違法ダウンロードで『生贄』にされた俺、バグったチートメニューで最凶の黒鉄狂戦士になる 〜世界を執筆した神々(作者)を皆殺しにするまで死ねない〜
第1話:違法ファイル「000_RAW.exe」の代償
午前3時。
部屋の明かりは、モニターの青白い光だけだった。
画面に映るのは、山積みのカップ麺と、海外の海賊版マンガサイト。
俺はダークファンタジーのマンガを貪るように読んでいた。
血、怪物、絶望、そして容赦のない裏切り。
理不尽で暗い世界だけが、俺の退屈な現実を忘れさせてくれた。
──それが、人生最大の狂気の始まりだった。
◇
掲示板の片隅で見つけた、名無しのユーザーが投稿したファイル。
『000_RAW.exe』
説明欄には、自動翻訳された奇妙な言葉が並んでいた。
【究極のダークファンタジー。ダウンロードした者が、この物語の「主人公」となる。第一巻を生き延びた者はいない】
よくあるフィッシング詐欺か、仮想通貨のマイニングウイルスだと思った。
どうでもよかった。俺はクリックした。
自動で画像ビューアが立ち上がる。
表紙はない。ただ、異常なほど緻密に描き込まれたモノクロのページが現れた。
1ページ目。
散らかった部屋の絵。机、椅子の位置、壁の傷。
心臓の鼓動が跳ね上がった。それは、俺の部屋そのものだった。
2ページ目。
モニターの前に座り、画面を凝視する男の背中。
俺と同じ髪型、同じ姿勢。キーボードを握る手が震え出す。
3ページ目。
そのページは、まるでインク瓶をぶちまけたように真っ黒だった。
中央に、歪んだ中世風のフォントでこう刻まれていた。
『退屈な現実の削除を完了しました。閲覧の代償は、お前の「肉体」だ』
「は……?」
声を出した瞬間、モニターが消えた。
停電ではない。光が画面の中央へ、ブラックホールのように収縮していく。
PCのファンが止まり、耳が痛くなるほどの完全な静寂が訪れる。
次の瞬間、鼻腔を突いたのは、錆びた鉄、泥、そして内臓の腐敗臭。
床が消えた。
俺の身体は、底なしの暗闇へと落下していった。
◇
「ガハッ……!」
激痛と同時に、口いっぱいに苦い泥を吐き出した。
肌を焼くような酸性雨が顔に打ちつける。
パニックのまま立ち上がろうとしたが、身体が鉛のように重い。
耳元で、重々しい金属の軋み音が響いた。
自分の手を見た。
そこにあったのは、無数の傷と錆に塗れた、禍々しい黒鉄の籠手だった。
俺は、巨大な全身板金鎧の中に閉じ込められていた。
この鎧は生きている。
動くたびに肉に食い込み、激痛と共に、心臓へ直接アドレナリンを流し込んでくる。
すぐ横の泥に、一振りの「鉄塊」が突き刺さっていた。
洗練された聖剣でも、ゲームの武器でもない。
人間の胴体ほどもある、刃こぼれだらけの巨大な大剣。
ただの、刃のついたアンビル(金床)だ。
その時、脳を焼きごてで貫かれたような激痛が走った。
視界の端に、新鮮なインクが滴るような、黒いゴシック体の文字が浮かび上がる。
【4ページ目:生贄の無駄な足掻き】
『侵入者は10秒も持たない。疫病の猟犬どもが、すでに新鮮な肉の恐怖を嗅ぎつけている』
「恐怖、だと……?」
血の混じった唾を吐き出し、俺は歪んだ笑みを浮かべた。
呪われた黒鉄の鎧から、純粋な殺意が神経に流れ込んでくる。
「舐めるなよ、クソ原作者。俺がどれだけこの手のクズ作品を読んできたと思ってる」
中世の不気味な森の霧を切り裂き、3つの巨大な影が現れた。
馬ほどもある巨体。
露出した肋骨、三つに裂けた顎、黄色い牙。
生者を貪り尽くすためだけにデザインされた、この世界の化け物だ。
だが、俺は獲物じゃない。
先頭の猟犬が、腐臭を放つ息を吐きながら俺の首元へ跳びかかってきた。
身体が勝手に動く。黒鉄に刻まれた、過去の戦士の殺戮本能が覚醒する。
両手で大剣の柄を握りしめた。
咆哮。
自分でも驚くほどの怒声と共に、鉄塊を下から上へと振り抜いた。
──ザシュッ!!!
大剣は怪物を斬るに留まらず、頭から尾までを綺麗に真っ二つに叩き割った。
黒く熱い、感染性の返り血が鎧を染める。
凄まじい衝撃に地面がひび割れ、俺の腕の筋肉が悲鳴を上げた。
残りの2匹が、その圧倒的な暴力に怯え、動きを止める。
激痛が走る。だが同時に、視界のインク文字がバグったように激しく明滅し、書き換わった。
【警告:システムエラー。主人公がシナリオを書き換えました】
【実績解除:ファーストブラッド】
【報酬:違法スキルのダウンロードを開始します ── 『読者の狂乱Lv1』】
【キャラクターメニュー更新】
・クラス: なし(状態:奴隷・生贄) | レベル: 2
・HP: 34/50 (衝撃により肋骨にひび)
・MP: 0/0
・正気度(SAN値): 82% (減少中……)
・状態異常: 酸性雨による腐食(1分ごとにHP-1)
背骨を灼熱のエネルギーが駆け抜ける。
正気度と引き換えに、筋力が爆発的に上昇し、痛みが消え失せた。
代わりに湧き上がるのは、抑えきれない渇血感。
大剣を片手で担ぎ上げ、俺は怯える2匹の化け物を睨みつけた。
「さあ、次のページだ」
俺は、狂った世界の化け物どもに向かって、自ら突撃した。




