表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/127

第99話 数日ぶりの帰宅


 気が付いた時には森の中にいた。

 一緒に空を旅したはずのミザリーの姿はなかった。

 僕が置いて行かれたというわけではなく、僕とは違うところに飛んで行ったのだ。


 ただゲームをしていただけなのに、どうしてこんなことになったのだろう。

 ゲームオーバーになってしまったからなのか?

 しかし、ゲームオーバーになったからといって、空中に射出されるゲームとは一体何だというのだろうか。

 古代の時代のゲームは恐ろしい。

 体がいくつあっても足りないではないか。

 納得がいかないまま、森の中を彷徨い歩いていた。


 今自分がどこにいるかも分からずに途方にくれていたところ行商の馬車に乗せてもらうことができた。

 ニコニコと人の好い行商人のおっちゃんとのんびり会話をしながら王都までの旅を楽しんだ。

 しかし、王都に着いた後、お金がないと言ったら彼の態度が豹変した。


 終始ニコニコとしていたおっちゃんの表情はみるみるうちに憤怒に染まり、顔にできた皺はまるで彫刻のようだった。

 身ぐるみを剥がされ、ミザリーからくすねた銅貨を奪われた。

 僕が唯一持っていたお金だというのに、だ。

 必死に抵抗したが、行商人のくせに結構力が強かった。

 僕を力で上回るとは護衛も付けずに行商するだけはある。

 顔は怖かったが、それだけで勘弁してくれたので、意外と良心的な行商人だったのだろう。


 そんなことがあり、王都に戻って数日が経った。

 帰ってきてから気付いたのだが、どうやら王都は、僕がバカンスを楽しんでいる間に大変なことになっていたらしい。


「“災厄の巨人”襲来!?王都を覆う不穏な影。 魔王の復活も疑われる!?――元魔王の配下が証言。 ……なんだか大変そう……」


 冷たい果実水を飲みながら新聞を読む。

 夏に差し掛かり、気温が高くなってきている。

 本格的な夏はこれからであるが、過ごし辛い日が続いていた。

 そういえば、教団本部はクーラーが効いていたのか、暑さを感じることはなかったなぁ……。


「王都南門に突如として現れた謎の巨大多脚型ゴーレム。その足音は大地を踏み鳴らし、住民達を恐怖のどん底に陥れた、か……ふーん……なんだか最近聞いたような話だなぁ」


 しかし、闘技大会はどうなったのだろうか。

 流石に中止にはなっているとは思うが、まさか別日に開催するとか言わないだろうな。

 だとしたら、何のために王都を離れたというのか。

 困ったなぁ……。


「えっと……何々……。 巨大ゴーレムは無数の小型ゴーレムを引き連れ、王都に攻め入るも、騎士団と冒険者の尽力により、驚くべきことに、その被害は王都の外壁が消失するだけに留まった、と」


 どうやら見出しのインパクトに反して、大した被害はなかったようだ。

 人的被害についても、未だ治療中の者は多数いるものの、死者数はゼロだったらしい。


「一体何者が仕組んだものなのか――元魔王の配下と名乗るA氏に特別に取材をさせていただくことができた。 同氏によると、今回のゴーレム襲撃事件の裏には、確実に魔王の関与があるとのことだ。 ……うーん、なんだか胡散臭い記事だ……」


 まるでゴシップ誌かのような新聞だ。

 まあ、そういうのは嫌いじゃない。

 僕は陰謀論が大好きなのだ。


 そんな感じで新聞を読み進めていく。


「魔法学園に“最悪の変態”襲来!?女性用下着を片手に全裸の男がしていたこととは? ……へぇ……どこにでも変態ってのはいるものなんだなぁ……」


「お兄ちゃんが突然いなくなって、本当に心配したんだからね?」


「ニアさんはすぐにいなくなってしまうから大変ですわ!」


 ここ数日、僕はベッドに縛り付けられており、自由に動くことができなかった。

 ユーリが言うには、僕はこのゴーレム襲撃事件にて、命がけで王都を守り、重傷を負っているらしい。

 実は真の力に目覚めていたとかそんな感じだろうか。

 僕には重傷を負った記憶も、ゴーレムと死闘を繰り広げた記憶も全くないのだが、大き過ぎる力に飲み込まれた僕は、意識を失いながらも戦っていたのかもしれない。

 意識を失っている時間は確かにあったのだから。


 うーん。最近全然成長している実感がなくて少しだけ焦っていたのだが、予想を遥かに超える爆発的な成長を見せていたようだ。


「ふむふむ、下着を奪った犯人は全裸で王都郊外に逃走中、と……」


「戦いの後で相当疲れてたみたいだったし……僕が目を離しちゃったから……本当にごめんね……」


「ユーリも気を付けた方が良いよ」


 変態はそこら辺にいっぱい潜んでいるのだから。


「ワタクシも気を付けますわ!」


「そうそう、危険が危ないからね」


「気を付けるよ……だからこうやってお兄ちゃんに危険が及ばないように見張ってるんだから!」


 僕よりユーリの方が気を付けた方が良いと思うのだが。

 ユーリは女の子にしか見えないので、変態に狙われやすいのだ。

 先日も王国最強の騎士を名乗る不審者が、何故かユーリの名前を知っていたのだから。

 しかし、この記事の変態もそうだが、こういう連中は一体何処から湧いて出てくるのだろうか。


「僕は大丈夫だと思うけどなぁ……」


「そう思っても意外と大丈夫じゃなかったりするものだよ! こういう時ぐらいは僕に任せてよ!」


「そういうものなのかなぁ……。 僕も気を付けよう」


 信じられないことだが、僕のパンツが欲しい人もいたりするようだ。

 流石にむさいオヤジに付きまとわれては困ってしまう。


「というかニア、お前学園長に呼ばれてるんじゃないのかよ?」


 扉の前に立たされているダンが声を掛けてくる。


 僕がいない間に不審者が現れたらしく、彼は再び不審者が侵入してこないように見張っているのだそうだ。ご苦労なことである。


 ちなみにミスラちゃんはお出かけ中だ。

 こんな暑い中、狭い部屋に大勢で集まっていたら気が狂うとか言って飛び出していった。僕もそう思う。


 というか、そんなこと初めて聞いたぞ。

 あの学園長が呼んでいるなんて不吉な予感しかしない。


「そんなこと聞いてないんだけど……」


 闘技大会をやり直してやる!などと言い出した時には、僕は再び遠いところへ高飛びすることになる。

 絶対に会いたくない。

 ……いや、僕は王都を救った大英雄なのだ。

 意外と褒めてくれたりするのかもしれない。


「僕が断ってるからね! お兄ちゃんは今療養中ですって!」


 なんと!流石は僕の弟である。


 となれば、しばらくのんびりできるということである。


 ちなみに学園の授業については、このような状況では授業どころではないため、夏の長期休暇を前倒しされることになった。

 かといって暇であるかといえば、そうではない。

 何故か今年度は事件やら何やらで授業が中止になることが多く、夏休みには課題がどっさりと出されている。


 そのため、長期の休みだというのに遊んでいる余裕はなかった。

 特に僕は結構学校をサボりがちだったからか、担任の教師から嫌がらせのように山ほど課題を与えられた。

 ちくしょうめ!どれだけ僕のことが嫌いなのだあの教師は!

 ロベルトだか、カルロスだか名前はよく覚えていないが、モブキャラのくせに僕を苦しめるとは……!許せん!


 だが僕はどうやら重症らしいので、勉強をするのはちょっと難しそうだ。

 特に体調は悪くはないはずだが、ユーリがそう言うのであればそうなのだろう。


 僕には療養が必要なのだ!


「……それはそうと、旅行にでも行かない?」


「旅行!良いですわね! ワタクシお友だちと旅行なんて初めてですわ!」


「お兄ちゃん、無理はだめだよ? まだ療養が必要だってことは僕が一番よく分かってるんだから」


 そうなのだろうか。

 僕としてはそこまで体が辛いということもないと思うんだけど……。

 でもそこまで言われたらなんだか体調が悪い気がしてきた。

 もうちょっと休んでおこうかな……。


「でも退屈だなぁ……」


 スマホも失くし、ゲームで暇を潰すこともできない。

 その上、カメラも壊され、お宝画像で癒されることもできない。


 人生ままならないものだ。


 縛り付けられたベッドの上でポツリとぼやくのだった。



 遂にストックが切れてしまいました。

 今後は更新ペースを落としていこうと考えています。


 次回の更新は5/25(日)を予定しています。

 週に1~2話ぐらいのペースで更新していきたいと考えています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ