17 探
本日二話目。
「桜!今日も部活見学行く?」
「うん。今日は東側を回るつもり」
立花さんが席を立ち、振り返って私を見た。
「じゃぁ、翼。また明日……」
「私も……」
「ん?」
「私も共に行っていいだろうか」
目の前の二人が驚いたように顔を見合わせている。
だ、駄目だろうか。
……ハッ。もしかしてこれが世に言う『KY発言』というものなのだろうか。
そら兄様が言っていた。KY発言は時に友を失う危険性を持っていると……。
だとしたら、せっかくできた友達を失ってしまう!なんとかせねば――――。
「やはり……」
「いいよ。行こうか」
「そうです。一緒に行きましょう」
二人はにっこりと笑い、頷いてくれた。
私はほっとして、無意識に力の入っていた身体から力を抜いた。
どうやら先ほどの発言はKY発言ではなかったらしい。
「じゃ、早く行こ!全部の部活が回れないからね」
「夏菜ちゃん、本当に全部回るつもりなの?」
「もちろん!どんな出会いがあるか分からないからね!」
どんな出会いがあるか分からない。
私も、何か出会いがあるのだろうか。……いや、今の私はどんなことでも初めての出会いだ。様々なものを見てみよう。父様の言う通り、いい経験になるだろうから。
渡辺さんが言うには、西の別館には西洋からきた部活などが多く、東には武道などの部活が集まっているという。
昨日は西に行ったので、今日は東を見るそうだ。
私も、剣以外の武道を見てみたかったので、二人の存在はありがたい。
一時間で様々な部活を見て回った。柔道や空手もなかなかのものだったし、茶道や華道、日本舞踊なども美しかった。
人間が作り出すものこんなに美しいものだとは思わなかった。白や灰色の機械ではなく、様々な色彩があり、自然と人間が共存していた。
「ね、どこか興味あるところ見つけた?」
「……」
「……ねぇ、桜。翼、ものすごく楽しそうじゃない?」
「うん。うきうきオーラが駄々もれね」
色々な所を見るのに忙しい私は、隣でそんな会話があることに気付かなかった。
カンッ
鋭い音が耳に届いた。
「翼?」
カンッ
やはり聞こえる。
「音……」
「音?」
カンッ
「聞こえる」
「……何も聞こえないけど」
「あ、もしかして、弓道部じゃない?」
「弓道」
「竹林の中に弓道場があったはず」
「竹林の中って……翼、よく聞こえたね」
二人は竹林の中へ歩きだし、私は遅れて二人を追った。
竹林の中へ入ると、外の音が聞こえなくなった。聞こえるのは、葉が風で擦れる音だけ。
なんとも不思議な空間だった。
カンッ
「あっ、あたしにも聞こえた」
「あそこに弓道場があります」
見えてきたのは古ぼけた建物。
扉は開いており、靴を脱いで中に入る。
「ようこそ。新入生だね」
障子が開き、落ちついた雰囲気を持つ男性が出てきた。
「あ、はい。壱ノ壱、立花夏菜と言います」
「同じく壱ノ壱、渡辺桜です」
「本田翼と申します」
男性は自己紹介を、それぞれ顔を見て聞いていたが、私の名前を聞くと、一瞬だが目を見開いて私を見た。
だが、本当に一瞬で、普通ならば勘違いと思うものだが、私はそうは思わない。
彼は、私を知っている?
じっと様子を伺っていたが、彼は穏やかに笑うだけで、先ほどの動揺を微塵も感じさせなかった。
この人、できる……。
「申し遅れました。わたしの名は平清守。この弓道部の顧問をしております」
お辞儀をしているときでも、この人には隙がない。
何者なんだ……。
持ってきた木刀に手が伸びる。
「せっかく来てくれたんです。中で見学していってください」
二人は、素直に彼の指示に従い中へ入って行った。
私はその場から動かず、相手の出方を伺った。
「そう、警戒しなくても何もしませんよ。ここは学校。わたしは教師。教師は生徒を守る者であって、害する者ではありません」
その言葉と真っ直ぐな瞳は、真実を語っているように感じた。
慎重に構えを解くと、促されるまま中へ入った。
中途半端ですがここで切ります。続きは明日書けたらいいなぁ……。
謎の人物平清守登場。




