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1 死

初っ端からものすごっっっっっく暗いですが、ほぼこの回で終わりです。





 身体が熱い――――――



 『心肺停止!心臓マッサージだ!』



 完全な暗闇。



 『離れて――――っダメだ。もう一回』


 『簡単には死なせるなよ?貴重な実験体なんだ』



 そう。私は実験体。一億人に一人という難病にかかり、ずっと寝たきり生活。


 こんな私でも愛してくれる両親がいた。両親は毎日会いに来てくれた。入院費を稼ぐために共働きをしていても、必ず顔を見に来てくれた。二人の愛に支えられ、私は懸命に生きようと思った。


 不幸ではなかった。

 むしろ幸せだった。


 その知らせが届いたのは15年目を迎えた冬の日。


 母はずぶ濡れの姿で私の元を訪れた。母は淡々と、父が過労で死んだことを告げた。

 ショックで言葉もでない私をさらに追い打ちをかけるように母がその場で倒れた。

 もう腕が動くこともできず、ナースコールを押すことができなかった。

 だから必死に叫んだ。ほとんど掠れた声しか出せなくなった喉を震わせ、助けてと叫んだ。

 しかし、母はそのまま死んでしまった。


 信じられなかった。難病にかかった私より、健康だった両親の方が先に死ぬなんて……。


 病院から出られない私は葬儀にも出ることができなかった。

 親戚は死を待つだけで金のかかる子どもを引き取ることを拒んだ。


 その親戚の人から聞いた。

 父と母は過労で死んだと。

 父は会社を解雇され、安月給でハードな仕事をしていたと。

 母は昼はパートで夜はバーの仕事をしていたと。





 二人を殺したのは私だと――――――







 何日たったか分からない。

 ただ、時間だけが過ぎたある日、スーツを着た男たちが病室に入ってきた。

 男たちは言った。


 『お前の親戚はわたしたちにお前を売った』


 『わたしたちは医学の進歩のため研究する機関である』


 『お前の難病を治す薬を作り、将来に役立てたい』



 そういうと男たちは私の返事も聞かず研究所へ連れて行った。


 その日から、私は多くの人の前でいろんな薬を飲み、血をとり、血管に何かを入れられた。


 何回も心臓が止まった時があったが、そのたびに心臓を無理やり動かされた。


 気づけば四年たち、私は19歳になっていた。


 結果的に言えば長く生きた方なのだろう。研究所の人たちも喜んでいた。



 そんなある日。私は研究所の人がそばで話しているのを聞いた。


 『結構長生きしたわね、この子』


 『あぁ。こんなことなら慌てて手に入れる必要はなかったかな』


 『それってこの子の両親のこと?』


 『あぁ。貴重な難病の持ち主だ。親戚はみんな金で釣れたし、邪魔なのは両親だけ。ほんと、無駄金だったよ』


 『会社に賄賂送って父親を解雇させ、悪い噂流して母親を働きづらくさせたんでしょ?これがバレたら刑務所行きね』


 『平気だよ。警察も国も買収済みさ。この研究は日本の医学を大きく進歩させるんだ。お偉いさんはもろ手を挙げて賛成だよ』


 『ほんと腐ってるわね~。あなたも国も』


 『お前も研究に参加してるんだ。仲間だろ』


 『あら。わたし体のほうはまだ腐ってないわよ?試してみる?』


 『ぜひ。実験してみようか?』


 『やんっ!ここじゃだめ』


 『しょうがないね……』



 二人は私がここにいるのを分かっているのだろう。しかし私に意識がないと思っている。そうでなければあんな話はしなかっただろう。




 あぁ、この世はなんて無常で無情。



 あまりのことに怒りさえも湧かない。

 体中に張り巡らされたチューブがなければ息をすることも心臓を動かすこともできない。






 なにもできない――――――――






 しかし、チャンスが訪れた。

 新しく投与された薬。その薬が私に力を与えた。

 しおれた筋肉が急速に力を取り戻す。


 まずは腕、次に腹筋、太腿、足の先。



 全身の筋肉が力を取り戻したとき、私は動いた。



 常人ではありえないほど素早く動き、身体中のチューブを引きちぎると、そばにいた研究員のパソコンをこぼれた液体の中にはたき落した。そして、次々と高そうな機械を壊していった。



 すべての機会を壊し終えるのに使った時間は三秒。この数値もまた研究成果になるのだろうけれど、私は満足だった。

 私を見に来る研究員はいつもお金がかかると呟いていたから、機械を壊したことでかなりの損失になるはずだ。如いてはその資金を援助している国にも影響があるはず。



 私を、家族を弄んだ奴らに、一矢報いたと言えよう。






 さて。もう身体が動かない。

 わさわさと混乱して動き回る気配がするも、五感はもう機能をやめてしまった。


 身体が熱い――――――



 それにしても夢のような三秒だった。

 生まれてはじめて自分の足で立ち、自由に動くことが出来た。

 こんな嬉しいこと、今までない。


 だからだろうか、今まで湧き上がって来なかった感情が湧き上がる。






 もっと歩きたい。


 もっと手を叩きたい。


 もっと景色を見てみたい。


 もっと美味しいものを食べたい。


 もっと音楽を聴きたい。


 もっといろんなことを感じたい。



 もっと


 もっと


 もっと




 もっと自由に!


 いつかみた鳥のように


 自由にどこかへいきたい!


 自由に!


 じゆうに!











 あぁ。らいせというものがあるのなら、とりになりたいな


 おおぞらをどこまでもたかく、だいちがつづくどこまでも







 ……けんきゅうじょの ひとたちが こんらん してるのが わかる





















 ふふっ



















 ざまーみろ













地味な仕返し。けどすっきり。



YFBです。すっきりしたことがあったので、爽快な侍風の女の子を書きたくなりました。



これからよろしくお願いできれば幸いです。



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