おてごろ物件、ふたりの新居 12
とりあえずこちらも自己紹介をして、全然水の精霊らしくないマデルさんにいろいろお聞きしたところ。
「俺のつがいの趣味だ。あいつ、昔の恐竜映画大好きだし。ちゃちいのが良いらしい」
なるほど。
というか、ティラノさんを1匹屠ってきた訳なんですが。あんなの野放しにしないでください!
「屠っ……いや、ごめん、ほんとごめん……」
脱力したマデルさん。苦労人の匂いがすごいですが、つがいが居るだけアンクさんよりマシ……でしょうか? 結婚は人生の墓場ってクチですか?
「いや……ただ、たまにちょっと突飛すぎてビビるだけだ。つーか、お前のつがいも苦労しそうだなあ……」
失礼な。ラブラブですよっ、らぶらぶ! 新婚ほやほやです!
部屋は広く、地下室だというのに明るいのは天井に施された魔法術陣のお陰でしょう。白を基調にした清潔そうな部屋は、研究所を思わせます。
何度か見たアンクさんの部屋と違って綺麗ですね! 服はアンクさんの方が清潔ですが、研究内容の差とかですかね。
一際目を惹くのは、部屋の中央部に設えた円柱型のカプセルの中――きらきらと様々な色に輝く、大きな魔石。
虹色って、どういう事ですか? 聞いたこともないんですが……なんて食べがいのありそうな!
「50年掛かってんだからな。食うなよ」
ご、ごじゅうねん!
「チマチマ色んな魔石を集めて、細かくして混ぜて固めたんだ。魔力を混ぜて魔石にすると黒になるけど、こうすれば虹色になる」
それは盲点でした。なるほど……!
……。それはいいんですけど、あの。
「ん?」
50年の研究成果をあっさりバラしていいんですか!?
「あっ」
「あぶぁー!」
ほら赤ちゃんも心なし「ざまぁー!」みたいな顔してますよ!
それにしても、50年かけたところ申し訳ないんですが、わたしなら材料さえ揃ってれば10分足らずで出来……いえ、すいません、言わないでおきましょう。
それにしても――赤ちゃんについては何も知らないらしいです。
いったいこの子、何者なんでしょうか?
マデルのメモ
「多色魔石の作り方」
様々な魔石を集め、粉々にする。つがいの仇だと思って粉々にする。つがいを殺された恨み!とか考えてたら涙出てきた。危うく混ざる所だった。よく考えれば粉砕とか分解とかそういう魔法術使えばよかったけどそれはいいとして、それを魔石を固める。以上。
びっくりするほど簡単だ。しかしこれ、質としては黒色魔石と同じだし、何に使えばいいんだ? 今度はそれを研究すればいいか。