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おてごろ物件、ふたりの新居 5






 生後数週間は過ぎているかと思われる、ふっくらしたお子さん。

 まだ薄らとしか生えていない髪は、細い所為で分かり辛いですが、黒。

 肌は白く、目は綺麗な青。

 

 ちなみに自然発生した魔生物に本当の意味での赤子時代というのはありません。卵から生まれたりするタイプは赤ん坊からスタートですが、わたしのように本来が胎生である種をモデルにした姿ですと、ある程度大人の状態で生まれてきますね。

 それにどっちにしろ、最初から高い知能を最初から備えていますし。生まれた時点では、だいたい人間換算で思春期くらいの思考力ですかね?

 ですので、突然変異でなければこの赤ちゃんは人間という事になりますが。


「ぶぅー」


 ふぎゃっ、尻尾を食べないでください!

 あんまりナメてかかると、わたしでも怒りますよ! 奥歯ガタガタ言わせますよ!


 ……というか、そもそもこのあたりにはもう人が住んでいない筈ですし、いたとしても明らかに人種違うと思いますし。えーと、何でしたっけ、原住民……ペ……ペイモン?

 いや、そんな悪魔みたいな名前じゃないです。えーと、ペ、……忘れました。

 まあそれはどうでもいいんですが、兎に角、どうしてこんな場所に赤ん坊がいるんでしょう。

 というかそもそも、さっきまで居なかったですよね!?


「にゃーにゃ」


 ……え!? ちょっと、今ママって言いました!? しかも猫語で!?

 やめてくださいまだ子供いないんです新婚夫婦なんです! これってアレですか……「あなたの子供です。育ててください」ってパターン!?


「にゃにゃ!」


 いやああああああ! ママじゃない! ママじゃありません!

 やめてください新婚夫婦に水を差さないでくださいいきなり離婚の危機!

 

 ここは一族に伝えられる秘技を発動するしかありませんね……!

 すなわち!


 逃げる!


「にゃーにゃーっ!!」


 いっだっ!?

 ちょっ今この子わたしの尻尾掴みました! ひどいです!


「にゃーっにゃっあーう! だーっ!」


 にゃあああぁぁああっ!

 ちょっ、待っ、何ですかこの子っ!?


「にゃん」


 何故か猫語を微妙に操る赤ん坊。逃げるのをやめると、満足げにそう言いました。

 人語変換すると「よし」ですね。


 ……わたし、そんなに殺生が好きではないですし、子供を殺すのも忍びないと思いますし。

 確かに魔生物の中では穏健派、なのですが。

 魔生物相手にこうも強気とはまた、豪胆な赤ん坊です。

 ……あ、そもそも先入観が無いんでした。








われわれの誕生は唐突だ。気づけばそこにいて、本人もそういうものと納得して生まれてくる。わたしもそうであった。

名前を知り、言葉を知り、ある程度常識も持っている。

人間は名も知識も持たずに生まれてくる。生まれる瞬間、彼らは確かに獣なのだ。しかし、わたしたちはそうではない。

ならばいったい、わたしたちという存在はなんなのであろうか。明らかに、この世界の生命から逸脱しすぎているように思える。

こうして考えることこそが無駄であるのかもしれない。けれど、わたしはこの一冊に考えの全てを書き記し、願わくば後世の皆に答えを出してほしいと思う。


 「魔生物の生命」前書きより

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