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第8話 弟でも妹にすればいい!


 それから3、4年ほど経ち、僕は8歳になっていた。

 5歳になったぐらいから、外出が許可され、村の中を歩き回れるようになった。

 

 ちなみに魔法と剣の練習は続けていたが、魔力量も増えてきたことで、気絶することも少なくなり、その分練習時間が短縮できるようになったので、村で遊ぶ時間を作ることができている。

 

 しかし、決して遊んでいるわけではない。

 傍から見たら遊んでいるように見えるかもしれないが、そこには崇高な意味が込められているのだ。凡人にはわかるまいよ。


 ということで、今僕は弟に教育を施すために村の空き地に来ている。

 

 弟はというと、母親譲りのブロンドの髪と青い瞳で、綺麗な顔立ちをしていることもあり、女の子にしか見えない。

 

 とても可愛らしく、弟が妹だったら良かったのに……!と、毎晩のように頭を掻きむしっている。

 頭を抱えて悶々としている内に、最近ではもう弟でも良いかな?とも思い始めてきた。

 

 僕が妹と思えば、弟だとしても妹とすることも可能である。

 妹への愛情は、時に性別すらも超越するのだ。


 だが、それを考えるのはまだ早い。

 これから、また両親が子作りするかもしれないし、唐突に義理の妹が出現するかもしれない。


 それに僕は弟のブツをまだ確認したことがない。見ないように徹底しているのだ。

 何故そんなことをしているかというと、観測してから初めて弟なのか妹なのかが確定するためだ。

 それまではブツがある弟とブツがない妹の状態が重なり合って存在していることになるのだ。シュレディンガーのイチモツというやつだ。


 僕は可能性がある限り希望を捨てたりはしないのだ。


 ちなみに血の繋がりがあるかどうかは重要ではない。 

 もちろん血縁関係であるというのは、高ポイントではあるのだが、僕は義理の妹でも全然構わない。妹は、分け隔てなく平等に妹なのだ。差を付けたりするのは、他の妹たちに失礼である。


「お兄ちゃん!今日は何するのー?昨日みたいに鬼ごっこする?」


 決して勘違いしないでもらいたいので、再度言わせてもらうが、毎日のように弟と空き地に赴いて、ただ遊んでいるわけではない。あくまでも教育なのだ。

 僕の右腕としてふさわしい人材に育ってもらわなくてはならない。


 鬼ごっことは、逃げ足を鍛える訓練なのだ。


 僕の考える優秀な人材は、あるときは、影のように気配を消し、観察対象の目から逃れ、またあるときは、観察対象に見つかった際、姿を認識される前に逃げるための足が必要になる。


 基本的には僕が妹を観察するのだが、僕も妹の傍にいることができない状況も出てくるだろう。そのため、人手は常に多い方が良いのだ。

 前世ではカメラやGPSなどの機器を駆使して、こなしてきたことだが、科学技術が発達していないこの世界においては、マンパワーが必要になるのだ。


 そして、そのマンパワーの代わりになる魔法も練習することは僕にとっては重要なタスクとなっている。


 まあ、まだ水の玉を放ることしかできないのだが……。


 でも水魔法には遠見の魔法もあるらしい、光の屈折とかなんやかんやして、望遠鏡のようにして使うことができるらしいのだ!

 しかも、空間魔法を掛け合わせることで、更に色んなところを覗き見できるのである。是非とも手に入れておきたい魔法の一つだ。


「弟よ、いや、ユーリ。君はお兄ちゃんのことが好きかい?」


「……?大好きだよ!」


 急に尋ねられた質問に一瞬キョトンとした表情を見せた後、花咲くような笑みを浮かべ、抱き着いてきた。


 ……もう、弟でも良いかな?


 まあ、同時並行でもいいではないか。

 弟を妹として愛で、他の妹も愛でる。それでいいじゃないか。

 よし!今日から妹になるための訓練もしていく必要があるな!


「よしよし、お兄ちゃんもユーリのことは大好きだぞ。さて、じゃあ今日は……」


「おーい!ニアー!遊ぼうぜー!!」


 弟に妹としての教育を施そうとしたところ、やんちゃそうな叫び声が聞こえてきた。


「ダン、僕は今大事なことを……」


「遊ぼうぜー!!!」


 こいつはダン。近所に住んでいるガキんちょである。

 このガキんちょはことあるごとに僕と遊びたがり、僕の崇高な使命の邪魔をするのである。

 その上、僕と遊びたい割に僕の意見を一つも聞きいてくれないのである。

 外見は、赤みがかった坊主頭で、パッとしない幸の薄そうな顔をしており、体格は子どもにしては少々大きい。端的に言うと太っている。

 こいつの両親はうちの両親と仲が良く、家族ぐるみでの付き合いも多いのだ。


「あ、あのこんにちは……」


「ドゥフ……こんにちは。シアちゃん。ほら、ユーリも。」


「こんにちは!ダンくんもこんにちは!」


「おう!遊ぼうぜー!!!」


 遊ぼうぜBOTになっているダンの後ろから顔を覗かせている小さな女の子がシアちゃん。ダンの妹である。年齢はユーリの一つ上の6歳である。


 綺麗なブラウンの髪は肩にかかるぐらいで切り揃えられており、とてもキュートである。


 くそぅっ!!なんでこんな奴にこんなに可愛い妹が……!!絶対に奪い取ってやるからな!


 目下のところ、この子を僕の妹にするべく、動いている。

 他人の妹を奪うことには何の抵抗もない。なにせ相手はダンなのだ。遠慮することはないのである。


「うん、分かった遊ぼう。じゃあ今日はねちょっとやりたいことが……」


「鬼ごっこで遊ぼうぜー!!!」


「いや、今日は違うことを……」


「じゃあニアが鬼な!!!みんな逃げろー!!」


「お兄ちゃんが鬼だー!キャー!」


「ニ、ニアくん、す、すみません……!私、逃げます……!」


 例のごとくダンの野郎が僕の言葉を無視して、走り去っていき、ユーリが楽しそうに、シアちゃんが申し訳なさそうにして、ダンの野郎に続いて走っていった。

 

 全然僕の話を聞いてくれないし……そもそもなんで僕がいつも鬼なんだ……!

 僕だって、シアちゃんと一緒にキャッキャしながら、逃げたいのに!なんでだ!なんでいつもこうなんだ!

 僕は前世も含めれば、20歳を超えているのに、なんでこんなガキんちょに良い様にされるんだ。


 くそ、だんだん腹が立ってきたぞ……


 だが、シアちゃんと僕との間にある障害ダンが大きければ大きいほど、それを乗り越えたときに、愛がより深まるというものだ。

 とりあえず、今は僕とシアちゃんの明るい未来のためにまずは僕のかっこいいところを見せつけなくてはならない。


 遊びと侮ってはいけない。子どもの頃は足が速い奴がモテるのだ。 

 なので、当然僕はこの鬼ごっこに本気なのだ。


 この鬼ごっこにはルールが二つある。


 一つ、村の中を出てはいけない。

 二つ、人んちに入るな。


 以上、この二つを守れば、何でもして良いことになっている。

 まあ、何でもとは言うが、他の村人に迷惑をかけて怒られるのは自己責任だ。


 さて、この鬼ごっこだが、基本的に僕しか鬼をやらない。

 そして、鬼ごっことは鬼が誰かを捕まえると、捕まえられた人が鬼になるを繰り返すのが普通だが、この鬼ごっこは僕が全員を捕まえることが終了条件となるのだ。


 何故なら一度、僕が逃げる側に回ったことがあるのだが、そのときに鬼だったシアちゃんが僕を全く捕まえることができずに泣き出してしまった。

 それを見てとてもキュンとしてしまい、すぐさまシアちゃんの下に馳せ参じたのである。


 それ以来、基本的には僕が鬼になることが決定してしまった。


 僕は前世の頃から、足の速さには自信があるのだ。

 妹観察中に見つかったりした際、すぐにその場を離脱できるようにするために、走り込みは欠かさずに行なってきた。


 お兄ちゃんとしては、妹の心配をしていることがバレると、どうしても恥ずかしく感じてしまう。

 妹の方は、僕が見ていることに気が付くと、キュンとして好感度が上がるのはメリットにはなるが、陰ながら見守るというのが僕はかっこいいと思っているのだ。

 

 今生でもちゃんと足の速さも鍛えているし、父親との剣の練習の際に、避けることも上手くなってきているので、同世代の子どもに僕を捉えることなどできないのである。

 そのため、捕まえる側だったとしても僕の足からは逃げることはできない。


 そういった事情もあり、最初の頃は速攻で全員捕まえまくっていたのだが、最近はなんだか皆足も速くなり、しかも小癪な策まで講じてくるようになってきた。


 そして、3人で協力して逃げるようになってからは、全く捕まえられなくなった。


 だから、今日は……今日こそは!絶対に捕まえるのだ。どれだけ泥臭くても、どれだけ汚い手を使っても捕まえてみせるのだ!


 遊びに本気を出すのはシアちゃんにかっこいいところを見せるためだとかなんとかそれらしい理由を付けてるけど、それって、ただ顔を真っ赤にしてムキになっているだけなのではないの?と、思うかもしれない。


 ――その通りだ!ガキんちょどもに負けるのは許せないのだ!!


 それにシアちゃんはお兄ちゃんである僕が守るのだ!

 お兄ちゃんから逃げる技術など身に着ける必要はないのである!

 ……ふふふ……



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