表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/49

25 当

二話目。


多くなったのでもう一つあります。


 武藤視点




 救護テントにつくと、『出張中』の看板が掛けられていた。


 うーん、どうしよう。お腹もすいたし、勝手に手当させてもらおう。


 布を押し分けて入ると、中は涼しかった。日陰だし、風も入る。扇風機の前に置かれたドライアイスの山から来る冷気で、今まで太陽にあたっていた熱い身体が冷めていく。


 「えっと、湿布、湿布は、と……」


 机の上に置かれた救急箱の中を漁るも、なかなか見つからない。そこに、バサッと入り口の布がめくれる音が聞こえた。


 「先生、湿布欲しいんですけどどこ……に…………」


 振り返ったら眼鏡で小柄の先生――――ではなく。



 「ほ、ほほほほほほほっ」


 「?」


 「本田さん!?」


 髪をポニーテールにした彼女だった。


 ど、どうしてこんなところに!……ハッ、ここに来る目的は一つじゃないか。


 「もしかして、本田さん。どこか怪我を!?」


 そんな様子は感じられなかったのに!


 「走っているときにひねったとか!?囲まれてるときに引っかかれたとか!?」


 慌てて全身をくまなく見るも、それらしい怪我は見受けられない。なら、


 「あ、もしかして熱中症!?気分悪くなったとか!?」


 ほぼ同じ身長の彼女の顔を覗き込むと、若干驚いたようにきょとんとし、首をふるふると横に振った。


 「そ、そっか。怪我とか気分が悪いとかじゃないんだね?」


 (コクン)


 「よかった……」


 はぁ~っ、と安心して息をはくと、急に足の痛みを思い出した。だが、目の前には好きな女の子。彼女の前では情けない姿を見せてはいられない。


 「あ~、気分とか悪くないんなら、どうしてここへ?」


 痛みを誤魔化すために質問すると、彼女は一歩、オレに近づいてきた。


 「え?」


 また一歩、オレに近づいた。


 「ほ、本田、さん?」


 彼女がオレのすぐそばに立った。画面いっぱいに彼女の顔がある状態。普通なら距離をとるのだが、オレは固まって動けない。というか動きたくない。



 あ、いい匂い……。



 ふわりと風に運ばれてきた彼女の香りが鼻をかすめる。その匂いに、オレの理性がぐらぐらと揺れている。

 心臓が痛いほど打ち付け、音が聞こえてしまうんじゃないかと感じた。



 耐えろ!耐えろオレ!絶えろ本能!



 必死に本能を押さえつけるが……。


 「な、えっ!」


 彼女の顔がさらに近づいてきた!



 こ、こんなときの作法としては、目をつぶるのが正しいのだろうが、オレは彼女から目を離せない。


 彼女の瞳にオレの情けない顔を確認した瞬間――。



 とんっ



 「え?あいたっ!」


 オレは生じた痛みに思わず声を上げてしまった。


 彼女が近づいてきたと思うと、肩を押され、後ろのパイプ椅子に座らされた。その時の衝撃が意外と足にきて、現在悶絶中。


 「な、何を……」


 「怪我してる」


 彼女の視線を追うと、転んだ拍子に擦れて血のにじむ膝があった。


 「こ、こんなの掠り傷だよ。洗って消毒すればすぐに……」


 しかし彼女はオレの足元に屈むと、むんずっ、と右足首を掴んだ。


 「っ!!……っ……!」


 あまりの痛さに声を出す暇もなく、オレは転げまわりたいのを抑えて悶絶した。


 「右足、くじいてる」


 そう言った彼女はオレを見上げてきて……。


 「うっ……く……!」


 オレは別の意味で悶絶してしまった。


 そんなオレに何も言わず、彼女は立ち上がって机に向かった。

 オレはほっと息をついて落ちつこうと深呼吸を繰り返した。なんか前にもこんなことあったような気がする……。


 それにしても、今のは卑怯だ!あの位置からの目線は必然的に上目使いに――――。


 あああぁぁああぁっ!駄目だ!思い出すな!少なくとも今は!まだ彼女がそばにいるんだぞ!情けない姿を見せるな!


 すでに情けない姿はみせてしまったけど、この瞬間、この二人きりの空間だけは……




 …………



 ……そうだ。オレ、今彼女と二人きりだ……。













もう一話続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ