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よくぼうよくぼう

母の太い乳房も、父からの忌々しいキスも、

なんだかんだ慣れた後、


気づけば

この世界に生まれて三年が経った。


俺の思う異世界らしく、モンスターがいる世界だ。

騎士とか賢者みたいのがいて、戦う。まさに。


飯はうまい。肉がうまくて、うまいんだ。


モンスターはうまいんだろうか?「動物」とは体の構造とか成分も何もかも違うらしいからな。


さて、三歳。


前世なら幼稚園に通い始める頃だが、

この世界の子供は少し違う。


転生者がそこまで珍しくないからだ。


「ジューゴは本当に賢いわねぇ」


母はよくそう言った。


「えーへへ、、」


賢いのではない。


中身が十八歳だっただけだ。


もちろん、そのことを話すつもりはない。


前世の記憶を打ち明ける転生者もいるらしいが、俺はまだ迷っていた。


今の生活が心地よかったからだ。


父がいる。


母がいる。


温かい食事がある。


前世では当たり前だと思っていたものが、今は妙に愛おしい。


(マジこのままでいいな、、)


本気でそう思っていた。



「能力者になれなくてもいいのよ」


ある日の昼。


洗濯物を干す最中の母が言った。


「え?」


思わず聞き返す。


母は不思議そうに笑った。

風で、干し竿にかかった下着が揺れる。


「そんな顔しなくても」


「だって、能力者ってすごいんでしょ?」


この世界には能力がある。


強い欲望が形になった力。


一定以上まで育った能力は国から認められ、正式な能力名を授かる。


能力名を持つ者は尊敬される。


学院にも通える。


仕事にも困らない。


子供たちの憧れだ。


「すごい人もいるわね」


母は頷いた。


「でも、能力名を持ってる人なんて本当に一握りなのよ」


「そうなの?」


「ええ」


母は笑う。


「お父さんだって持ってないもの」


俺は少し驚いた。


父は立派な家具職人だ。


仕事も上手い。


村でも頼りにされている。


当然、能力者だと思っていた。


「能力がなくても生きていけるの?」


「もちろんよ」


母は当然のように言った。


「むしろ、その方が普通だもの」


その言葉は少し意外だった。


能力者が当たり前の世界だと思っていた。


そうじゃないらしい。


能力者は特別。


だからこそ尊敬される。


そんな世界なのだと。


僕は干された衣服と共に弱い風に吹かれた。



電子レンジの中みたいな色の夕方に、


俺は父の仕事場にいた。


木の匂いがする。


削られた木屑が床に散らばり、陽の光を浴びて輝いていた。


父は椅子を作っていた。


無駄と迷いのない手つき。


見ていて飽きない。


「すごー」


思わず呟く。


父は笑った。


「長くやってるからな」


「能力じゃないの?」


「違う違う」


父は首を振った。


「ただの経験だ」


そう言って木を削る。


職人の手だった。


俺は少し羨ましくなった。


前世の自分には明るいものが何もなかった。

得意なことや、恋人、、、。


毎日をなんとなく生きていた。


だけど父にはある。


誇れるものが。


「能力者って偉い?」


ふと聞くと父が手を止めた。


少しだけ考える。


「偉くはないな」


「でも強い」


「強いさ」


父は頷いた。


「ただ、強い能力者ってのは大体何かに取り憑かれてる」


取り憑かれている。


その言葉が妙に頭に残った。


「欲望に、ってこと?」


「そうだな」


父は苦笑した。


「何かを守りたいとか、勝ちたいとか、作りたいとか」


そういう強い気持ちが力になる。


この世界では当たり前のことだった。



数日後。


村が騒がしくなった。


近場にモンスターが出たらしい!


俺も見に行った。久々に生で見る。


野次馬の一人として。


そこにいたのは一人の男だった。


ガイル。


村で唯一、能力名を持つ戦士。


なんというか、背骨に似た大きめのモンスターと向かい合っている。


普通の人なら逃げる。


だがガイルは逃げなかった。


剣を抜く。


飛び込む。


爪が肩を裂く。


血が飛ぶ。


それでも止まらない。


何度も斬る。


何度も立ち上がる。


最後にはせぼね()()()を倒した。


村人たちの歓声が上がった。


「ガイルさんだ!」


「助かった!」


「やっぱりすげぇ!」


子供たちが駆け寄る。


俺も見ていた。


目を離せなかった。


ガイルは血だらけだった。


それなのに笑っている。


「大袈裟だって」


照れ臭そうに頭を掻く。


村人たちはさらに喜ぶ。


感謝する。


尊敬する。


その光景が少し羨ましかった。


前世の俺はどうだっただろう。


誰かに感謝された記憶なんて、ほとんどない。


だけどガイルは違う。


傷ついて。


戦って。


誰かを守っている。


格好いいと思った。


本当に。


あんな風になれたらいいのに、と。


だが、その時だった。


「次はもっと強い奴が出るといいな」


ガイルが笑いながら言った。


冗談みたいな口調だった。


けれど。

目だけが違った。


戦っている時と同じ目。


胸の奥が少しざわつく。


嫌いじゃない。


怖いわけでもない。


尊敬している。


それでも。


戦うことそのものを楽しんでいるように見えた。


能力者とは何だろう。


誰かを守る人なのか。


それとも。


何かに取り憑かれた人なのか。


俺にはまだ分からなかった。



その日の夜。


夕食の席で聞いてみた。


「ガイルさんってどうして強いの?」


父と母が鳩みたいな顔を見合わせる。


少しだけ表情が曇った。


「昔ね」


母が静かに言った。


「ガイルさんの家族はモンスターに殺されたの」


俺は強く黙る。


「奥さんも」

「娘さんも」


胸が痛んだ。


「だから守りたいのよ」


母は言う。


「誰にも同じ思いをしてほしくないんでしょうね」


なるほどと思った。


守りたい。


その願いが力になった。


この世界らしい話だった。


けれど。


俺はガイルの目を思い出す。


守りたいという願いは。


力になる。


だが力は。


その願いをもっと大きくするのかもしれない。


能力が欲望を生み。


欲望が能力を育てる。


そんな気がした。



数日後。


俺は傷ついた鳥を見つけた。


羽が折れていた。


まだ生きている。


小さな命だった。


「大丈夫」


そう言いながら抱き上げる。


助かってほしかった。


ただ、それだけだった。


家に連れて帰る。


水を与える。


餌を与える。


寝る前にも様子を見る。


俺は大人の心を持って生まれ変わったが、

本能的にか、少し幼い部分が蘇っていた。


母は困ったように笑った。


「優しいのね」


俺は少し照れた。


優しい。


そう言われるのは嫌いじゃない。


本当に助けたいと思っていたから。


だから。


翌朝。


鳥が死んでいた時は悲しかった。


小さな墓を作った。


庭の隅。


花も添えた。


手を合わせる。


助けられなかった。


悔しかった。


もっと何かできたんじゃないかと思った。


鳥の亡骸を見つめる。


半開きのクチバシ。


黒ずんだ羽毛。


チキン。


血。


胸の奥がざわついた。


喉が鳴る。


腹は減っていない。


違う。


もっと嫌な感覚だった。


これ、食べられる。


一瞬、


そんな考えが頭をよぎった。


「……っ」


後ずさる。


最低だ。


何を考えている。


俺は泣いた。


鳥が可哀想だったから。


助けられなかったから。


それだけじゃない。


死を悼みながら。


同時に食欲を抱いた自分自身がとても怖かった。


鳥肉が向ける冷たい目が呪いみたいだった。


夜。


布団の中。

眠れなかった。


窓の外では虫が鳴いている。


父と母の寝息も聞こえる。


幸せだった。


今の生活は。


本当に。


このまま続けばいいと思う。


能力なんてなくてもいい。


戦えなくてもいい。


父みたいに働いて。


母みたいに笑って。


普通に生きられればそれでいい。


なのに。


胸の奥には、ずっと消えないものがある。


前世から続いている欲望。


誰にも言えない欲望。


もし。


もしそれが能力になったら。


俺はどうなるんだろう。


考えるだけで怖かった。


だから目を閉じる。


考えないように。


忘れるように。


けれど眠りに落ちる直前。


脳裏に浮かんだのは。


昼間に埋めたアレの姿。


そして。


それを見つめていた自分の視線だった。

はは(転生者かもだけど、それは本人が打ち明けるまでこっちから聞かないのが常識よね、、しかし、そうだとして、おっぱいを吸うのってどんか気分なのかしら?)

ちち(チチと言いなさい)

はは(ああ、ごめんなさい)

ちち(ああ)

はは(これは脳内で会話をしているのかしら)

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