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17. マジか……


ふと、壁掛け時計に目をやると、とっくに日付を超えていました。


私は土曜日で休みですが、幸美はパートがあります。

ここでいったん、私からこの場を閉めて、再度、あらためることにしようと思い、最後に放った言葉が、意外にも幸美に効いたみたいでした。


「明日パート先の男の人にEDのこと 聞いてみて?」と私。


「えー! そんなこと、聞けるわけないじゃん」


そう返してきた幸美は、間違いなく笑顔だったのでした。


結局、その夜に結論は出ませんでしたが、その笑顔に手ごたえを感じていました。

その笑顔のおかげで、私はぐっすりと眠れました。


ただ目覚めると不思議なもので、昨夜の一連の出来事は、朝陽を浴びると思考がリセットされたのか、どっちでも、どうでも良くなったような、気分でした。


翌土曜日の朝は、幸美とはいつものように、最低限の会話だけ (同年代のご夫婦はおそらく同じなのかな?) を交わして、朝食を済ませました。


リビングでコーヒーを片手に旅番組を見ながらパジャマ姿でくつろぐ私に、パートに出かける直前の幸美が言いました。


「トオサン、昨日のことだけど…… いちおう、わかったから …… じゃぁ、行ってきます」


もちろん私は、彼女が何を言っているのか、わからないような顔をしながら、テレビ画面に向いたまま、一気に逸る気持ちを抑えるのに必死でした。


「ん?  あー、うんうん ありがとね…… 気をつけて、おつかれさん!」


彼女がドアを閉めて、自転車で出ていく音を聞きながら、


(マジか…… ……マジか……)


私の歪んだ欲望を叶えるための最初で最大のハードルは、とりあえず越えたことになったのです。


おそらく幸美も寝室でいろいろ考えてくれていたのだと思います。

(当時 私たちの寝室は別々でした)


これは、幸美から後で聞いた話ですが、あの会話のあと、寝室で一人になると、いろいろなことが頭の中を巡ったと。


・どうして、私が鈴木さんと? 冗談じゃない、私をなんだと思っているの!


・だけど、独り身の鈴木の寂しさも、なんとなくわかるような 気がした、と。

 それは香澄さんのご葬儀に参列した時の鈴木さんの憔悴しきった姿を見ていたから。


・そんな鈴木さんを親友として慰めてあげようとしているトオサン(私)に 協力したい気持ちもないわけではない。


・私にも鈴木さんをなんとかしてあげたい気持ちはあるけれど、どうしてそれが、鈴木さんと私のデートになるの?


何度も堂々巡りだったみたいです。たしかにそうですよね……


・ほかに鈴木さんを慰める方法はないの?


・でも他の方法では、もうひとつの課題である、トオサンの体調を回復させることができない。


・EDとか刺激とか 言ってたけれど、よくわからない。


・トオサンが思い切って告白したくらいの大事なことで、男性としてとても悩んでいること、ということは、なんとなく理解ができた。


・ただ、私が鈴木さんとデートすることが、なぜトオサンのED回復に繋がるのかがよくわからない。

だけど、嫉妬が刺激になるって言ってたけど……「やらせ」で、嫉妬なんてするの?


・デートと言っても、「ごっこ」って言ってたから、半日くらいのことで、鈴木さんやトオサンの役に立てるのなら仕方がない、受けるしかないのかな……


・でも、私なんかで良いの? 鈴木さんのほうが断るのでは?

 わたしなんかで つとまるのかな?


幸美は、朝、目覚めたときに、それらの記憶がしっかりと残っていたから、受け入れようと決めた、と。

そのように振り返っていました。


リビングで一人の私は、ハードルを越えることができたものの、次のステップ、つまり鈴木への連絡をするべきか、どうなのか、悩んでいたのです。


(本当にこのまま進めても良いのかな?)と。


あらためて思ったのですが…… 私は小心者なんですね。


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