表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/61

第57話「交渉決裂」

私はヤマトが指定した場所までジャックを案内していた。


指定の場所とは……今日お父さんとヤマトが戦った砂浜。


あそこなら確かに人目にはつかない……()()()()()()()()()()()()……


さらに、ヤマト(いわ)く――


『三人一緒に出歩くのはマズい。途中の門番に見つかると後々(のちのち)ややこしくなる。だから、俺一人で先に砂浜に行ってるから、()()()()()()()二人も移動してくれ。砂浜で合流しよう』


――とのこと。


ヤマトは一体なにを考えているのだろうか……


計画通りにいけば、ヤマトは死んだことにして逃亡――女神の魔の手から回避できるし、ジャックはヤマトを殺した恩賞を女神からもらえる……というお互いにメリットがある話だが……


私は賛同しない。


勝手に一人で決めて……お父さんとの修行はどうするつもりなんだろうか……。


でも、砂浜の近くに野宿しつつ、食料はお父さんや私が運べば……不可能ではないのかも……


女神からの暗殺を回避しつつ、魔王を倒すための修行に専念できる……


いや、今考えると……普通にアリかもしれない……


…………いやいや、だったら寮母さんの約束は……?


中央拠点奪還作戦に参加しないと、誰が寮母さんの息子を……


他の勇者たちはアテにならない……期待できるのはヤマトだけ。


必ずヤマトを強くして魔王を……()()()()()()()()()()()……


どちらにせよ、今はヤマトと合流するしかない。


そこでしっかり話し合えば……


…………()()()()




ふと横を見ると――隣を歩くジャックは、先ほどまで震えて弱々しかった姿が消え――


無言で遠くの暗闇を(にら)んでいる。殺意むき出しだ。


これは……とても、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


ジャックはヤマトを殺すつもりではないか……?


いや、でもこうなる可能性だってヤマトなら分かっているはず……


……まさかヤマトは、本気でジャックと戦うつもりなのだろうか……?


それは流石に無茶だ。


私が知る限り、()()()()()()()()()()()()


お父さんも昼間に言っていた。操作できる武器が無いとヤマトは無力……。


……いや、もしかして――


()()()()()()()()()()()()調()()()()()()……?


あくまで体内時計での計算ではあるが、ヤマトが出発してから約十分後に私たちも移動を開始した。


このわずかな時間で武器を調達――あるいは罠を仕掛けておいてジャックを撃退するつもりなのでは……?


「なぁ、ソーレちゃん……」

「……はい?」

「悪いが……俺一人でアイツを殺らせてくれ。手柄は全部貰うが……構わないよね?」


やはり……ジャックはヤマトを……


「……分かりました」

「よし……!」


ヤマトが今のうちに武器を調達したりしてるなら……私が取るべき行動は……


時間を……稼ぐ……?


一応、暗いせいで道に少し迷った……という理由で数分は時間を稼ぐことにしよう。




城下町の道を進んでいくと……見慣れた曲がり角が見える。


あそこを曲がればお父さんの……


……………………


いや、待って……?


もしかしてヤマトは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……?


だとしたらヤマトが死ぬことはありえない。


助かる……!


なるほど……そういうことだったんですねヤマト!


……………………


…………


……


「……遅かったな」

「え……?」


合流場所である砂浜に辿り着くと――


()()()()()()()()()()()()()()()()()


しかも、武器すら持っていない……()()()()……


なにしてるの……?……このままじゃ……


「それじゃあ、今後の話をしようか……」

()()()()()()()()


マズい……


「どういうことだ……?」

「お前をここでぶち殺して、世間には勇者一人が逃亡したってことにし、女神からはキッチリ恩賞をもらう。これが俺にとっての最適解だ。お前を逃がしたとしても、どっかで女神に見つかれば、それこそ俺の信頼はガタ落ちだ」

「……………………」


「こんな当たり前なことにも気付けないなんて……間抜けくんだなぁ」

「本当に逃がしてはくれないのか……?」


「あぁ?物分かりが悪いなぁバカが……お前は本気で許さねぇ……よくも……俺に恥をかかせてくれたな……」

「お前の存在自体が恥だと思うが……?」


「強がってんじゃねぇぞ……いいか?……お前をこれから徹底的に痛めつけて、裸にひん剥いて、百回謝るまで拷問してから殺してやるよ……今度は泣いたって誰も助けちゃくれねぇからな」

「……………………」


「いや……待てよ……?この場にあのデブ女を連れてきて、目の前でお前を殺すってのもアリだな。俺にあんなことをしたんだ……これくらいは当然だろ。いや、お前を殺す前にデブ女の前で裸踊りをさせるってのも良いなぁ」

「…………はぁ」


ヤマトは右手で『くいくい』っと手招きをする。


「俺は最初から『戦いたい』って言ってたのを覚えてないのか?……カス低脳。まぁでも、醜さだけならお前はとっくに魔導士クラスだよ」

「…………決めた。両目もくり抜いてから殺し…………」


ジャックは何かを見たのか……絶句していた。


「は?……なんだ……その手……?」

「……?」

「その右手……指、足りなくないか……?」


星々の光が海面で輝いているせいか、夜なのに指の本数まで確認できた。


「…………あぁ、これか。昼間に無くした。()()()()()()()()

「……はぁ?」


()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「…………はぁ?」


ヤマトは……()()()()()()()()()()()()()()()――


「……しゅ……しゅしゅ……しゅ……」


――()()()()()()()()()()()()







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ