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健康第一、モンスタードック 4








「……おい」


 わあわあと喧しかったその場が、一瞬で静まり返る。頭上から聞こえる重厚な声は冷ややかで、苛立ちがありありと見てとれました。


 ……あ、暴れないでくださいね!? 本当に!


 一瞬にしてブリザード吹き荒れる極寒の地と化したその場。ひ、ひいい怖いです!

 冷や汗を一筋流して「あたし仕事あるからー?」と颯爽と去るパティさん。う、裏切りもの!

 つがいとなって数日、久々に恐怖を味わっています! エマージェンシーです!

 わらわらと覗いていた人々が去っていき、逃げ遅れ……残されたメーレさんとディールさんが「え、どうする?」「やべえ」と一昔前の若者のような事を言っておられます。……いえ、そういえば若者です。年下でした!


 と、その時。


「失礼、補助具を持って来たんだ、けど……え、何してんの?」


 空気を読む気ゼロの能天気な声。ラオムさんの体で全く見えませんが――確かこの声は、スフィンクスのアンクさんです。哲学者がメインですが研究家としても活動しておられ、そのため普段は人型で居る事が多いですね。

 たまに本来の姿で日向ぼっこしてるらしいですけど。ピラミッド横とかで。 


「えーと? 何か知らんけど、ほい、縮小するからちょいと離れて離れて」


 あ、はい。


「じゃ、大人しくしててねー暴れられると僕が死ぬからねーはいはい、行くよー」


 アンクさんはえいやっと腕を振りかぶり、何かを上に投げました。

 ……宝石? いえ、術付きの魔石ですか。薄らと圧縮した陣が見えます。


「……ふん。何だ、やけに細かいな」

「そう? 最近のはこうだよ。合図したら体縮めてねー、僕の背くらいに」


 魔石はぴたりとラオムさんの体の上で静止します。わたしは慌てて駆けて、とりあえずアンクさんの居るあたりに駆けてきました。

 ……そういえばアンクさんはラオムさんより年上ですし、余裕ありますねえ。


「やあ久しぶり、ピンクちゃん。今は何て名前?」


 元々ピンクちゃんじゃないですけどね! ティエラと申します。


「そーかそーか。良かったなあ……黒いのー! はい小さく!」


 ぱちんと魔石がはじけるような音がして、半球――というよりは傘のような形の立体陣がラオムさんを包み込みました。

 色は黒ではなく黄色ですから、アンクさんの魔力ですね。


「よっしゃ! 成功! いやあ、みんな試させてくれないからねえ」


 文句を言わずラオムさんが体を小さくしていくのも、アンクさんには一目置いてるということなのでしょうか。流石ですね!

 あっという間に5分の1ほどのサイズになったラオムさんも素敵です!


「ほう……? 随分と体が楽だ。相変わらずいい腕だな」

「そうなんだよ、僕って腕が良いんだよ。でも何故か実験させてくれないんだよね、みんな」


 それはアンクさんの発明したものが本気と悪ふざけ半々だからではないでしょうか!


 と、以前妙な魔法術で白黒のホルスタイン柄にされたわたしが言うと、えへっと可愛らしい仕草でアンクさんが照れました。照れるところではないです。 


「ティエラ」


 そんな事はさておき、わたしは一回り以上小さくなったラオムさんの元に駆け寄るのでありました。






縮小


肉体変化のひとつ。他の生物に変化するよりも難易度は高い。

体組織を無理矢理押し縮め、余剰部分を魔力に変換したりと四苦八苦しながら縮こまる。変化した後も体が疼いたり痛みが出たりする事がある。

最近開発された補助具により、縮小の難易度は格段に下がった。縮小後の違和感も解決されている。

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