表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ある夏の夜のこと

作者: 瑚茄


 今からする話は、私が夏の夜に体験した話である。




 その日は夏にしては過ごしやすく、久しぶりに寝やすい夜だった。

 私はこんな日は早く布団にもぐり、ぐっすりと朝まで寝て過ごしたいと思い、いつもより少し早いが寝ることにした。

 案の定、涼しくて寝やすく、いつもだったらお腹にだけ掛けて終わりの掛け布団を、この日は肩から足の先まで掛け寝ることにした。

 いつもだったら私は夢も見ないくらい深く眠ってしまうというのに、この日は眠りが浅かったのか、珍しく久しぶりに夢を見た。

 久しぶりに見た夢だというのに、その夢はなんとも最悪なものだった。追いかけられているのだ。顔のない黒い人間の形をした影のようなものに。しかもその影は一見歩いているように見えるが、全速力で走っている私と大差ない速さで私のことを追いかけているのだ。

 走っている道も、たまに曲がり角があるくらいで一本の道しかないのだ。もちろん窪みや扉など、隠れる場所もない。

 走りつかれて速度が遅くなってきている私に対し、影の方は変わらず、その距離は段々と詰められてきている。

 ああ、あと3mもないのではないだろうか。あの影に捕まってしまったら、私はどうなるのだろう。ああ、誰でもいい!! お願いだから助けてくれ!!!

 そんな中、ふと肩に重みを感じた。何だ、と思い肩を見てみると、黒い手が乗っかっていた。本当だったら、ここで止めておけばいいのに私はその手をたどって後ろを見てしまった。

 そこには先程まで私のことを追いかけていた黒い影が。そして、先程まで顔がないと思っていたそこには口があった。その口は、ニーッと弧を描いていった。


 次の瞬間、私は目を覚ましていた。あたりは真っ暗であった。私は、ここはまだ夢の中で、これはあの黒い影の腹の中なのか、と思ったが、布の擦れる音が聞こえたことで、掛け布団を頭から被っていることに気が付いた。

 呼吸は乱れており、心臓もドキドキといまだ昂っていた。

 ようやく頭も働きだした所で、いつまでも布団に潜っていないで、布団から顔を出し深呼吸でもして気持ちを落ちつけようと決めた。

 私は布団から這い出てて顔をあげた。すると私の顔の正面に何かあった。近すぎて何があるのかすぐには判断できなかった。徐々に焦点が合ってきて、それのなんなのか判るようになる。それは人の顔だった。目をカッと開き、こちらのことを何の感情もないような目で見ている。

 次にその顔は口を開き、大きな声で叫んだ。とても大きな声だった。否、もしかしたら私も一緒に叫んでいたのかもしれない。


 次の瞬間、私は目を覚ましていた。今回は頭から被っている掛け布団越しに朝日が見えた。

 ああ、ようやく朝がきた。もう夢を見なくて済むのだ。

 私は頭から被っている布団を避け、本当に夢から覚めたことを実感し、窓の方へと歩いて行きカーテンを開けた。まだ朝だと言うのに、もはや夏の厳しい陽射しが降り注いでくる。また今日も暑くなるのだろう。




 この話は、私が夏の夜に体験した話である。信じるかについてはあなた次第である。

 また余談として、私がこの夢を見て、本当に目が覚めてから思ったことは、「なぜお化けに叫ばれなければいけないのだろう…?」であった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ