おてごろ物件、ふたりの新居 2
まずですね、ハスペの滝という場所に惹かれますね。
ハスペとは碧玉のことだそうで――その名の通り、川底が真っ赤なジャスパーで出来ているんです! 自然の産物ってすごいですねっ、本当に! あれだけあったらもう何年でも舐めてられますよ! まあ水がちょっと邪魔ですけどね!
次に、ロライマ山にあるクリスタルバレー。まだ行ってないですが、水晶がごろごろ転がっているそうです! ああっ、もう考えるだけでよだれ出てきました!
更にこのギアナ高地では、ダイヤモンド等が取れるそうで。もう、わたしワクワクドキドキが止まりません。地球万歳!
一応昔は採掘されていたそうですが、年々自然保護のための規制が厳しくなり、現在では全くされていなかったらしいです。
ですが、わたしの知ったことではありませんし、今時手付かずで残っている宝石なんて珍しいですから、それはもうわくわくしています。尻尾がごきげんです!
「一通り回ったな」
はい!
雲から突き出た山とか、ものすごい綺麗でしたねー。
幸いな事に、このあたりには大物の方も住んでおられません。立地の問題で、飛べるような魔生物でないと住みやすいとは言えませんしね。
まあ、下の方には居るかもしれませんが、わたしたちは山の方に棲処を構える予定です。
崖に穴をぶち開けて、あとはコーティングして崩れないようにすればいいですし。
……やろうと思えば山をまるごと貴金属に変えてみたりとか無駄な事が出来ますよ!
さて、どこに巣を作りましょうか。
どこも捨てがたいですが、あまり高い所は怖いですね。
「ティエラの好きな場所でいい」
そうですか?
うー……もうしばらく、考えてみましょう!
「そうか」
そう言って、ラオムさんは再び翼を広げました。
わたしはとりあえず角のあたりにしがみついて上昇時に掛かる圧力や風に負けないよう、障壁を魔力で作っておきます。誰でもできる簡単魔力操作シリーズですね。
飛ばされたら大変ですしね。潰れたトマトは勘弁してほしいです。
正しく対処すれば怪我はしないでしょうけど、でも落ちると怖いので。
ゆっくりと降りていく太陽を眺めつつ、雄大な景色を俯瞰して遊覧飛行。
ラオムさんと空を飛ぶのは、とても楽しいことです。時に夕暮れの空を、時に星空を見上げ、あるいは景色を見下ろしながら、沢山の場所を見ました。
まだ、見ていない場所もたくさんあります。
もっといろんなところを、一緒に見てみたいものですね。
そういえば、グローツラングさんの洞窟、特定できそうなんですよね!
アンクさんからお手紙きてました!
「ほう? 奴もたまには役に立つな」
あの方、お仕事がストレス解消になってるみたいですし。
……何でイライラしてるんですかね?
何かあれば頼んでみるといいですよ!
「そうだ、な。……ティエラ」
はい?
「……その、奴とあまりやり取りするな」
……はい! あ、もしかしてやきもちですか!? 照れますね!
「煩いっ」
照れると相変わらっ、にゃあっ!?
ちょっ、そんな飛び方したら――
「!?」
にゃうぁぁあえうぁ――――――っ!!
人生、散歩進めば小石に躓くものです。あ、人じゃないですが。
そんな訳で、思いっきりわたしは振り落とされたのでありました。すいません、ちょっと予想通りとか思ってすいません!
触らぬ神に祟りなし、または薮蛇。こういう状況でラオムさんをからかうような事を言うのはやめようと、心底思いましたね! ……多分、明日には忘れてますけど!
魔力障壁
魔力操作の中では簡単な部類。
膜状に魔力を固形化して障壁にする。
魔生物たちから寄せられた便利な使用例
●たまに本部に謎の薬品がぶちまけられている。足を障壁で覆えば安心。
●酸性雨でハゲないように使ってます。最近降らんけど
●強風を発する機械が本部を闊歩していたので、風を防ぐのに使用。
●傘代わり。
●潜水時に毛並みが濡れるとイヤなので使ってます。