から二番目に彼女が立っていた。
どうやら、『赤ずきんちゃん』に出てくる猟師の衣装らしく、ぴったりとしたズボンに包まれた足がすらっとしていて、まるでモデルのようだ。
……と、その隣にはダラけた顔をしたクラスメイト男子が一人。
くそっ、そこはオレの位置だったはずなのに!?
…………いや。その代わりオレにはテントでの一幕がある。
ふと、視線を感じて横を見ると、立花さんがじっとこちらを見ていた。
「な、何?」
「……悔しそうじゃないね」
「(ギクッ)そ、そうかな?悔しいよ」
「ふーん、へー」
どうも立花さんは疑っているようだった。そこに、追い打ちをかけるように渡辺さんが口を開く。
「そういえば翼さん。リレーが終わったあと、誰かを探してしばらくいなくなりましたね」
「あぁ、そういえば」
二人の視線がこちらを向く。
「そういえば、武藤君もいなかったね」
「怪我の治療をしている所を見れば、保健室の仮設テントに治療しに行ったのでしょうけど……」
「そういえば、お昼の時は保険医の人、他の人の世話をしていたような……」
「そういえば、その怪我の治療、自分でやったにしては丁寧すぎるような……」
「そういえば……」
「そういえば……」
「じー(疑いのまなざし)」
「も、もうやめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
オレは洗いざらい話してしまいました|(泣)。
次回急展開!お楽しみに!(たぶん)
お知らせ。
ファンタジーのジャンルで、『「この怨み晴らさでおくべきか!」……で悪霊になった私と恋した勇者』の連載を始めました!
ヘタレの不幸男とは違って積極的な勇者がヒロインに迫ります。
そちらの方も、よろしくお願いします!




