健康第一、モンスタードック 12
「じゃ、説明始めまーす。はいこれ見てー」
脇に魔力のスクリーンが現れます。……魔力で作れる物質には個々でかなり向き不向きがありますが、可視化して色づけするくらいなら誰でも簡単です。
スクリーンには――『リア充は死ね!』――いやはやなんとも力の篭った筆跡ですが、一秒とせずラオムさんの吐いた炎に掻き消されてスクリーンごと消え去りました。
「で……何だって?」
「すいませんでした」
潔いのはいい事です!
「僕らは魔力で生命を維持している。更に何をするにも大抵魔力を使う。これはいい?」
はい!
「他の生物と違うのは、余剰エネルギーを好きに使える所だね。必要分は体に含まれていて、体の質量と同じ量。これは普段使う事が出来ないようになっている。……体を変化させられるのは、その魔力……身体組成魔力を弄ってるっていうのが定説だね」
一応知ってますよ、い、一応ですけどね!
身体組成魔力は、体が傷付くと削られます。そうなると放散している魔力で補うのです。魔力を使ったり魔法術を使ったりすると魔力が減り、50%程になると空腹感を覚え始めるので、大抵は80%以上を維持するのが好ましいと言われています。
他の動物さん方と違い、沢山食べてもあまり太ることはありませんし。
「で、だ」
「……面倒だな。もったいぶらずにとっとと話せ」
「はいはい、分かってるって」
イラッとした様子で尾を床に叩き付けるラオムさんに、アンクさんは軽い口調で言いながらも思い切り肩をびくつかせております。
いやあすっかり刻み込まれてますね、恐怖を!
「割と酷いよね、ティエラちゃん……えーと、で、続きね。そんな訳で魔力無しには役立たずな僕らだけど、魔力を使わずに特殊な力が使える事がある」
あなたも中二病ですか!?
「だから……! ……うん、もういいや。で、それは大抵というか今のところ、全てつがいを得た時に発現してるみたいなんだよね」
ふむふむ……?
えーと、つまり。
……愛の力に目覚めたって事でよろしいですか?
「よろしくないよ!」
「ティエラに怒鳴るな」
「痛っ! ……ううう、もう帰りたい……研究に戻りたい」
そういえば元々研究室に篭ってばかりでしたしね。
よく考えてみると、こんなに長時間歩き回っているのを見るのは初めてです。
「人を引き篭もりみたいに言わないでよ……」
すいません!
魔生物の身体
ほとんど他の動物と似通っているが、体の質量と同量の魔力を含有しており、これを身体組成魔力という。
この魔力は意図して使用する事が出来ない。
ただし死の危険を感じ取った時本能的に消費される事もある。
ちなみに魔力に重量は無い。