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07. オレは小心者

鈴木の寂しい気持ちを慰め、気晴らしを提案するという、

親友としての優しさを巧みに利用しながら、自分の欲望を満たすための

歪んだ提案を積極的に持ち掛けていた私。


しかし勢いよく飛び込んできた次の言葉に水を差されてしまったのです。


「空いたお皿をお下げしますねー」


店員さんが私たちの席に来て、空いた皿を回収すると、

二人の間にちょっとした沈黙が生まれました。

といっても、20秒もないくらいの間でしたが……


「おっ、もうこんな時間や、もう俺はSTOPやけど ヤマちゃんは?」


沈黙を払うように鈴木は腕時計を見て私に問いながら、

ハイボールをグビグビと勢いよく飲んでいました。


私には、この彼の何気ない仕草は、まるで、

「そろそろ(くだらない)会話を終わらせて、お開きにするで」

とでも言いたげな仕草に見えたのです。


「オレも、もう大丈夫。 刺身、旨かったなー」 「うん、旨かった」

「次回もココやな」 「そうやな、ココが ええな」


鈴木の仕草や、たわいもない会話とともに、

私は、これまで盛り上がった自分の気持ちがスゥーっと、

まるで歪んだ気持ちが浄化されるとでも言うのでしょうか、

そんな感じになったのです。


冷静に考えてみれば、愛妻家を自称するくらいに 私は妻・幸美のことが

大好きなくせに、他の男とデートさせるなんてことを、

これ以上プッシュする勇気も気力もありませんでした。

つまり、いわゆる「寝取らせ」は断念したというか、

結局は、私にはできなかったのです。


それでも鈴木との会話を通じて、ヒリヒリするような刺激的な小一時間、

寝取られ小説の世界に、ほんの少しだけでも寄せることができた、

という事実に 秘めた気持ちを鎮めながらも、自己満足をしていたのです。


結局、私は小心者なんですよね。


「ヤマちゃんの気遣いと優しさに、本当に感謝するよ。 

やっぱ、持つべきものは友やな……」


鈴木はそう言って、一気にハイボールを飲み干しました。


「まぁ、トシ(鈴木)とはホンマに長い付き合いやしなー」


「いやぁー、長いよな…… 就活の時からよな?」


視線を少し上げてしみじみ語る鈴木でした。


私は、先ほどの提案には固執することもなく、あっさりと、

親友としての声掛けをしました。


「トシが苦労をしているのはオレなりにわかっているつもりやし」

「まぁ、オレにできることがあったら何でも言ってくれて、エエよ」


と、私は、お開きとばかりにタブレットに手を伸ばしかけたところで、


「マジでありがとう、気に掛けてもらってホンマに嬉しいよ……」


しみじみとした鈴木のその言葉のトーンに、

私はニッコリ笑い返して、タブレット画面の精算のボタンを押しました。


(なんだかんだで、結局、いつものように良い時間を過ごしたな……)


私が満足感に浸りながら料金が表示されるのを待っていると、鈴木が、


「それで……さっきのヤマちゃんが言ってた提案なんやけど……」


「うん?」


「せっかくやし…… ノセてもらってもエエか?」


「え?」


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