第74話「勇者だョ!全員集合③」
謁見の間の入り口。大扉が開き、そこから『女神の奇跡にて召喚された八名の勇者一行』が入場する。
先ほどの口上からも察するに、参列側にいる俺含めた23名は勇者ではない――と、有権者たちに印象付けたいようだ。
「おぉ……これがあの……伝説の……」
「並々ならぬ力強さを感じる……」
「た……確かに向こう側に並ぶ”形式だけの勇者”とは天と地ほどの差があるな……」
八名の勇者たちの姿を見て、反対側に参列する貴族たちがざわつき始める。
さらに――
「な、なんだよ……あの装備……」
「俺たちのと……全然違ェ……」
「待遇に差ァありすぎだろ……」
こちら側に並んでいるアンコモン勇者たちもざわつきを隠せない。
――その身に纏う装備の神々しさに。
説明しよう!
レア以上の勇者たちがどのようなファッション(装備)なのかを!
勇者コレクション、略して『ゆうコレ』――開幕だァ!
まず、エントリーNo1。
レジェンダリー勇者……我らが担任『岡守先生』ェ!!
窓から差し込む光が当たるごとに神々しく反射する銀色の鎧。聖騎士と言われてもなんら疑いようがないッ!
さらには、全ての部位に細かな青い装飾が施されており、描かれた紋章などは芸術の域ッ!職人の魂が宿っているよねこれ。
歩く度に揺れるマントは、光の反射で白銀のように光る時もあれば、うっすら青く光る加工がされているぞッ!
胸元には、見るものを思わずうっとりさせてしまう、サファイアのように青く輝く宝石が嵌め込まれているッ!!あれだけでも売ったら何億円するか分からないぜッ!知らんけど。
そしてェ――!!
何よりも眩しいのはっ、こんな派手なものを装備して――恥ずかしそうに頬を赤らめている岡守先生自身だァ!!
続いて、エントリーNo2。
レジェンダリー勇者……我らが厨二病『クリムゾン・アイズ・ブラック』(鈴木 一平)
全身は真っ黒。さらに真っ黒なベルトを全身くまなく大量に巻き付け、全身のシルエットが分かるほどにぴっちぴちだ。なんでそんな大量にベルト巻いてるん?
その上にはボロッボロの赤いマントを着用。口元が隠れるほど襟が立っており、なぜか左側の肉体が隠れるように着用。アシンメトリー感を演出している。このマント、元々は高級なただの赤布だっただろうに……意図的にボロボロにされたようだ。
そして極め付けは、右手にだけ装備している濁った金色の小手。指先までしっかり尖っており、物を持つのは大変そうだ。
髪型は……ワックスを初めて使った中学生のようにテッカテカ。本当は『なんとかファンタジー』のような重力無視の髪型にしたかったのだろうが……残念なことに重力に負けて、ただのべっとりトゲトゲヘアになっている。
でも、本人は大変満足そうな表情なので、これ以上はやめておこう。
ここからは適当に流します。興味ないからね。
エントリーNo3。
レジェンダリー勇者……クラスの支配者『唯有 武尊』
全身金ピカ鎧。深い緑色の装飾が施され、胸元にはエメラルドのような宝石。まぁ岡守先生の色違いみたいなもんですわ。形は要所要所で違うようだが、まぁパクリですわこんなん。マントだけは表面は金だけど裏面は深い緑。
腰に差しているのはこれまた作るのにお金と時間がかかってそうなロングソード。聖剣のレプリカみたいだ。
なんか安直なんだよなぁ。なんだよ、全身ほぼ金色って。全身金ピカにすれば強そうに見えるのは、本当に限られた存在だけなんだよ。一端の中学生なんぞが成金装備なんて着けててもなんの有用性も無いって。つかお前、能力でどうせ全身堅くなるんでしょ?だったらそんな装備なんて脱ぎ捨ててフルチンで戦えや。
んだよ、その顔。参列側に手なんて振ってんじゃねぇよ。スター気取りか?
エントリーNo4
エピック勇者……不良の腰巾着『孤塚 天羅』
パッとせぇへんけど、アンコモン勇者と比べると結構マシな装備。部位ごとに金色の胸当てや小手などを着けており、下地には赤茶色の丈夫そうな革で出来たものを着込んでいる。軽量化を行うために全身鎧にしなかったのは正解だが……それでも割と重いんじゃないか……?
にしても、金色って……唯有に少しでも似せたいのか?そして……首周りのファーみたいはのはなんですか?野蛮人ですか?
顔はイケメンなので、何着ても似合うのが腹立つ。また、ぶどうジュースをぶっかけてやりたい……いや、ぶどうジュースを作った人に大変失礼なので二度としないようにしよう。
エントリーNo5
エピック勇者……イかれたチビ『工藤 大我』
孤塚の装備をそのままサイズダウンしたものを着用。
おそろいにしたほうが仲間感が出る、という不良の本能だろうか?あいつらみんな似たような格好するからな。
ちなみに余談だが……コイツは、相当イカれてる。
特に何の理由があるわけでも無いのに、通りかかった奴の太ももに膝蹴りを喰らわせては『なぁ、痛かった?w』と言ってしまうため、学校の廊下ですれ違いたくない奴No1だ。
あと何の前触れもなく『ちょっと腕出して』と言っては、スクラッチをするかのように爪で他人の腕を擦りまくり、一生消えない火傷跡を作って笑ってもいた。
他のクラスにいる不良も含めて、多分コイツが一番イかれてる。他の不良は、群れて我が物顔で廊下を歩いたりはするものの、理由もなく暴力なんて振るわない。
だがコイツは……薬でもやってんじゃないのか、と俺は本気で疑っている……でも、あれはおそらく小学生とかが無邪気にしでかす感覚でやっているんじゃなかろうか。とにもかくにも、本気で関わりたくない。
小柄のため……喧嘩すると普通に勝てそうではある……のだが、他の不良がバックにいるためやり返せない……というのが、コイツが自由に暴力を振るえている理由だと個人的には思っている。
エントリーNo6
レア勇者……ゴリラ野球部『湯田 亮介』
こちらも孤塚の装備をサイズアップさせたものを着用。首周りのファーがワイルドさを引き立てて割と似合っているウホ。
コイツは不良グループに所属しているものの、割と良い奴だ。
不良仲間とは小学校が一緒らしく、その名残で今も不良グループとつるんでるっぽい。
野球部の部長でガタイも良し。タッパも不良の中では一番デカい。
不良グループが大股開いて堂々としてられるのも、コイツの存在が大きそうだ。
クラス全体の和を考える奴で、クラスで浮いてていじめられそうな奴を地味に庇ってやってるところも見たことがある。
(実のところ、クリムゾンなんかがいじめられてないのは、コイツのおかげだったりする)
不良の中で一番、女子と仲良く話す場面を見かけるのだが……なぜか彼女ができない。なぜだろう……何が原因なんだろウホ?
唯有がクラスの支配者だとしたら、クラスのリーダーはコイツだろう。
ただし、体育の授業では下手なプレイをした奴にはガチギレする。そのため、コイツがいると体育という授業が途端にミスの一切許されないデスゲームと化す。
ちなみに、湯田はレア勇者となっているが……本来ならアンコモン勇者だった。唯有が『湯田も魔王討伐に参加しないなら、俺は魔王と戦わないぜ?』と女神に打診した結果、レア勇者に繰り上がっている。
エントリーNo7
レア勇者……デカくて怖い女『鷹野 夜駆姫』
真っ白な特攻服だ……え、特攻服?……なんで?さらしも含めて全て白い。
170センチを超える身長もあってか……女ながらに威圧感が凄い。そして極め付けの木刀。……いや、せめて剣を持ってくれ……。
特攻服といえば、背中に何か『天上無敵』みたいな文字が入るイメージだが……何の文字も書かれていない。本当に真っ白だ。
サラッとした黒くて長い髪から覗く、鋭い目つき。だが、頬にそばかすがあるため、どこか憎めない印象を受ける。
ちなみに、この鷹野を下の名前で呼んだ奴はもれなく半殺しに遭うそうで、男でもまず茶化さない。学校にいる不良とは一切つるまず、外部でどうやら族に入っている噂を聞いたことがあるため……誰も関わろうとはしない女だ。
エントリーNo8
エピック勇者……銃が使える女『猫宮 梨音』
上半身にはボア襟が付いた焦げ茶のレザージャケット。その下には体にぴったり密着した濃紺のタイトなシャツ。
脚は動きやすそうな黒に近い濃いグレーのカーゴパンツ。そして足元は分厚いソールのコンバットブーツ。
腰と太ももにホルスター・マガジンポーチ。そして、手には指先の出たレザーグロープ。
……………………めちゃくちゃ現代ちっくな服来たな。しかもこれ……見るからにメンズファッションじゃねぇか。
これをよくこの世界で再現できたものだ……棟梁の腕前は伊達じゃない……。
にしても……小柄でちんまりした猫みたいな女がこんな装備をチョイスするか……?……普通はもっとこう……なんか可愛らしさみたいなものを追求するんじゃねぇの……?どういうセンスしてやがる……。
……でも、あれ?……この服、どっかで見たぞ?……妙な既視感がある。
猫宮はクラスの中で三人しかいないエピック勇者……だが、能力は個人的にレジェンダリーでもおかしくない性能をしていると思っている。
一言一句覚えているわけではないが……確か能力は……
『生還者』
銃とかを出現させることができ、敵と判定した対象を倒すと弾丸などを落とす。
……みたいな内容だったはず。
銃を出せるのはまだ納得がいくが……敵を倒すと弾丸を落とす、って……勇者の固有スキルとは一体なんなのだろうか。意味不明である。
異世界で近代兵器を持ち込んだら無双できる説は当然あるのだろうが、遠距離の上位互換としてクリムゾンがいるし、その関係でエピックになった可能性が高い。
――以上、『ゆうコレ』閉幕です。
「手繰くん……凄い集中力だね……一体なにを考えてるんだろ……」
「たまに坊主はこうなる時あるよな」
「多分、しょうもないことしか考えてないよ……」




