05. 持つべきものは友
(温泉? おすすめ?)
鈴木の問いにまともに答えると、先ほどの話題を途絶えさせることなる、
そうなると せっかく昂った気持ちが冷めてしまう、と私は思いました。
「おお!えーやん! お前がその気なら、カミさんと二人で温泉にでも行ったらどうや?」
「オバハンやけど 気軽に 気晴らしくらいには なるやろ?」 と 張り切る私。
「アホか!(笑)まだそんな冗談を……」
「さすがに、そういうのは、倫理的にも世間的にもヤバいやろ! あと、俺の立場的にも」
鈴木は不倫や浮気など、ワイドショーのネタに結び付けながら、
私の提案を “酒の席の冗談” としか受け取っていませんでした。
「そうか? オレが「ええで」って言ってるんやし、問題ないやろ?」
「いやいや、そうやって心配してくれるだけで、ありがたいよ。
マジでそう思ってるよ、持つべきものは友やなー!」
ただ この言葉から気づいたのは、彼は彼でトイレで用を足しながら、
さっきの私の提案を少しは考えてくれてはいたのです。
「そうよなー」
このあたりで私も引いておけばよかったのですが、
自分のもうひとつの歪んだ感情がエスカレートしてしまって、
次の言葉を向けたのでした。
「今のお前を見ていると心配なんよ……
無理してでも、気分転換や気晴らしが必要や、と思うんよ」
「ホンマやで……」
畳みかけるように私は、真面目な顔をして、
鈴木がイメージしやすいように、「たとえば午後のひと時……」、
と前置きのあとに、映画やドライブ、公園散策、史跡巡り、など
気軽で気楽な場所とか場面を出しながら、彼の休日と比較をして、
自分の言葉を正当化していたのでした。
同時に私の気持ちは昂ぶり、なによりも背中あたりがゾクゾクとする
なんとも言えない感覚を抑えるのに必死でした。




