20 測
体力測定です。
感想ありがとうございます。
これからも、何かありましたらお知らせください。
8月22日編集
更衣室でひと波乱あったものの、体力測定は順調に進んだといえる。
まぁ、視線は感じるがいつものこと。殺気を感じるわけではないので放っておいた。
別に一番に拘るつもりはないが、小学校中学校のときの体力測定はいつも私が一番だった。特にシャトルランは男子よりも多くやっていた。
しかし、今回は記録が私くらいの女子や男子が多くいた。
私はこのなかで“普通”なのだ。
それが、なんとなく嬉しかった。
現在、女子は五十メートル走の記録の最中だ。
全力で走りゴールにつくと、記録係が、「な、七秒三!?」と叫んでいた。
ふむ。前回より二秒早くなった。
「すごい!見かけから強そうとは思ってたけど、やっぱりすごい!」
立花さんに詰め寄られ、私は素直にお礼を言っておいた。
「次、立花さんの番」
二回目の記録測定がやってきたので促すと、立花さんは途端に不機嫌になった。
「夏菜」
「?」
「立花さんじゃなくて、夏菜って呼んでよ」
「しかし」
「友達でしょ!」
ハッ、そういえば兄様が言っていた。友達とは名前で呼び合うものなのだと。彼女も私のことを名前で呼んでいるし、私も名前で呼ばなければ友達とはいえないのでは……。
「……夏菜」
「!?」
「頑張れ」
「が、頑張るわ 」
激励したつもりが、なぜか真っ赤になってフラフラと行ってしまった。
大丈夫だろうか。そう言えば更衣室で鼻血を出していた。
もしかして貧血か。
「羨ましいなぁ」
夏菜と入れ替わりに渡辺さんがやってきた。
「わたしも、名前で呼んでくれない?」
彼女も友達だ。何の問題もない。
「桜」
「ありがとう。翼さん」
「呼び捨てで構わない」
「ううん。この方が翼さんに合っている気がして」
その言い方に、どこか既視感を覚えた。
じっと見つめて考えていると、ふと、閃くものがあった。
「桜は、母様に似ている」
「え?翼さんのお母さん?」
「母様も、私を合っているという理由で翼ちゃんと呼んでいる」
「翼ちゃん……。なるほど、話が合うかもしれませんね」
「あぁ」
夏菜の記録が終わり、代わりに桜が走りに行った。
「桜と何話してたの?」
「同じことを」
「名前?」
(コクン)
笛の音が聞こえ、桜が走り出したので私たちは桜の走りを見守った。
桜は楽々と走り、ゴールをすると八秒九というタイムこちらへ歩いてきた。
しかし、彼女の走りに疑問を思った。直感だが、彼女はどこか手を抜いているように感じた。
更衣室でも、私の背後を取ったり、彼女には謎の部分が多い。
いったい、何者……。
いや。そんなことを思ってはいけない。兄様が言っていた。友達は無条件で信じられる存在でなければ崩壊すると。
初めてできた友達を失いたくはない。だから……
「どうしました?翼さん」
「……桜とは、いつか本気で戦ってみたいものだ」
「え?」
「えぇっ?」
正直に戦いたい意志を伝えた。
桜は驚いたように私を見ていたが、私の本気が伝わったのか、頷いてくれた。
「いつか、機会があったら。二人っきりでね」
「承知した」
私たちは拳をぶつけ合って約束をした。
「ちょっとー。そこだけ少年マンガみたいな空気つくるの止めてくれる?置いてかないで~」
情けない声を出して飛びついてきた夏菜を、二人そろって避けたことは、余談である。
体力測定が終わり、私は他の女子が来る前に素早く着替え、更衣室を後にした。
すると、教室へ戻る途中、織多先生が私を呼び止めた。
「おう、本田。ちょうどよかった。これ」
「?」
紙の束を渡された。
「もうすぐ体育祭だからな。これ使って、次のHRでクラス長と出る競技決めておいてな」
「承知しました」
織多先生は「じゃ、俺はさぼ……次の準備があるから」と言って去って行った。
私は紙の束を持って教室に戻った。
男子はもう着替え終わっていて全員教室にいた。女子も多少見えるも、全員は帰ってきていない。
そうだ。クラス長に織多先生の言葉を伝えなければ。
だが、クラス長が誰なのか知らない。
「君」
「は、はいいいっ」
「クラス長は」
「あ、あそこで机に突っ伏してるやつです!」
「感謝する」
近くの男子に聞くと、快く教えてくれた。
その、教えてくれた男子の元まで行くと、彼はこの間話したことのある男子だと気付いた。
しかし、名前を知らない。
どう呼びかけるか悩んだが、お昼の時の会話を思い出した。
彼が私に伝えた言葉。
「チェリー」
その瞬間、すべての音が静まり返った。
次回武藤視点。……今から書くのが可哀想になってきた。
翼の体力測定。総合一位。
競技によって拮抗している人もいますが、得意分野の競技だけ。




