14. ダメもと
「それで、さっき帰り道で思いついたんやけど……」
「トシ(鈴木)も、女の子と ひとときでも、気楽に過ごせる時間があったら、あいつも気晴らしとか気分転換になるんかな~ って」と私。
「うーん 気分転換ね~ そかそか……」
「…… うん? 女の子? えっ なにそれ、そっち? (笑)」
冗談半分の話だと思ったのか、声まで出して笑う幸美でした。
その一方で、私はいたって真面目なトーンで返しました。
(もちろん、胸はドキドキしっぱなしでした。)
男とはそういう生き物、つまり単純なんだ、と。
女、女子、女性とひとときでも過ごすことができれば、良い刺激になって
活力にもなるんだ、と。
何よりも、今の鈴木に必要なのは、気晴らし、気分転換、気軽に、気楽に、気さくに、気休め……
そんな感じのワードを並べながら、彼の気持ちを和らげることができるように、親友である自分としては、なんとか救ってやりたいと。
そうでもしないと、彼は本当に潰れてしまう、と熱弁をふるったのです。
この時の私は、鈴木を何とかしてやりたいという 淀みのない本心でした。
しかし、すぐに歪んだ欲望が私に囁いたのです。(それ行け!今だ!今しかない!)と。
「それで…… カアサン、鈴木と半日くらい会うことって、できんかな?」
「私? 会うって?」
本当に何のことか良くわかっていない幸美の反応は、もちろん想定内でした。
にもかかわらず、私は、すでにしどろもどろになっていたのでした。
ドキドキしながら、頭の中はパニックになりかけていました。
「だから……トシと ひととき、さっきの話、というか 気分転換で……」
正直、私もこの時のことは、はっきりと覚えていないのですが、
とにかく思いつく単語を ひたすら並べただけのセリフになっていた、と思います。
「うんうん……」
幸美は、おそらく私が言っていることがわからなくて、適当に相槌を打っていたのだと思います。
ただ、鈴木のために私が何かを考えている、ということは幸美に伝わったみたいでした。
ふっと、壁掛けの時計に視線を移す幸美に、もう一度、ダメもとで私は言いました。
「さっきの話…… マジなお願いやけど、トシと半日くらいデートしてくれんかな?」




