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10. 善は急げ

さて どうやって、妻 幸美と鈴木を近づけるのか?


ここで私が自分自身でズルいと思っていたのは、この欲望を満たすために鈴木の置かれた状況を「うまく利用」しよう、としていることでした。


「持つべきものは友」とまで私に言ってくれた鈴木は、

タクシーから下車後は、誰もいないタワーマンションの一室に寂しく

帰宅したことでしょう。

居酒屋で私に見せた 亡妻香澄さんを思い出して流していた涙、

休日の虚しさを語るときの目、


「ヤマちゃんには、家庭がある、家族もある、それで十分やろ」


とポツリと出た言葉…… その時、私は無二の親友をなんとか救いたい、

その一心だったのです。


そのシーンを思い返せば、愛する妻が親友とデートをする、

という単純なことではなく、親友のことを思って考えた結果、

女性とのデートで気分転換や気晴らしをしてもらう。

そして、女性が親友である私の妻、幸美であれば、安全で安心、

彼も気を遣うこともないだろう。

もちろん変なこともしないだろうし。


(この話は、そういうことなんよ…… 善意の行為なんよ)


私は自分自身に言い聞かせていました。


親友思いの優しい自分をイメージして満足しながら、

一方で自分の歪んだ欲望が満たされることをひそかに期待しながら、

私は自宅に帰り着きました。


「ただいま」


まず最初のハードルは、幸美の説得からでした。


「おかえり~ おつかれさま…… あ、お風呂 先にすませたよ」


そんな幸美の声を、私はいつもと少し違った気持ちで聞きながら、

「善は急げ」「思い立ったら吉日」とか、

自分に都合の良い諺を思い出していました。


幸美の説得は最大のハードルでもあります。

諺だけの勢いで乗り越えることはできないと思いました。


私は逸る気持ちを落ち着かせるために、

とりあえずシャワーでも浴びて 汗を流しながら

頭の中を整理整頓させることにしたのです。


(本当に言うのか? 幸美に話せるのか? 大丈夫か?)


熱めのシャワーを浴びながら、愛妻幸美の顔が浮かんできて、

タクシーの中で巡らせた妄想が、一気に現実に戻っていくような

気がしたのです。


(まぁ、無理や 妄想を楽しめただけでもよかったんや……)


そう思うと せっかくのチャンスなのに、とアダルトサイトの小説が

霞んでいくような気持ちがしてきたのです。


(でも、鈴木も期待しているやろうし…… 

オレから言い出した手前、断れんよな……)


鈴木を「利用」するという手段があることも思い出しました。


とにかく問答を行ったり来たりと繰り返しながら、

私は答えを出せないままにシャワーを終え、

脱衣所で体を拭いていました。


その時、先に風呂に終えていた妻の下着が

洗濯機の中に入っているのを見つけました。


地味なベージュ色のデザイン的にはまったく色気がない、

いわゆるデカパンと呼ばれる綿のパンツでした。


私の気持ちは決まりました。


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