第5話「勇者のランク付け」
自分の固有スキルを発表……?
俺たち勇者に与えられた固有スキルって
女神には確認できないってこと……か?
普通、こういう異世界にやってきた時
与えられるスキルって
女神は当然、把握してるもんだと思ってたが
そういうわけでもないのか?
――――いやいや、問題はそこじゃない。
自分の固有スキルを発表するってことは……
俺が『触れた物を操れる』って力が
周りにバレてしまう――――!
俺の固有スキルは――、
【固有スキル:コントローラー使い】
触れた物を顕現したコントローラーで操ることができる。
コントローラー使って操るって絵面自体
大分恥ずかしいのだが……
バレたら一番マズいのが『操れる』って部分。
これがバレたら、周りから――
『えっ!?操れるってそれ……手繰くんエッチなことに使うんじゃ……』
『おいおい……あいつには近づかないようにしようぜ……』
と、めちゃくちゃ警戒されてしまうッ!!
それどころか、現実の世界に帰った後も
操れるって能力が噂とかで
周りにバレていくと収集がつかなくなる……!
「え……みんなの前で発表するの……?」
女子生徒の一人が嫌そうに
女神に質問していた。
いいぞ!ナイス質問だ!
女神がスキル強化についてのアドバイスをするため
各々の固有スキルを把握しておきたいのは分かる。
だが、それなら女神に
1対1で見せれば問題ないじゃないか!
他の奴らに見せる必要はない!
「これからみなさん、協力して魔王を討伐するのですから、他の人の固有スキルも把握されておいたほうが戦略など立てやすくありませんか?」
なんて正論なんだ!
その通りじゃないか!
女神が真っ当なこと言ってやがる!
一部の生徒も自分の固有スキルを言うのが嫌なのか、
若干不満そうな顔をしている。
「ちなみに、固有スキルの自己申告では虚偽を話すのは絶対に許されません。もし後々、嘘だと発覚した場合には勇者として国から受けられるはずの援助が断たれたりなど、デメリットしかありませんよ」
半ば脅しのような内容に
発表をためらっていた生徒たちが
一様に黙りこくる。
「これにはちゃんとした理由があります。固有スキルの能力次第でこれから勇者それぞれに『ランク』を付けていくのですが、その『ランク』に応じて様々な待遇を受けることができます」
ランク付け……?
ランクによって待遇が違う……?
「これからみなさんに『勇者のランク表』をお配りします。まずはそちらをお読みください」
女神がそう言うと、後ろにいた白銀マントの集団が、俺たち勇者に紙を配りはじめた。
俺は配られた紙を見て目を疑った――。
―――――――――――
<勇者のランク表>
【レジェンダリー勇者】
世界を一人で救えるだけの力を持つ者。
最高峰の衣食住と装備の提供。魔王討伐に関連する全ての要望が通り、全ての活動に必要な資金が用意される。ただし、必ず魔王討伐作戦に参加しなくてはならない。
【エピック勇者】
成長次第で世界を救えるだけの力を持つ者。
一流の衣食住と装備の提供。魔王討伐における全般の支援を受けられ、活動に不自由ない資金が用意される。ただし、必ず魔王討伐作戦に参加しなくてはならない。
【レア勇者】
成長次第で世界を救う担い手となれる者。
豪華な衣食住と装備の提供。魔王討伐における全般の支援を受けられ、一定の資金が用意される。ただし、必ず魔王討伐作戦に参加しなくてはならない。
【アンコモン勇者】
一級の兵士・魔導士になれる素質を持つ者。
一般的な衣食住と装備の提供。魔王討伐作戦への参加は自由。私生活に困らない程度の資金が用意される。
【コモン勇者】
一般人と変わらないが兵士・魔導士になれる素質を持つ者。
最低限の衣食住と装備の提供。魔王討伐作戦への参加は自由。
―――――――――――
「なんだコレは……さすがにやりすぎじゃないか?」
俺たちの担任、岡守先生はこのランク付けに困惑を示すが――
「ランクの選定基準は『魔王討伐において有効な固有スキルかどうか』です。このランク付けによって、優秀なスキルを持つ勇者に集中して投資することで効率よく魔王を倒せるのですよ?」
言ってることはごもっともだが……
確かに格差が酷すぎる……。
特に『コモン勇者』――
最低限の衣食住と装備しか提供されない。
魔王討伐への参加も自由ってことは……
実質、戦力外通告――。
「当然、『レア』以上の勇者は待遇が良い分、必ず魔王討伐に加わらなければなりません。さらに言えば、魔王討伐において有効ではないスキルを持つ『アンコモン』以下の勇者を矢面に立たせて、みすみす死なせてしまうよりも良くないですか?岡守先生……」
女神はねっとりとした目線を
岡守先生に向けながら
納得させようとしている。
岡守先生を説得できれば
他の生徒たちをも説き伏せられる――
そういった目算で動いているようにも見える。
「分かった……だが、あまりにも酷い待遇を目撃したら、改善を要求させてもらうが良いか?」
「ふふっ……もちろんですとも」
女神は満足げな笑みを浮かべ――
「それでは早速、みなさんの固有スキルを教えてください」
俺のスキルは『触れた物を操れる』チート能力。
当然、ランクは『レジェンダリー』だろう……。
『レジェンダリー』の待遇は、この異世界で生き残るのに
非常にありがたいのだが――
当然、操る能力が周りにバレてしまい
警戒されてしまう羽目になる。
というより、魔王を倒した後
次に狙われるのが俺になる可能性だってある。
(いや、これは考えすぎか……)
虚偽の申告をするか……?
いや、バレた時のリスクが大きい……
だが……バレなければ……
ひとまず、他の奴らの発表を見ながら
考えることにしよう。
「それでは、どなたから発表されますか?」
女神は生徒たちを見渡すが
最終的には――
岡守先生を見つめている。
「…………俺からいこう」
さすがだ、岡守先生。
「ふふっ……楽しみですね……」