24. プリウス
30分くらい経っていたでしょうか、たまたまリビングからカーテン越しに雨模様を見ながら、ふと、(そろそろカアサンが帰ってくる頃かな?)と思っていた矢先、シルバーのプリウスが自宅の前で停まって、幸美が助手席から降りたのが見えました。
あの運転しているのは誰だ? 男か? 実は2時間くらいドライブしていたのでは?
咄嗟に、そんな妄想がひらめいてしまっていた私。
どこまで寝取られ系の小説に毒されていたのでしょうか? (笑)
幸美は帰るなり、「ごめんねー」と、(私が迎えに行く準備したのに)迎えに来なくて良くなったことを軽く詫びて、私が洗濯物を取り込んだことに礼を言ってました。
そんなことよりも私は、
「おつかれさん…… あ、プリウスに乗せてもらったん?」
「え? あ、うん、そう 事務の社員さんが送ってくれたよ」と由紀。
「ふーん、男の人?」軽い感じでさりげなく私が聞けば、
「そう…… 昔、野球してたんだって」と幸美は淡々と返してきました。
ベンチだったけど春の甲子園に出たことがある、とか、中途で入社したけど出世しているとか、年齢は40代前半らしいとか、おそらくですが、幸美は車の中で交わした会話内容をそのまま伝えてきている、そんな感じでした。
寝取られサイトの投稿小説であれば、ここから面白いドラマが始まるのですが、まったくそんな気配すら感じられなかったのです。
ダメ押しは、後ろの席にもパートの同僚 オバサン2人が乗っていた、と。
きっとワイワイ賑やかに、送ってもらったのでしょう。
夕食の準備前にひとやすみということで、お茶を飲みながらリラックスしている幸美からは、豪雨のこと、置き去りの自転車のこと、夕食のことを、いつものトーンで、私に話を振ってきました。
私もリラックスムードのこの雰囲気を幸いに、午前中のことを幸美に話しました。
「そういえば、トシから電話があってな……」と。
幸美がOKだったことに鈴木がとても喜んでいたこと、そして感謝をしていたこと、それでも鈴木は私と幸美に対して申し訳なさそうにしていたこと など、多少は盛ったものの、いちおう事実を伝えながら、だんだんと私も昂っていたのでした。
私は続けて、次の日曜日から始めて、隔週くらいを目安に、来年の春まで続けてみること、その他にデートの時間帯や思いついた行き先も、とにかく鈴木と電話で交わしたことは伝えたのです。
「え? もう、そこまで進めたの?」
幸美は、びっくりしながら、困ったような、そして何かを考えているような表情でした。




