健康第一、モンスタードック 6
六角形で、地面に構成陣を描いた部屋。魔力を通す特殊なインクで描かれたその陣は、部屋の外から魔力を通して発動させる事が出来ます。
わたしにとっては見慣れた部屋ですが、しかし。
「離れろ、だと?」
久しぶりに来たであろうこの方は、不機嫌そうにどしんと右足で地面を叩かれました。
……ちっちゃくなってるのに、地響きが!
わたしも離れたくはないですけど、検査ですから仕方ないのです。
ぺろりとラオムさんの口元を舐めてから、とりあえず数センチ離れました。
「いや、もうちょっと離れてくんないかな」
部屋の外から突っ込みが入ります。はい、そうですよね……はい。
一緒に検査される事は出来ますが、近すぎると混同してしまって上手くいかないそうです。
にゃうううぅぅ……ああ、さっきよりよっぽどドナドナされる気分です。
「早く終わらせるからねー。はい、ちょっと大人しくしてー」
ぱちんと音がして照明が弱まり、ぽうっと足元の陣に光が灯ります。黒い魔力は、本部全ての魔力を賄う巨大魔石のものです。
わたしもよく魔石弄ったりしてますが、本当にすさまじいサイズですよあれは。
僅かに光っていただけの陣は徐々に足元からせり上がっていき、頭上までを覆って停止します。円柱型の立体陣に包まれて、体の中や魔力などを解析される、独特の感覚。
「気色悪いな」
そうとも言えますねえ。
解析魔法術というのは、個人差(人……?)はありますが違和感が出ます。わたしは然程でもございませんが、吐き気がするほど嫌だという方も居ます。
特に、魔力が多いほど違和感が強いとか……あ、泣けてきました。
「あと20秒ー」
脈動するように時折陣が波打つのは、わたしやラオムさんの魔力と拮抗しているからでしょう。何度か陣の外縁に沿って上昇する黒い光輪を眺めていると、明かりが強まって陣の光が消えました。
あ、終わりですね。
「ティエラ」
はーい。
なんだかもうすっかり条件反射というか首輪でも付けられたようで、呼ばれればホイホイくっつきに行ってしまうわたしなのでした。
健康診断
魔生物は基本的に細菌・ウイルスの類も魔力化してしまうため病に罹らない。ただし魔生物特有の病が幾つかある。
原因は不明で、予防は不可能だが健康診断によって発病しないうちに気づく事は出来る。治療は可能。
身体検査、魔力検査のふたつを同時に行う。
個人差はあるが違和感を伴う。