表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/127

第80話 夢にまで見た楽園


 目が覚めると僕はベッドの上にいた。

 昨日はミザリーに紳士的行為を働いた代償として頭をぶん殴られて気絶するように寝てしまったのだ。


「いてて……」


 殴られた頭が痛みを訴える。

 ちゃんとベッドの中で眠っていたところを見ると、きっと僕が気絶した後にミザリーが毛布を掛けてくれたのだろう。


 うーむ。どうやら調子に乗り過ぎてしまったみたいだ。

 こういうのはゆっくり少しずつ関係を築いていくことが重要だと理解していたはずなのだが、冷静さを欠いて暴走してしまったようだ。


 昨日のことを反省していると扉が開かれる。


「ニアさん、起きてたっすね! 頭大丈夫っすか?」


 突然やってきたかと思えば、失礼な奴だ!


「なんだとう!? 僕の頭は正常だ!!」


「いや……そういう意味じゃ…………」


 そこまで言って首を傾げる。


「……まあ確かにそういう意味もあるっすね!」


 にへらと笑うミザリー。

 そんな彼女の様子を見て、僕のスーパーコンピューター並みの頭に血が上る。


「僕の頭が正常じゃないと思うなら、それはミザリーのせいだ!!」


 自分の働いた行為を棚に上げているわけではない。

 それとこれとは話が別だと主張させてもらおう。

 いつ如何なる時も暴力を振るうことは悪なのだ。


「まあまあ、いいじゃないっすか! ニアさんも元気になったみたいですし!」


 確かにフランちゃんのパンティーについては、心の整理がついた。

 短い間だったけど、パンティーとの思い出はきっと、この先ずっと忘れることはないだろう。

 僕はその想いを胸に生きていくのだ。


「むむむ…… 絶対にまた手に入れてみせる!!」


 そうだ。失くしてしまったのなら仕方ない。

 また、手に入れれば良いだけの話だ。

 リスクを恐れていてはお兄ちゃんは務まらないのだ。

 きっと途方もない時間がかかるだろう。

 悔しい思いだってするはずだ。

 もしかしたら、もう二度と手にすることは叶わないかもしれない。

 しかし、どれだけ厳しい状況であったとしても僕は決して諦めたりしない!


「ニアさんが元気になって良かったっす!」


 ミザリーも僕の不屈の精神にニッコリ顔だ。


「辛い別れを経験した僕に死角はない! 行くぞミザリー!!」


「……また何を仕出かすつもりっすか?」


 なんだか、疑わし気な目で見られる。


 何度も言わせないでほしい。

 僕はバカンスに来たのだ!

 何かを仕出かすつもりはない!


「この施設を探検する!付いてくるんだミザリー!」


 そう言って扉を飛び出す。


「待ってくださいっすぅ!」





***





 食堂でタダ飯を食らい、休憩を取りながら、しばらく施設内を探検していた。

 疑問に思うのが、何故か道行く人が僕に頭を下げてくることだ。

 外部の人間が珍しいのか、彼らの仲間であるゴルド君が僕の容姿を馬鹿にしたことを代わりに謝っているのかはわからないが、彼らの顔色が悪いところを見る限り、歓迎されているわけではなさそうだった。

 そんな感じで、どこに行っても注目されてしまう。


 しかし、面白いことにも気が付いた。

 この施設は所々に日本語が使われていたのだ。

 前世の頃には身近にあったからか、自然に受け入れてしまった。

 考えてみれば、スマホも日本語表示だった。


「ニアさん……もう部屋に戻らないっすか? 汗だくっす!」


「まあまあ、落ち着きなよ……! この先が……大浴場だって!」


 僕は壁の案内図を見てそう答える。


 そう!大浴場だ!

 こんなに素晴らしいことがあるだろうか……!?


 しかも僕ぐらいの年齢なら、女湯に入ってもギリギリ問題はないはずだ!


「ニアさんは古代文字読めるっすか!?」


 ミザリーが驚いている。

 ふふ……これが僕の転生特典ってやつ?

 いいじゃないか!ミザリーが尊敬の眼差しで僕を見てくるのはとても良い気分だ!


「むしろ共通語よりも得意っていうか……ね?」


 共通語というのは人族の社会で広く浸透している言語である。


「えぇ!?共通語よりも得意なんすか!? ニアさん!凄すぎっす!」


 ミザリーが目をキラキラさせて僕を見る。


 うひひぃ!いいぞ、いいぞぉ!!


「ふふん!まあね! 皆には内緒だよ? 僕の実力がバレてしまうからね!ふふふん!」


「……わ、わかりましたっす!! この秘密は墓場まで持って行くっす!!」


 ミザリーが使命に燃えたような表情を浮かべている。

 きもちぃー!


「よしよし、頼んだよ!」


 話をしていると大浴場に到着する。

 

 中に入ると、前世で見慣れた青と赤の暖簾(のれん)が掛けられた入口が目に入る。

 それぞれの入口の隣には男性用、女性用と共通語で書かれた看板が立てられている。

 だがその看板は、暖簾(のれん)に書かれた男、女という文字とは逆に、赤の方には男性用、青の方には女性用と書かれた看板が置かれていた。

 恐らく日本語を読めない人が置いたのだろう。


 暖簾(のれん)に男と書かれているのだから、そちらに入るべきだろう。

 僕は日本人なのだから、当たり前のことだ。


「ふぅ……やっと汗を流せるっす……」


 ミザリーが青の暖簾(のれん)の方に入っていく。


「よしよし……」


 ドキドキと高まる期待に共鳴し、ニチャアと歯茎が顔を出す。

 乾かないように上唇を押さえつけるが、僕の意思と反して剥き出しになる歯茎。

 僕の歯茎がこうなってしまえば、もう歯止めは効かないだろう。


 こんなときのためにカメラは手放さず持っているのだ。


 ミザリーが去ったのを確認して、しばらく経った後に、何食わぬ顔で青の暖簾(のれん)の方に入っていく。


 結構人がいるようだ。

 脱衣所を何とか抜ける必要がある。


 しかし、堂々としていれば、意外とバレないものだ。

 それにまだ僕は子どもなのだ。

 この世界では十五歳から成人とみなされるが、僕はまだ十二歳だ。

 見つかったとしても問題なることは一切ないだろう。


 そして、幸いにも今僕は仮面を付けているため、素顔を見られることはない。

 いざという時の保険もバッチリだ。


 秘密の花園に足を踏み入れる。


 うひょおおおおお!!

 凄い!凄い!僕が夢にまで見た光景!!

 世界中の男子が夢を見て、ついぞ到達することのできなかった人類未踏の領域へ、僕は今足を踏み入れようとしているのだ!!

 安心しろ!お前たちの無念は僕が引き受けた!

 必ずやこの聖域の記録を持ち帰り、後世に残すと誓おう!


 ささっと服を脱ぎ去り、さささっと浴場に侵入した。


 教団というのでなんとなくジジババが多いというイメージを持っていたが、若い人ばかりだった。


 うひょひょひょひょひょひょ!!

 浴場の熱気に火照った肌がまぶしー!!

 く、くそ……!目が……開けられない……!


 カメラを片手に撮影を開始する。


 うひょひょー!!


 パシャパシャ


 ちょっと控えめにしておく。

 水が流れる音でシャッター音は目立たないが、警戒しておくに越したことはない。


 パシャパシャ


 とりあえず、姿を見られるとあまり良くないだろう。

 素早く湯船に身を潜める。


 一応カメラは水に付けても問題はないと、闇商人のオヤジから言質を取っているので大丈夫だろう。

 もし壊れたら、弁償してもらうだけだ。


 ん……?

 うひょひょぉ!!

 泡を纏わせて、艶めかしく体を洗うお姉さん!!

 どうしてそんなに艶めかしく洗っているのかは定かではないが、シャッターチャンス!!


 パシャパシャ


 こっちはナイスバティのお姉さん!!

 重量感がすごい!!

 言っておくが僕の本命は妹なのだ。

 こうもお姉さんばっかりだとなぁ……!!

 まいったなぁ……!!いやぁ、まいったまいった……!


 パシャパシャ


 とても触ってみたい衝動に駆られる。


 ちょっとだけ……ちょっとだけならいいよね……?


 そろりそろりと水中を移動する。

 波を立ててはいけない。

 この湯舟のお湯と一体になるのだ。

 そうだ……僕にならそれが出来る……

 僕はお湯に住む精霊……


 ようし……いいぞ……

 もう少しだ……もう少し……


 遂に手を伸ばせば届く距離まで辿り着いた。

 まだ気付かれていない。

 ちょっとだけ……ちょっとだけ……

 サッと触って蜃気楼のように立ち去るのだ。


 ――モミモミモミモミモミモミ!!



「きゃぁぁああああああああああ!!」


 ――しまった!!

 我を忘れて思いっきりモミモミしてしまった!!


 まずい!!非常にまずい!!


 僕に双丘を触られたお姉さんが叫び声を上げて魔法を発動させる。


 ぎゃあああああ!!やめてくれぇ!!誤解なんだ!!

 僕はただこの楽園を写真に収めようとしただけだ!!

 決してやましいことなど考えていない!!


 咄嗟に回避行動を取る。


 ぎゃあああああ!!僕のカメラがぁ!

 何てことしやがるこいつぅ!!


 僕のカメラは彼女の魔法の餌食となり、粉々に砕け散った。


 俄かに騒がしくなった浴場内。

 パニックに陥ったお姉さんはバカスカと魔法を放つ。

 それを他のお姉さんたちが止めようと魔法を行使する。


 僕はそのどさくさに紛れて浴場を飛び出した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ