Hello,Baby? 1
お待たせいたしました。
短めになりますが、出産編……? です。
いきなりちょっと時間飛びますが、どうぞお付き合いください。
なにかを眺めているひとが居た。
飽きもせず、じいっと。
地図のような、それにしては少し違うような。
黒い画面に散りばめられた、きらきらとひかる星のようなもの。
ずっとずっと、眺めていた。
眺めていることしかできなかった。
あまりにそれと自分の大きさは違う。
できることは、上から星を撒くことと、それそのものを破ってしまうことだけ。
そのひとは、どうしたんだっただろう。
――そう、それはずっとずっと昔のできごと。
見ているだけのことに耐え切れず、彼は。
◆
……変な夢見た!
な、なんだったんでしょう。背筋にぞわぞわ来る夢でした。
ふと目が覚めると、まだ夜中のようで、あたりは暗いままでした。
目をぱちくりとさせながらそっと体を起こし、ラオムさんの様子を伺い、それから反対側にも視線を向けます。
そこには、卵。
私の体長を余裕で越えるサイズですが、わたしとラオムさんの卵です、もちろん!
「……ティエラ?」
じーっと見つめていると、後ろからいつもの低い声。
寝ていると思っていたので少し驚きましたが、まあわたしよりずっと気配に聡いですしね。
「……まだ生まれんな」
そうですねえ。
そういえばふつうのドラゴンさんって、どれくらい孵化にかかるんですか?
「60日ほどだそうだ」
わたしの同族のデータは無いですが、普通の猫と同じだとすれば大体同じくらいですね。
……という事は、あと十日くらいですか!
「そうだな」
楽しみですねえ!
……どうやって生んだ? 企業秘密というか、生命の神秘です! いえ、別に秘密でもなんでもありませんけどね!
僕が生まれた日
ふと目が覚めると、そこは薄暗い緑色の空間だった。
ゆったりとした魔力の流れに包まれた、穏やかな場所だ。
暫くぼうっとしていると、壁の向こうからふたつの声がして、それが父母だと悟った。
また暫くして、自分の名前が分かった。これは人に教えてはならない。なら、名前を考えよう。
そうして殻が脆くなり、たゆたう魔力が全て己の体となった頃、自分の名前を決めた。
その場所が卵であることを知ったのは、両親の顔を見てからだった。