おてごろ物件、ふたりの新居 11
先に落下した赤ちゃんは何故かくるんと回転して華麗に着地。
わたし? ええ、猫ですから着地は得意ですよ、もちろん。
「ぎゃあぁぁああああああ!」
着地したところが悪かったですけどね!
というわけで、わたしと赤ちゃんの真下に仰向けに寝ころがっていたらしい、謎の方。
人型をしてはいますが、ところどころ透き通った体を見るに、霊体系ですかね。
霊体系とはつまり精霊や幽霊さん方のような、ちょっぴりクリアなボディがトレードマークのいろいろ透ける方々です。……透ければ回避できたんじゃ?
「うわあぁあああぁぁぁぁあああ」
「だーうー」
「何でそこに着地すんのおおおぉぉぉお!?」
……えーと急所ですか? よくわかりませんけど!
とりあえずすいません!
「急所に当たったあぁぁぁっ!」
大変ですね!
「他人事! 他人事だよっこの子!」
「だうあっ」
ほら、赤ちゃんにまでうるさいって言われてますよ。
というかもう「黙れっ」て感じですかね。
……なんだか、アンクさんタイプですかね?
「あいつと一緒にするなあああああっ!!」
そしてまさかの大絶叫。え、知り合い、というかアンクさん嫌われてますね!
とことん報われないアンクさんに思いを馳せつつ、暫くゴースト氏を両脇から眺めていると、ぜえぜえと息絶え絶えに自己紹介してくださいました。
え、そこで?
「……水の精霊の、マデルだ。侵入者ども」
失敬な。自然は誰のものでもないですし、穴から入れるようにしたのが間違いです。
わたし達は“木の洞”に入っただけです。
……つまり侵入者ではありません!
「すげえ理屈!」
屁理屈は得意ですからね!
霊体系
幽霊や精霊といったタイプの魔生物を指す。
物体をすり抜けられる、透けている、が特徴。普段は体の殆どが魔力などで出来ている。水分の比率が高かったり、常に発火していたりとバリエーションは豊富。
ただし普通の体になること(実体化)も出来る。常時透けている訳では無い。