表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/49

23 走

午前の部。


翼視点。


8月7日、変更…競技に衣装をつけました。


 チームはそれぞれ、西軍、東軍、南軍の三つの軍に分かれている。そしてそれぞれ、赤、青、黄色を身にまとっている。


 私たち壱ノ壱は西軍。赤いTシャツの背には『最強』の文字。





 開始直後から熱い戦いが繰り広げられていた。


 一種目は『障害物合戦』。与えられた道具を用いて、走者を邪魔する競技。


 これに出場したのは夏菜と桜。桜は走者として、夏菜は邪魔する側としてそれぞれ役目を果たしていた。そしてなぜか、夏菜は忍者の、桜は泥棒の恰好をしていた。どうやら、競技によって衣装があるらしい。


 夏菜は自分と障害物を有効に使い敵軍が前に進むことをできなくした。走る桜の邪魔をしようと敵軍が攻撃してくるのだが、桜はひょいひょい避け、いつの間にか通り過ぎていた、という二人の息のあった攻防が功を奏し、桜は一位でゴールした。



 次は男子生徒全員による騎馬戦。これは、力のある人たちがそろっている東軍に負けてしまった。


 その次は女子生徒全員による『竹取りの乱』。

 校庭に無数に配置された竹の筒をより多く奪い、その中に隠された点数の書かれたボールの合計点で勝敗が決まる。しかし中には偽物の竹や動いて逃げる竹もあり、偽物を掴むと点数が引かれるので、いかに本物を見極めるかが重要になってくる。そして、この時の衣装は十二単。かなり動きが制限されるものだ。


 この勝負は僅差で西軍が勝利した。私は偽物を掴んでしまうことが多かったのだが、トラップが発動しても十二単をさばいて避けられたので何とかタイムロスをしないで済んだ。


 午前中最後の競技は、『学年別クラス対抗リレー』。トラップなし、完全に速さだけを追求した競技。そのため、衣装もなく全員体操着の下にクラスTシャツ。私はこれに女子のアンカーとして出場した。

 すでに何人か走り終えており、もうすぐ私の出番。前の走者がバトンを受け取り走り出し、私はコースのラインに立った。現在五位中三位。前の走者はチェリー。


 「いけ、チェリー!」

 「追い越せチェリー!」

 「チェリーって呼ぶなぁ!!……あっ!!?」

 「!」

 その時、チェリーが後ろから追い上げてきた人にぶつかり、転んでしまった。しかし周囲からはチェリーが足をもつれさせて転んだように見えたのだろう。非難が集中した。


 チェリーは急いで起き上がり走り出したが、足を痛めたのだろう。若干引きづりながらも前に進んだ。

 顔は痛みに歪んでいる。


 順位はあっという間に最下位になった。周りからは野次が飛ぶ。



 あと少し。



 私は横に結んでいた髪を解き、後ろで一つにまとめて結びなおす。その間に、横をぶつかった奴が通り過ぎた。



 私はチェリーに手を伸ばす。


 「来い!」


 「!……うおおおおおおおおおっ!!」


 チェリーが痛む足を動かし、バトンを私へと伸ばす。


 私はバトンを掴むと、一言声をかけて走り出す。



 前の走者とはだいぶ距離を放されていた。しかし……。



 「「「「おおおおおっ!!」」」」



 周りからそんな声が聞こえた気がしたが、すぐに風の音にかき消される。



 速く。もっと速く。



 そう思っていると、目の前にアンカーの鈴井亮介が見えた。

 私は赤色のバトンを彼に渡す。途端、ものすごいスピードで走り出す鈴井亮介。


 しばらく膝に手をついて息を整えていたが、すぐに顔を上げて勝負の行方を見た。


 現在二位。一位の人から距離があるが、アンカーはコース一周。体力とスピード勝負だ。


 一位のアンカーはスピードはあっても体力はないらしい。残り半周というところでスピードが落ちてきた。反対に鈴井亮介はスピードを上げてきた。それを受け、相手も最後の意地を見せてくる。



 あと五メートル。



 周りが一体となって叫び、応援する。



 あと三メートル。



 鈴井亮介が横にならんだ。



 そして……。




 『ゴ――――ル!両者ほぼ同時!写真判定です。しばらくお待ちください』



 すると、審査委員側に取り付けられた巨大スクリーンにゴールの瞬間が映し出される。



 一コマ一コマ進み、ゴールテープを切る瞬間――――



 『おおおおっと!これは同着。一つの乱れもなく同着です!よって一位は壱組と参組!西軍と東軍です!!』



 周囲は意外な結果に驚いてはいたものの、やがて大きな拍手が沸いた。





 「翼!」


 観客席にいた夏菜が嬉しそうに飛びかかってきた。私はその勢いを削ぐために夏菜が抱きついたままクルリと一回転して地面に下ろした。


 「すごい!すごいよ翼!」


 「ほんと。あの距離から三人抜きは速すぎよ!」


 桜もやってきて笑う。


 二人を皮切りに、多くの人が私を囲み、賛辞を贈ってくれた。


 『ただいまよりお昼休憩になります。午後の競技開始は――――』


 休憩を告げる放送が入ると集まっていた人がそれぞれ戻って行った。



 そのことにほっと息をついた。無意識に緊張していたらしい。あまり囲まれるのにはなれていないから……。


 「翼ー、お昼食べよう」


 「あぁ……」


 私はあたりを見回して目当ての人を探すが、その人はどこにもいなかった。


 「翼さん?」


 「すまない。先に行っていてくれ」


 「あ、翼!?」



 私はあの人を探しに走った。











午前の部終了。


次回は昼休みの話。やーっとあいつと絡められる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ