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9/10

エンディング:作者に伝えたい思い、そして…

(舞台は静かに明転。中央には書斎風のセット。羽ペンとインク壺、少しくたびれた原稿用紙。

 シェイクスピアが椅子に座っている。机の上には、演じ終えたキャラクターたちの名札が並んでいる)


(そこに、あすかが穏やかな笑顔で登場)


あすか(少し息を整えながら)

「……お疲れさまでした、シェイクスピアさん。

 今日は本当に、いろんな方から、いろんな“思い”をぶつけられていましたね。」


シェイクスピア(苦笑しながら)

「いやはや……まさか自分が“登場人物たちに糾弾される夜”を経験するとは。

 作家とは、時に“創造の親”であり、“罪深い神”でもあるということを痛感しました。」


あすか(くすっと)

「でも皆さん、最後はあなたの言葉に納得して、

 それぞれの舞台に戻っていきました。

 “作者に伝えたい思い”を、ちゃんと受け止めた証拠ですよ。」


シェイクスピア(感慨深く)

「ハムレットの苦悩も、ジュリエットとオフィーリアの涙も、

 シャイロックの怒りも、フォルスタッフの嘆きも、カエサルの矜持も……

 全部、私の中にある“人間”そのものだった。

 それを彼ら自身に語らせたことで、初めて私自身も理解できた気がします。」


あすか(椅子を引いて、向かいに座りながら)

「どうして、こんなにも“人間の心”を深く描けたんですか?

 たとえ自分が責められることになっても、書かずにはいられなかった?」


シェイクスピア(静かに頷いて)

「ええ。

 私は、何者かの代弁者だったのだと思います。

 笑う者、泣く者、怒る者、裏切る者、許す者――

 そのすべてを、劇という“鏡”に映したかった。」


あすか(しんみりと)

「……それでも、きっとつらいときもあったでしょう。

 物語の中で、人を死なせたり、悲しませたりするのは。」


シェイクスピア(少し視線を落とし、微笑して)

「ええ。

 特に“描かれた者たち”が、後になってこうして私に苦情を言いに来ると、ね。」


(観客、笑い)


あすか

「でもきっと、それだけ彼らが“生きていた”ってことですね。

 物語が終わっても、彼らの声は消えない。

 それって、すごく素敵なことだと思います。」


シェイクスピア(にっこりと)

「ありがとうございます、あすかさん。

 そして……ありがとう、私の登場人物たち。

 君たちは、私の想像を超えて生きていた。

 それは、何よりの誇りです。」


(舞台奥から、ハムレット、ジュリエット、オフィーリア、シャイロック、フォルスタッフ、カエサルたちがゆっくりと登場。

 皆、どこか微笑を浮かべて、静かに舞台中央に集まる)


(観客、万雷の拍手)


あすか(立ち上がって)

「それでは最後に、皆さんと一緒にお別れの挨拶を。

 どうか忘れないでください。

 物語の中で語られた声は、いつか必ず誰かの心に届くということを。

 それがたとえ、作者にぶつける“苦情”であっても――」


シェイクスピア(満面の笑みで)

「――それは、最高の“賛辞”なのですから。」


全員(舞台中央に並んで)

「ありがとうございました――!」


(カーテンコール。照明がゆっくりと落ち、音楽とともに暗転)


【FIN】

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