第93話 やっぱりゲームは誰かと遊ぶのが楽しいよね
「おお!すごいすごい!! 薙ぎ払え!いいぞぉ!!」
レバーをガチャガチャを動かし、移動要塞コンコルディアを操作する。
敵も味方も関係なく吹き飛ばす快感に酔いしれていた。
これはちょっとハマっちゃうかも……。きもちぃー!!
「ニアさん!味方も巻き込んでるっすよ!」
「味方はちょっと故障しているみたいだから、僕が処分してあげてるんだよ!」
「ニアさんの頭が故障してるようにしか見えないっすけど……」
ミザリーがなんか言っているが、今の僕は興奮状態にあるため、どれだけ叫んだとしても彼女の声は届かないだろう。
『エネルギー圧縮率……25%……28%』
主砲のチャージが溜まっていく。
恐らくこれを発射すれば、この第一ステージはクリアになるのだろう。
思った通り、最初のステージにはこういった救済措置が設定されているのだ。
恐らく、ある程度まで戦争を進めれば、敵軍を一掃するイベントが発生するのだろう。
「おらおらぁ! あ!さっき仕留め損ねた術者! ……ふふん!君の貧弱な攻撃なんて通用しないよ!」
先ほどの術者だろうか、ちまちまと攻撃を放ってきているが、この移動要塞はびくともしない。
圧倒的な力の差に、僕はまるで神になったような気分だった。
「あ!ニアさん攻撃避けられてるっすよ!? そっちじゃないっす!」
「むぎぎ……!ちょこまかと……!食らえっ!!」
「もっと飛び道具を使って敵の行動を制限するっすよ! 避けたところをドカンとやるっす!」
「僕の腕は二本しかないんだ、そんなことまでできっこない! ミザリーも見てないで手伝ったらどうなんだ!」
「……仕方ないっすねぇ……! はぁ……本当に仕方のない人っす……! あぁ……仕方ない仕方ない……」
巨大なこともあり、武装も豊富にあるが、僕だけでは全てを活用することはできない。
そのため、ミザリーに銃撃を担当してもらうことにしたのだ。僕って冴えてる!
ミザリーは呆れたようにヤレヤレした雰囲気を醸し出しているが、操作したくてウズウズしていることなど僕にはお見通しだ。
その証拠に顔がニヤついているのを僕は見ているぞ!ふふふ……。
やっぱりゲームは一緒にプレイするのが楽しいのだ。
「自分が攻撃するので、敵が回避したところをニアさんが仕留めるっす!」
「そんなこと言ったって、どこに回避するかわかんないじゃん! 動きも遅いし、そんなにタイミング良く攻撃できるわけない!」
「そこは敵の動きを予測して何とかするっす! ……そんなこと言っている間に敵が回避しようとしてるっすよ! ニアさん、今!今やってくださいっす!」
「だから、今動かしても遅いんだって!! ……ほら!やっぱり当たらなかった!」
「遅いっす!!なにやってるっすか!!」
「だから動きが遅いんだって!何回も言ってるじゃないか!」
「ニアさんがどんくさいだけだと思うっす!!」
「なんだとう!? この機械が悪いんだ!僕のせいじゃない!!」
失礼な!!僕だって必死なのだ!
僕の使っているコントローラーが壊れているに違いないのに、その苦労をミザリーはわかっていない!
それにだ、ミザリーには僕を馬鹿にする権利はないはずだ!
エリート兵士だかなんだか知らないが、得意気になっていたにも関わらず、一人も敵を倒せなかったのだから!
僕は結構根に持つタイプなのだ。
今後しばらくはそのネタを引っ張るからな!
ドンドンドンドンッ!!
『……機体損耗率8%』
「なんだ!? ……くそう!そんな豆粒を当てたって意味なんてないんだからな!」
「ニアさん、なんか術者増えてないっすか?」
「なにぃ!? ちくしょう!雑魚が邪魔しやがって! 二人まとめてやっつけてやる!!」
ミザリーの言う通り、空を飛び回る術者が二匹に増殖していた。
気付かないうちに数を増やすとは……!
コバエみたいな奴らだ!絶対に駆除してやる!
術者二人に向かって巨大ロボの触手を振るう。
当たるかと思われた攻撃は、何重にも重ねられた障壁により阻まれる。
小細工を……!
「こんなものぉ!障壁ごとぶち抜いてやるぅ!!」
何十枚もの障壁が、ガラスが割れるかのように軽快に壊れていく。
きもちぃー!!
「このままやっつけてやるぅぅぅうううう!!」
圧倒的な質量を以てして障壁をぶち抜き、触手を叩きつける。
流石にこの大きさの物体を叩きつけられれば、ただの人間など一撃でぺちゃんこだろう。
「やったか!?」
「全然やってないっす。 避けられてるっす!」
「すばしっこい奴らめ! ……ミザリーも早く攻撃するんだ!」
「ずっと攻撃してるっすよ! 自分の武器は障壁で防がれるから、ニアさんがとどめを刺すしかないっす!」
「敵が小さすぎるんだって!」
「敵が大きかったらあっという間にこっちがやられていると思うっす!」
くそう……!
ちょこまかと動きやがって……!
『エネルギー圧縮率……68%……71%……』
主砲のチャージはまだ溜まらないようだ。
贅沢は言わない、たった一度で良い。
主砲が放たれる前に、絶対にこいつらをしばいてやる!
術者の一人が突っ込んできた。
「馬鹿め!! ミザリーやるんだ!!」
奴の行為は、攻撃を当ててくれと言っているようなものである。
「うりゃりゃりゃりゃぁっすぅ!!」
機関銃をノリノリで撃ち込むミザリー。
僕もそれに合わせて鉄の触手を振るう。
その瞬間、画面が黒く染まり、一際大きな衝撃が僕たちを襲う。
「ぎゃぁぁぁああああああ!なんだぁぁあああ!?」
「敵の攻撃っすぅぅううう!!」
『……機体損傷率26%――自己修復プロトコル展開』
なんてことしやがるぅ!!
「もう怒ったぞ!! ミザリー!!このコバエを集中攻撃だ!!」
「やってやるっすぅ!! バンバンバンっすぅ!!」
激しい攻防を繰り広げる中、術者の動きが突如として鈍くなる。
「遂に疲れたようだなぁ!? それだけ逃げ回っていたんだ!自業自得だ! おりゃぁぁぁあああああ!!」
術者の隙を見逃さず、触手をぶち当てる。
ドゴーンッ!
地面に叩き付けられた術者は虫の息だ。
もはや逃げる気力もないらしい。
「僕に逆らうからそうなるんだ!!」
「ニアさん小物っぽいっすよ……」
「なんだとう!?僕のどこが小物だというんだ!! 大物中の大物だ!! いいか!?僕は一人撃破したんだ!! ミザリー!お前の撃破数を言ってみろ!!」
たった一人と思うかもしれないが、その認識は間違いだと言っておこう。
確かに一人と二人に違いはないことは認めよう。
だが、ゼロとイチでは天と地ほどの差があるのだ。
これはとても重要なことである。
「……ニアさんだってまだ倒し切ってないっす! 戦闘不能にした人数なら圧倒的に自分の方が多いっす!」
「なにおう!? ……じゃあ勝負だ! 僕はこの移動要塞を使う!ミザリーはあの貧弱なピーちゃんを使うが良いさ! お気に入りの機体なんだろう!?」
「ずるいっす! そんなの性能が違いすぎるっす!」
何がずるいと言うのだ!
自分から弱い機体に乗りたいと言っていた奴が、今さら機体性能の差を持ち出してくるなど、ずるいのはどっちだ!!
お互いに睨み合いをしていると、
『エネルギー圧縮率……98%……100%……臨界値到達。主砲≪最後の神判≫、発射準備完了――断罪執行』
大迫力の主砲が放たれる。極太レーザービームだ。
「なんじゃこりゃぁぁああああ!!」
「すごいっすぅぅううううう!!」
二人揃って声を上げる。
だが、この主砲、どこか様子がおかしい。
「うおぉぉおおおおおおぉぉぉ…………。 なんか曲がってない……?」
「…………空に撃ってるっすね……。 なんか空間が歪んでるような……多分、敵が空間を捻じ曲げて防御してるんじゃないっすかね……?」
「なんでぇ!? ……一体誰が……!」
「ニアさんが仕留め損ねた術者じゃないっすか?」
なんだその目は!!
僕が仕留め損なったのが悪いと言いたげではないか!
あのコバエは確実に仕留めたはずだ!……仕留めたよね……?
「ちくしょう……どうして上手くいかないんだ……。 僕の計画は完璧だったはずだ……」
「計画なんてあったんすか……?」
そもそも敵をやっつけるイベントではなかったのか!
こんなに派手な演出をしておいて、それが防がれました、なんてことになったら許さないぞ!
「……やれ……!やるんだ……! こいつらを一掃してしまえ……!」
祈るように両手を合わせる。
前世で競馬場に行ったときに、同じようなポーズをしていたオヤジがいたことを思い出す。
恐らく一世一代の勝負だったのだろう。
少しだけ彼の気持ちがわかったような気がする。
空間の歪みが弱まり、照準が外壁に向かう。
「っ!?……いいぞ……!きっと術者が疲れてきたんだ……! いける……いけるぞ……!」
『警告――制御室への不正干渉を検出』
直後、爆発によりゲームセンターの扉がぶち破られた。




