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エピローグ

 そういったことまでも、お互いに色々と考えた末に。


 村山愛は、改めて岸澪に問い掛けた。

「もしも、もしもよ。彼がヴェルダンのあの宿で亡くなったら、どうするつもり」


 岸澪は、暫く考え込んだ。

 そんなことはない、と私は考えたい。

 彼が、自分が長命した異世界に行った場合、色々と悪戦苦闘する筈だ。


 自分の最初の人生経験から言って、更にあの頃の自分の性格から言っても、、自分以外の女性3人との間に子どもを作った夫の野村雄を、あの世界の自分は簡単には許せないだろう。

 更には篠田りつも、夫を責め立てるだろう。


 とはいえ、私があの異世界に行ったときは、私が暴走したことから、それこそあの世界というか、私の最初の人生での最初の父の岸三郎は、野村雄がフランスで現地除隊して、ジャンヌ・ダヴ―と共に事実上は駆け落ちするのを黙認することになったが。

 私が暴走する筈がない、あの世界では、私の父はそれこそ野村雄の首根っこを抑えて、日本に野村雄を連れ帰る筈だ。


 そうなった場合、彼は村山愛では無かった村山キクが産んだ村山幸恵を認知することになり。

 それは、更に酷い修羅場を引き起こすことになるだろう。 

 そうなった果てに、こんな世界は嫌だ、と考えて、彼は元の世界に還ってくる筈だが。


 だが、結果的に50年以上もの間、親友関係を結ぶことになった村山愛は、追い討ちを駆けてきた。

「前世というか、最初の人生で義父の岸三郎に土下座してまで、ジャンヌ・ダヴ―をユニオン・コルスから足抜けさせた彼よ。その彼が真実を知って、安易な路を選ぶかしら。私が産んだ幸恵も認知して、面倒を見ようと奔走する筈よ」


 勿論、村山愛の言葉に願望が入っているのは、私にも否定できない。

 だが、もしも、そうなったら、更に彼が私の下に還ってこず、亡くなることに成ったら、私は。


「そうなったら、私は自裁して、彼の後を追うわ」

 私は平然とそう言っていた。

 

 完全にストーカーと言われても仕方がない。

 だが、自分の言動に責任を取る、となると、そう言わざるを得ない。

 何しろ、野村雄では無かった、彼を其処までに追い込んだのは自分なのだから。


 その言葉を聞いた村山愛は、完全に絶句していた。

 その様子を見て、何故か面白く感じた私は、村山愛に問い掛けた。

「彼が還ってこなくなって、私が自裁したら、愛はどうするの」


 岸澪の反問を聞いた私は、改めて考え込んだ。

 もしも、そうなったら、私はどう行動するだろうか。


 私、村山愛は無意識の内に、言葉が出ていた。

「私も後を追って、自裁するわ。貴方を放っておけないから」


 そう言いながら、私は何故か心の中で笑わざるを得なかった。

 これが腐れ縁という代物なのではないだろうか。

 単なる親友ならば、仲が悪くなったのを機に別れるのだろうが。

 腐れ縁となると、悪い意味を持たれそうだが、どうにも切れない友人関係だと聞いた覚えが。

 私と岸澪の友人関係だが、今やそういう友人関係なのかも。


 それこそ気が付けばだが、異世界体験まで含めるならば、普通の人間ならばアリエナイ、お互いに100年以上どころか、200年近い人生を送っているのだ。

 そうした中で、50年以上も友人関係を結んでいる等、腐れ縁と言わずして、何が腐れ縁になるのだろうか?


 村山愛の返答を聞いて、岸澪も(心の中で)笑わざるを得なかった。

 私を放っておけないか。

 確かにそう想われ、考えられて当然ね。

 ずっと、転生に気付いてからに限ってでも、50年以上も続いている友人関係で、その間に彼女に掛けた自分の迷惑を考えれば。


「それでは、その時は宜しくね。でも、そうなると、土方鈴やジャンヌ・ダヴ―も後を追いかけてきそうね」

「そうなったら、その時ね」

 私達は笑い合った。


 そして、笑い合いながら、村山愛は考えざるを得なかった。

 

 岸澪は何処まで考えているのだろうか。

 そんなことは無い、と実は軽く考えているのではないだろうか。

 100年以上というか、200年近い人生経験が私にあるためかもしれないが。


 岸澪は、今でも日本の二大政党の片割れである立憲民政党幹事長を務めた超大物政治家の小泉又次郎、更にはその後継者を政界引退に追い込み、衆議院議員を務めたこともある名政治家の顔を持つが。

 実は政治家というより、革命家なのではないだろうか。


 革命家に必要な資質は、超楽観主義者であることらしい。

 他の人なら失敗すると考えることでも、成功すると考えて行動するのが、革命家には必要不可欠だ。

 実際、後から振り返れば、革命の成功は必然だったように見えるが、あの時、革命が成功する、とどれだけの人が考えていただろうか。

 勿論、革命前夜の世論、空気が漂っていて、革命家はそれを利用しただけ、と言われるだろうか。

 そういった世論、空気がどれだけの人に精確に測れるモノだろうか。

 そうしたことからすれば、革命家は超楽観主義者で泣ければ務まらないのも正しい気が。


 村山愛は考えた。

 それでも付き合う私は、同類なのだろう。

 これで完結します。


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