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13 夏

間に合った!


今回は翼視点。


そして、新レギュラー登場!




 一限目が終わり、十分間の休み時間になった。


 「本田さん。廊下に来てください」


 眼鏡をかけ、真面目そうな開智先生に呼び出されてしまった。



 先生に呼ばれるなど初めての経験だ……。



 前のドアから出ると、開智先生が待っていた。


 「君の家のことは分かってるつもりですが、校内は武装禁止です」


 「はい」


 「だから、その木刀はロッカーに置いておくこと。いいですね」


 「……」


 「はぁ……。あなたがむやみやたらに振り回すことはないと思いますが、そういう輩もいるのです。特別扱いはできません。昼休みになったら置いてきなさい」


 「(コクン)」




 侍たる者、常に剣から身を放してはならない




 父様に言われた侍の心得。何よりも守るべきことであるが……出かけるとき、父様は言っていた。



 『翼。木刀を持っていくのか』


 『はい』


 『そうか……。忘れるな。それは剣だ』


 『(コクン)』


 『しかし、剣にあらず』


 『?』


 『分からないか』


 『(コクン)』


 『ならばそれも、学んでくるといい』


 『……』




 この木刀は剣であって剣にあらず。……相変わらず、父様の言っていることは難しい。

 しかし、それをここで学べるという。


 なら、教師の言う事に従うのも、答えを見つける道になるかもしれない。



 昼休みに置きに行こう。そう思うと同時に次の授業の開始を告げる鐘が鳴ったので、教室へと戻った。







 三時限目の授業が終わり、昼休みとなった。


 木刀をロッカーへ置きにいかなければ……。



 「ねぇねぇ、本田さん!」


 席を立つ前に、前の席に座る女の子が話しかけてきた。規則ギリギリの茶髪に短い髪。全身からパワーが溢れているような女の子だ。

 えっと、名前は……。


 「あたし、立花夏菜たちばななつなって言うの。本田翼さん、でいいんだよね?」


 「(コクン)」


 「ね、あたし学食でご飯食べようと思うんだけど、一緒に行かない?」



 かばんからお弁当を出すと立花さんに見せた。



 「あ、お弁当もってきてるんだね。じゃぁ、学食で食べない?」

 


 手に持った木刀を見せた。



 「……あ、もしかしてロッカーに置きに行くの?じゃぁ、置きに行った帰りに学食で食べようよ。その方が早いよ?」


 「……(コクン)」


 「やった。あ、もう一人連れて行っていい?」


 「(コクン)」


 「ありがと。おーい、桜!」



 やってきた女の子は反対の印象を受けた。

 肩までの黒髪に膝丈のスカート。全体的に清楚という言葉が似合いそうな子だ。


 「渡辺桜わたなべさくらです。よろしく、本田さん」


 「桜とは小学校からの友達なんだ」



 なるほど。顔を見合わせて笑いあう二人から、親しい雰囲気が感じられる。



 「じゃ、いこ!」


 私は木刀とお弁当を持ち、二人について行った。








 「あちゃーっ!めっちゃ混んでる!」


 ロッカーに木刀を置いた私たちは、学食へとやってきた。

 しかし言葉の通り、学食の入り口から外に並んでいるほど混雑していた。


 「こりゃぁ、無理だな。といっても、購買は売り切れてたし……」


 「わたしのパン、一個食べる?」


 「え、いいの?」


 「うん」


 「ありがとーっ!持つべきものは親友よ!」



 立花さんが渡辺さんに抱きついて喜んでいた。



 「あ、じゃぁさ、外で食べない?天気いいし。どう?本田さん」


 「(コクン)」


 「オッケー!じゃぁ、行こう!」




 私たちは靴箱で靴を履きかえ、外へ出た。


 「ん~、いいところはないものか……」


 「夏菜ちゃん、あそこにベンチがあるよ?」


 「お、あそこでいっか。本田さんは?」


 「(コクン)」


 「よし。早く行こう」



 ちょうど垣根に隠れるようにしてベンチがあった。ここにはベンチが二つあり、もう一つは二人の生徒が使っていた。



 「あれ?不幸なクラス長じゃん」


 「武藤君」


 二人の言葉から、勢いよく立ち上がった男子生徒が、同じクラスのクラス長だったことを思い出した。



 そういえば、隣の席だったような……。



 「あ、あのっ!」


 目の前に顔を真っ赤にしたクラス長が立った。


 「しぇ、先日は、あ、ありがとう、ご、ございました!」


 「?」


 「オレ、オレ……」




 それにしても赤い。まるで果物の――――




 「オレ、チェリーです!!!」













 そう、さくらんぼ。














哀れ不幸男!


次回はその不幸男視点。



お気に入り50件超えてうれしいです。本当にありがとうございます!



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