おてごろ物件、ふたりの新居 9
ティラノさん(故)を必死に解体すると、ちんまりとした乳白色の魔石が表れます。
魔石を仕込めば、魔力の気配はする訳ですよね。
という事は――もしかして、あの赤ちゃん、魔獣?
人間――つまるところはホモサピエンスのクローンも、勿論実現可能な段階にはありますが、思考が複雑なのでコストが高く、あまり作られません。
というか、全く必要が無いんですね。
狩るにはつまらない獲物ですし。あと、魔獣の味は総じて微妙だそうですから、食用としてもあんまり……まあ、そういう訳で。
ですが、可能性は、なくはない……ですよね? 多分。
魔石を銜え、ナイフを魔力に戻して赤ちゃんの元に戻ると、きゃっきゃっと笑いながら手を伸ばしてきます。
無邪気ですねー。
「あーぅあ、うあー」
……ティラノさんを放った方が、この子を作ったとか?
というか、このあたりに誰か住んでらっしゃるんでしょうか。
「だぁーーっあ!」
ちょっ!?
考え込んでいる隙にばっと飛び掛ってきた赤ちゃんが、銜えてい魔石を奪い取ってずざざざっとはいはいで逃げて――なんかいやに素早いですね!?
「あぶぅ、んぶ」
にゃああああああああああっ!
ちょっ、た、食べちゃダメですよ! ぺっしなさい、ぺっ! 人間(?)が食べたら普通に石と同じじゃないですかっ! あ、でも食べるって話も聞いた事あるような――ってあれは普通に食用石ですし! アフリカとかでね!
子供が食べるもんじゃありません!
「んー」
……いい子ですからね? ね? 出しましょうね! ほら!
「んぶー」
ちょ……! 何か西部劇みたいな顔してませんか!? 「来いよ、どっちが早く抜けるか勝負しようぜ」みたいな顔しないでくださいっ! 近づいたら飲み込む気ですね!?
「んー? んー、んんー」
追い詰められたスパイじゃないんですからああああっ!!
ど、毒ではない、と思いますけどさっきまで血塗れだったシロモノを口に入れるのはやめた方が! いっそ私の尻尾でも舐めててくれた方が安全ですよっ!
「あぶー……んっく」
に゛ゃああああああああああああああああっ!!
人造人間、複製人間について
人間の複製自体は既に人類も成し遂げているが、未だ人間と同じように動くまでには到っていない。意識を持たず、生命維持用のカプセルから出る事はできない。
ただし、自分のクローンを一体用意しておけば、もしもの際に移植・輸血などに使えるため、富裕層や政治家には人気。
人道的な問題は未だ議論が続くが、有用である事は確かだ。
一方魔生物の作る人造人間は意識を持ち、本物の人間に遜色ない。ただし人間は用途が無いのであまり作られない。
動物と人間を組み合わせた獣人のアンドロイドが本部に1名。孤児と同じ扱いで生活している。