幕間:控室トーク
愛とため息のすれ違い劇場
(舞台転換。控室風のセット。ソファとティーテーブル、カーテンの奥に仕切り。
花束や台本、チョコレートなどが置かれている。ジュリエットとオフィーリアがリラックスした様子で座っている)
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ジュリエット(紅茶をくるくる混ぜながら)
「ねえ、オフィーリア。あのさ……
ロミオって、なんかすぐ死なない?」
オフィーリア(小さく吹き出して)
「え、急に? うん……あの、“すれ違っただけで”ね。」
ジュリエット(少し怒ったように)
「手紙が届かなかっただけで毒を飲むって、
せめてもう一回くらい確認してよ!
“早とちり選手権”だったら間違いなく優勝だよ、あの人!」
オフィーリア(うつむきながらも微笑み)
「私も……“尼寺へ行け”って言われてから、もうどうしていいか分からなくなって……
なんで、あんなに冷たくなったのかな……」
ジュリエット(ぎゅっとオフィーリアの手を握って)
「わかるよ……好きだから、何言われても信じたくなっちゃうんだよね。
でもね、言わせてもらうと――男って本当にめんどくさい!」
オフィーリア(しみじみと)
「うん……たしかに。好きって気持ちは本物だったのに、
“全部間違いだったのかも”って思わせてくる……ずるいよね。」
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(その後ろのカーテンの陰――ハムレットとロミオが身を潜めて立ち聞きしている)
ロミオ(項垂れながら)
「……死に急ぎすぎたかな、やっぱり……」
ハムレット(ため息混じりに)
「私なんて、“尼寺へ行け”って言ってから、
何百年もそれが引用され続けている。
あれ、戦略だったんだけどな……全部。」
ロミオ(ぼそり)
「手紙……もうちょっと早く届けてたらな……」
ハムレット(小声で、皮肉気味に)
「君は“早とちり”、私は“過剰思索”……
悲劇の王子たちってのは、つらい役回りだな。」
ロミオ(苦笑い)
「でも……彼女の目が、最後に僕を見てくれた。
それだけで……よかったんだ、って思いたいよ。」
ハムレット(静かに)
「……ああ、同感だ。
オフィーリアが微笑んでくれた記憶だけが、私を人間に戻す。」
(しばし沈黙。控室からジュリエットとオフィーリアの笑い声が聞こえる)
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ジュリエット(声だけ)
「ロミオね、“目が合ったら結婚しよう”って顔で見てくるの!重いの!」
オフィーリア(吹き出しながら)
「それ……ちょっとわかるかも……!」
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ロミオ(うつむいて)
「……重かったのか、僕……」
ハムレット(苦笑しながら、ロミオの肩を叩く)
「元気を出せ。君の詩は、今でも世界中で引用されている。
それに……ジュリエットの頬が染まるのは、いつも君だけだったろう。」
ロミオ(小さく微笑んで)
「ありがとう、ハムレット……
君もさ、オフィーリアに――もう少し、素直でもよかったかもね?」
ハムレット(即答)
「……無理だな。」