村山愛と岸澪―1
様々な紆余曲折があった以上、岸澪と村山愛は、色々と考えざるを得ないのです。
そんな前世を後悔する想いを、岸澪がしていることを、村山愛は何となく察していた。
何しろ最初の人生では、お互いに関わり合おうとしなかったことから、村山愛と岸澪というか、村山キクと岸忠子は、お互いに疎遠な人生を送ることになったが、異世界生活の人生の中では、結果的にだが、50年余りの間、紆余曲折があったが、親友と言える関係を築いて、共に過ごすことになったのだ。
その発端が、お互いが関係を持った男性、野村雄を介することで、更にお互いに野村雄の子を産んだことから、というのに色々と考えざるを得なかったが。
そうは言っても、この異世界に来るまでの経緯、更にお互いが抱えた秘密等を腹蔵なく話し合える、というのは、お互いにとって極めて得難い友人関係と言えることだった。
更に村山愛は、そう拘りが無い身ではあったが、そうは言っても、野村雄との関係において、ジャンヌ・ダヴ―が恋の勝者になったことを羨まざるを得ず、岸澪に加担することになったのだ。
(岸澪のジャンヌ・ダヴ―に関する想いは言うまでもない。
あの異世界に赴いたことから、幾ら自業自得の側面があって、それなりに反省せざるを得なかったといっても、最終的には、ジャンヌ・ダヴ―を、岸澪は不倶戴天の仇敵視することに、完全になったのだ)
勿論、50年余りという長い間の異世界生活だ。
村山愛と岸澪との間の友情だが、それなりどころではない波風が立つことになった。
例えば、第一次世界大戦が終わるまでは、それなりに良好な友人関係だったが。
第一次世界大戦終結直後に、野村雄がジャンヌ・ダヴ―の下に奔ったことについて、村山愛が岸澪に対して、男女平等の政治活動に岸澪が奔った為では、と指摘したことから、図星だったこともアリ、却って岸澪が激怒して、二人は暫く口も利かない関係になった。
(尚、この時は数年掛かったが、お互いに異世界に居るのが、ジャンヌを含めて3人しかいない、ということが分かっていて。
お互いに口を利かないままでは、孤独感に耐えられず、少しずつ関係が雪溶けして、仲直りした)
又、第二次世界大戦勃発直前の頃、岸総司が、村山キクの産んだ、総司からすれば義妹になる村山美子と結婚したい、と言い出したときは、幾ら今では自分の親友とはいえ、夫の元愛人の村山キクの産んだ娘と息子が結婚して、息子が夫の元愛人を「お母さん」呼びすることになるのか、と岸忠子(岸澪)は暫く不機嫌な日々を送ることになり、さしもの村山キク(村山愛)も不快感を覚えて、不仲になった。
そういった事態が起きたことを知った双方の子ども達、村山幸恵と岸総司、村山美子は、二人の母親の仲直りに奔走して、結果的に総司と美子の結婚式に、母親二人は仲良く出席する事態が起きたのだ。
(後、余談をすれば。
この総司と美子の結婚式に、実父の雄は、この当時の日本とフランスの距離から欠席した。
その一方、アランとカテリーヌの結婚式には、雄は父として出席したことから。
何で正妻の子の僕の結婚式は欠席で、愛人の子のアランの結婚式には出席するのか。
と総司は理屈では分かるとはいえ、感情的には不快感を覚えることになり。
第二次世界大戦時に父子が出会った際に、総司が雄を殴る事態を引き起こした。
そして、不義理をした父に息子が怒った単なる父子喧嘩で済む筈だが、伝言ゲームの果てに、フランス陸軍の将軍を、日本海兵隊の尉官が殴ったとして、国際的な大騒動になったのだ)
だが、その一方で、それだけの波風を乗り越えたことが、二人の友情を改めて深めることになり、異世界から戻った今でも、親友と言える関係のままでいられるのだ。
そういったことを、二人は改めて自覚してはいた。
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