25. 調子のよい 説得
「いや、オレもビックリや、いきなり電話が来て、どうやった? って聞いてきたから……」
(そんなことはなかったのですが、そういうことに;;)
まぁ、私としては、鈴木が積極的であることにしておくほうが、進めやすいと思ったので。
幸美は「わかった」と快諾するはずもなく、でもそれは想定内でした。
だから私は、先ほど幸美に伝えた鈴木との会話を、再度、真面目な声やチャラけたトーンに、模写交じりで言い方を変えて、話を続けていたのです。
ついでに、そのデートをすることで、私自身の刺激になって、ED回復にも期待ができる、「オレのためにも、なるんやから……」と忘れずに私のことも追加しました。
「本当に そんなことで治る?」
「カアサンがデートをして、そして帰ってからその話をしてくれるだけで刺激になるし」
「…………」無言の幸美。
「さっきの甲子園のやつにも聞いてみたらええやん? こういうのは刺激になるんですか? って」
(少々皮肉をこめた呼び方にしました;)
「聞けるわけないじゃん、もぉ!」
ここで幸美がようやく笑顔を見せてくれたのでした。
それでも再び立ちふさがった、幸美の「壁」。
それからも、同じことの繰り返しでしたが、小一時間くらい話し合ったと思います。
話し合ったというか、私がほぼ一方的だったのですが……。
当然なのかもしれませんが、幸美がこれだけ慎重になっているということは、
さすがに嫌なのか、それとも心配なのか、いや なによりも彼女なりの倫理観なのか……。
でも、それは私も理解をしてあげないといけないのかな、そう思っていました。
だって、冷静に考えれば、やっぱりどう見ても、どう聞いても、普通の話ではないですからね。
幸美もおそらく仕事中も、ずっと このことを考えていたのでしょうから。
リビングは、重苦しい空気に包まれていたわけではないけれど、雨音がよく聞こえるくらいの静寂でした。
ただ先ほどの、私と鈴木の会話を伝えた中で、幸美の表情がポジティブに反応した一瞬もあったのです。
幸美のその反応で、私は間もなく「壁」は崩せると思っていたのでした。




