18 弓
前回の続き。
ちょっと短めです。
中に入ると、まず見えたのは筒袖と袴を着た、矢を射る生徒たち。
私たちは邪魔にならないところに座り、見学した。
カンッ
弓から放たれた矢は早いスピードで的へ飛んでいき、鋭い音を立ててあたる。
二人からは「おぉ~」という賞賛の声が上がるも、私は見ていられなかった。
「怖いかい?」
隣に座る平清守を睨む。
やはりこいつは知っている。私が弓を恐れている……いや、好きではないということを。
平清守は私の殺気の込めた視線をもろともせず、穏やかに笑っていた。
「なら、やってみようか」
なにが「なら」なのだろうか。なんの脈絡もない。訳が分からない。
「なんでもやってみるといい。いい経験になるから」
いい経験――――。
父様と同じことを言う。
「いいんですか?桜、翼、やってみようよ!」
「そうですね。またとない、いい機会ですしね」
二人はとても乗り気で、いまさら止めろとは言えなくなった。
いったい何を考えているのか……。しかし、彼は教師。先ほど言った言葉はまぎれもなく真実であり、教師の言葉。
なら…………。
私はゆっくりと頷いた。
「弓道には八つの射法、『射法八節』という作法があります。足踏み、胴造り、弓構え、打起し、引分け、会、離れ、残心。これを覚えれば、矢を射ることまではできます」
私は教わった通りに動き、弓を構える。弦を引き、遠くにある的を見る。そして……。
カンッ
周囲から驚いたようなざわめきが聞こえる。
私の射た矢は的の端をとらえていた。
「すごいね。初めてでしょ?弓道は。それで的をとらえるなんて、なかなかできることじゃないよ」
平清守も驚きの声を上げている。
しかし、そんな周りの声は私に聞こえていなかった。
弓道は、静と動を合わせ持つ。そんな気がした。そして、矢が手から放たれた瞬間の解放感……。悩みも何もかも、吹き飛んでしまったような気がした。
「……君は、ちゃっと心を鎮めることがうまくできているようだね」
平清守が、穏やかに笑っていた。
「剣と弓は違うけど、どちらも己を律することができなければその瞬間、凶器に変わるものだ。君はしっかりと己の武道を持っているらしい。十六歳の子どもとは思えないくらいしっかりとしている」
それはまぁ、当然だろう。精神年齢は十九歳だ。苦い経験をたくさんしてきた。
「また来るといい。君が知りたいと思ったとき、知りたいことを教えてあげよう」
その言葉の真意を知りたかったが、その前に立花さんやら弓道部の生徒やらに囲まれて聞けなくなくなってしまった。
本当に彼は何者なのだろうか。
ただ、最初に感じた警戒心は、すでにどこにもないことには気付いていた。
謎の人物のままに終わりました。しかし、再登場フラグは立てておきます。
作者が忘れなければたぶん出ます。
弓道については初心者なので、間違っていることがあるかもしれませんが、その時は遠慮なく言ってください。(汗)
今日中にもう一話投稿できたらいいですが……。




