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歴代最強聖女、厄介ごとに巻き込まれたくないので 能力を隠して生きていきます  作者: 月代
続編②   新たな脅威と、ふたりの剣

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帰り道

塔の外に出たら、夜明けだった。


ガイウスが待っていた。エミリアが傍らに立っていた。


「……終わったか」


「終わりました」


ガイウスが深く息を吐いた。目が少し潤んでいた。


「……百年間、待っていたのは私だけじゃない。ヴォルドもそうだった。長い時間、一人で抱えてきたものが、やっと終わった」


「……ヴォルドも、終わりたかったんですか」


「本人から聞いたわけじゃない。だが、あの声を聞いたとき、そう思った。解放されて、よかった」


……そういう話だったんですね。

後でもっと詳しく聞きます。絶対に。

「ガイウスさん、百年間待っていた、とはどういう意味ですか」


「長い話だ。帰りながら話そう」


「絶対話してくださいね」


「……わかった。話す」


ガイウスが歩き始めた。杖をついていたが、足取りはさっきより軽かった気がした。



帰り道を歩きながら、エミリアが言った。


「……アリアさん、すごかったです」


「三人でできたことですよ」


「私は補助しかできなかった」


「補助がなければ私も動けませんでした。本当に助かりました」


「レオンさんも」


「俺は剣を振っていただけだ」


「そんなことはない」私は言った。「ヴォルドの注意を分散させてくれなかったら、もっと時間がかかっていました。あなたがいたから、動けた」


レオンが少し黙った。


「……そうか」


「そうです」


エミリアが少し黙って、それからふわっと笑った。


「……また一緒に戦いたいです」


「次はないといいですが、もし次があれば」


「はい、絶対呼んでください」


レオンが隣で聞いていた。


「俺も呼べ」


「当然です」


三人で笑った。夜明けの道の上で。


……三人で笑うことが、こんなに自然になりました。

いつの間に、こうなったんでしょう。

でも、いつの間にかでも、こうなってよかったです。


ガイウスが歩きながら話し始めた。


百年前、ガイウスはヴォルドの友人だったという。均衡を守るため魔術を研究していたヴォルドが、研究の末に道を踏み外した。ガイウスはそれを止められなかった。


「……だから、百年かけてこの日を準備した。君のような存在がいつか現れると信じて」


「……ガイウスさんは、百年生きているんですか」


「魔術師は、時に長生きする」


「それは……大変でしたね」


ガイウスが少し笑った。「まあな」と言った。


……百年間、ずっと待っていた人が、ここにいます。

一人で、ずっと。

それは、どれほど長い時間だったんでしょう。

「……これからは、どうするんですか」


「弟子でも取ろうかと思っている」


「……誰のことですか」


「さて、誰だろうな」


……絶対私のことではないといいですが。

三日かけて、王都へ帰った。


帰り道は行きよりずっと軽かった。荒れた大地を抜けると、緑が戻ってきた。鳥の声が聞こえた。空気が変わった。


「……きれいですね、やっぱり」


「ああ」


「王都の方が好きですか」


「荒れた大地より、好きだ」


「……当たり前ですね」


……でも、この人が「好き」という言葉を使うのは珍しいので、少し嬉しいです。

王都の門が見えてきたとき、エミリアが小さく「あ」と言った。


「どうしましたか」


「……帰ってきた、と思って」


「そうですね」


「無事に帰れるか、少し不安だったので」


「帰れましたよ」


「はい。ちゃんと帰れました」


エミリアが少し笑った。目が赤くなっていた。


……この人も、怖かったんですね。

当たり前です。でも怖がりながら、ちゃんと動いてくれました。

「エミリアさん、ありがとうございました。本当に助かりました」


「こちらこそ。……一緒に来られてよかったです」


ガイウスが「では、私はここで失礼しよう」と言った。


「また気まぐれに来ますか」


「もちろん。退屈したら来る」


「弟子の件、教えてください」


「……それはそのうちな」


そう言って消えた。相変わらずだった。


レオンが隣で見ていた。


「……あの老人は、どこへ行くんだ」


「さあ。どこか遠いところだと思います」


「不思議な人だ」


「はい。でも、信頼できる人です」


「そうか」


レオンが歩き始めた。薬草屋の方向へ。


……自然に、薬草屋の方へ向かっています。

帰る場所が、同じになっています。

薬草屋に着いたとき、父が扉を開けた。


「……帰ったか」


「ただいまです」


「怪我は」


「私はないです。レオンさんはかすり傷です」


父がレオンを見た。レオンが「問題ない」と言った。


「……まあ、入れ。飯があるから」


「ありがとうございます」


母が奥から「早く顔見せなさい」と言った。私は少し早足になった。


母に会ったとき、何も言わずに抱きしめられた。


……あ。

これは、泣きそうです。

「……ただいま、お母さん」


「おかえり。ちゃんと帰ってきたね」


「はい」


……ちゃんと帰ってきました。

約束通り。

「……レオンさんも、手当てします。かすり傷でも」


「必要ないが、お前がするなら、してくれ」


母が台所から「夕食は一時間後よ」と声をかけてきた。


「……泊まっていきますか」


「……いいのか」


「父も母も、歓迎しますよ」


レオンが少し間を置いた。それから「では、少しだけ」と言った。


……少しだけ、と言いましたが。

こういうとき、少しだけでは済まないことを、最近わかってきました。

まあ、いいです。


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