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そ:傍にいたいだけなんだ。

 純はとってもいい奴だ。真面目で、誠実で、無口で。僕とは正反対。

 どうして僕と友達でいてくれてるんだろう、っていつも思うんだ。いっつも不思議なんだ。

 静かで寡黙な純は、同じ様にしゃべらない本の虫タイプの人と一番に仲良くなりそうなのに。僕みたいなしゃべりのお調子者、嫌って遠ざけそうなのに。

 優しいから、犬みたいにまとわりつく僕をどかせなかったのかな。気がついたらうんざりしながら、でも今更新しい友達作るのも面倒くさいし。わざわざ今更こいつを切る理由もないし。

 そんな諦めで、僕と友達付き合いしてくれてるのかな。

 つい僕は純の顔を見てしまう。だけど……鈍感だからね、この人。自分がどんなに人目を引くのか、ちっとも自覚出来ないみたい。

 すっとした切れ長の目のかっこよさとかさ。見上げちゃう、羨ましい位の長身とかさ。不器用な言葉遣いとかさ。武骨な優しさとか……。

 いっぱい、いい所だらけ。女子に人気あるのに、全然気が付いてないんだ。まあ、人気が下がる様に、『週末になると、やって来る他校の不良達といつも喧嘩してる』だとか、適当な悪い噂でっち上げて女子の耳に入れてるの僕なんだけどね。

 だって、めったに笑わないからさ。そんな貴重な笑顔、女子なんかに取られたくないもん。純の事一番良く知ってるのは僕なんだから。

 純の笑顔は、僕しか知らなくていい。純と付き合いたがる女子も、僕が事前に純との接触を絶つ様にしてる。

「――昔付き合ってた彼女を敵対する不良グループのリーダーにさらわれて、助けに行ったら、その彼女純を庇おうとして代わりに殴られて、意識なくしちゃったんだって。毎日お見舞いに行ってたのに、純の事許せないご両親がひっそり病院変えちゃって、その子が今どうしてるのか……生きてるのかも分からないから、おれは死ぬまで誰の事も好きになれないだろうって純言ってた」。

 大抵の女子は、それだけで涙しながら諦めてくれた。でもたまにいる『私なら』的な勘違い自意識過剰ちゃんは、それを聞いて逆に燃えちゃうんだよね。『私がそんな子忘れさせてあげる!!』ってね。

 そうきたら、僕はこう出る。髪の毛を掻き分けておでこを見せて、小さな傷痕を指で示すんだ。

「純は出来れば一切喧嘩なんかしたくないんだ。優しい人だからね。でも向こうが純を放っといてくれないんだよ。自分が一番っていきりたがる不良達がさ。どんだけ純が守ってくれても、僕も怪我させられた。女の子じゃもっと守れない。愛する人を傷付けたくない。純は、いっつも僕にそう言ってる」

 ……うん、卑怯だよね。小さい頃にお姉ちゃん達と家の中でかくれんぼしてて、隠れて逃げる時にどこかにぶつけた傷なのにね。

 僕はサイテーな奴だ。そうまでして、純を独り占めしたがってる。こんなおかしな気持ち、届く訳ないのに。伝わる訳ないのに。

 受け入れてもらえる訳、ないのにね。

 付き合おうって言ってきてくれる女子を、こう見えて僕は結構本気で好きになろうと努力するんだよ。純より好きになれる所を探したくて。純を忘れていられる時間に置き換えたくて。

 でもね、ダメみたい。女子って可愛くて柔らかくてふわふわしてて、いつだって僕をにこにこさせてくれるんだけど。

 だけど。

 純の一部にも敵わない。

 ……当分、僕はこの実りのない恋をバレない様に続けていってもいいのかな。

 僕はただ、純の傍にいたいだけなんだ。

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