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第21話「食事のお時間」

「何かをするにもまずは腹ごしらえ。城にて食事をご用意しておりますので向かいましょう」


 王様にしばらく着いていくと

 城の大きさがよーく分かってくる。


 元の世界でこういった城を見たのは

 両親にノリで連れていかれた『夢の国』以来だ……


 いや……あの時見た城よりも

 数倍はデカい……


 城に入る前にも3階建ての家くらいの高さはある壁があり

 その門をくぐると、ようやく城門へと辿り着いた。


 生徒たちも壮大な異世界の建築物に大変騒がしい。

 特に女子だ。ここはテーマパークじゃないって。


 といっても、周りを見渡しながら

 若干俺もドキドキしている。


 これが海外旅行とかに行った時の気持ちなのかな……


 城の中もこれまた様々な芸術品やら装飾やらで

 ドキドキしてしまう。


 新しいゲームをプレイする時も

 ストーリーそっちのけで細部まで作られた

 建物の内装とかを丁寧に観察する時の感覚だ。


 王様に案内される最中も

 大きな階段やら廊下やら

 見るもの全てが新鮮だった。


 しばらくすると、大きな扉の前で王様が立ち止まる。

 両脇にはメイドが立っていた。


「お待たせしました。こちらが――」


 王様の声と同時に扉の両端にいたメイドが扉を開け――


「勇者様たちのためにご用意したお食事たちです」


 大きな扉をくぐるとそこには

 様々な料理が壁際のテーブルに並べられ

 一部のスペースでは料理人が直接調理をしていたり、これはまるで……


 ()()()()()()


「沢山の勇者が来られるという話でしたので好き嫌いがあってはいけないと思い、このような宴会形式の提供にしてみました。お好きなものを選んでいただき、ご自身で皿に取るもよし、近くのメイドに頼んで持ってくるもよし。テーブルや椅子も用意しておりますので、そちらで座って食べていただけますし、立食しながら歓談を楽しむのも良いでしょう。壁にも椅子を用意しておりますのでそちらも是非ご利用ください」


 生徒たちは一気にテンションがあがり、各々(おのおの)が好きなところに散る。

 料理を見に行ったり、席を友達と確保したり、料理人が直接料理をしているスペースへ行ったり……


 凄いもてなしだ……

 俺も行こう。


「先生〜一緒に食べよ?」

「え……俺か……?わ、分かった……」


 岡守(おかもり)先生は普段、女子たちにあんな声のかけられ方をするような人じゃなかったが、異世界に来てから好感度が上がりに上がって大人気だ。


 さてさて、どんな料理があるんだろう。


 多種多様な料理が並んでおり、

 サラダからスープ、魚料理から肉料理、そしてデザートやドリンク……


 急にお腹が鳴ってきた。

 そういえば今朝は朝食抜いてきたんだったな……


 育ち盛りの男子にとって、やっぱり最初に食べるのは肉!

 特に目の前の宝石のように輝くローストビーフは他の男子たちにも人気だった。


 よし、俺も……


「おい手繰(てぐり)()()()()()()()()()なーに肉取ろうとしてんの?w」


 …………お前は、唯有(ただあり)か。


「え……いや美味しそうだなぁ〜って」

「……いや、そういう話じゃなくて、なんで取ろうとしてんのかってこと」

「あー……」


 まじかー……これ多分あれだな……

 ()()()()()()()()()


 ランク判定の時に良くも悪くも注目を集めたせいで

 いじられる対象になっちゃったかもしれない。


 今まで影を(ひそ)めてクラスの中に(もぐ)り込んでたのに……くそっ……


「ご、ごめんごめん。俺みたいな奴が食べちゃいけないよね……」

「……………………」


 唯有(ただあり)は俺を()()()()()()()()()()()()()――


「冗談だってw……ほら、食えよ。俺が盛ったやつだけどお前にやるよ。話によればまだ追加で肉くるらしいし」

「え……?本当?」

「あぁ、もちろんだって。()()()()()()()

「あ、ありがとう……」


 ……だが、俺は――


「でも、やっぱり悪いよ。俺は追加が来るまで我慢するから唯有(ただあり)くんが食べて。()()()()()()()()()()()()()()()

「……そうか?……まぁ、なんかあったら俺に言えよ」

「うん、ありがとう!」


 ()()()()()()()()()()()()

 おそらく、唯有(ただあり)の皿を受け取ったら『俺を舐めてる』と思って後々報復(ほうふく)が来てただろう……


 かと言って、受け取らなかったら受け取らないで『俺の好意を無下にするのか?』と思わそうだったから、俺は(した)に徹して、唯有(ただあり)を持ち上げる戦法に切り替えた。


 これが(こう)(そう)したのか、その後の反応を見ても、問題なさそうだ……あぶねぇ……


 俺は目立たないように存在感を消しつつ、適当に料理を取って、壁際にある椅子に座り腹を満たす。


 新しいローストビーフが来ても、ここは取らないが吉か……。

 本当に余った時にいただこう。


 食事をとりながら、周りに気付かれないように周りを見渡す。


 いつもの学校のように、それぞれがいつものグループを形成しながら食事をしているが……()()()()()()()()()()


 唯有(ただあり)の周りには、いつもは不良しか寄りつかないが、何人かの女子も一緒に食事を楽しんでいる。

 この世界において一番最高ランクのレジェンダリー判定を受けたからか……モテモテじゃないか。


 続いて岡守(おかもり)先生の周りにも女子たちが群がる。岡守先生もモテモテだ……正直、俺も混ざりたい。


 あとは、俺のように壁際の椅子に座ってボッチ飯をしているのが数人か……


 …………あれ、()()()()()()()()――、


 同じくレジェンダリーでモテモテになってもおかしくない鈴木こと……『クリムゾン・アイズ・ブラック』が大量の料理を盛った皿と銀色のグラスを持ちながら、辺りをキョロキョロしている。


 この広間の中央でポツンと……。

 他のレジェンダリーはあんなに女子に人気なのに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()……。


 クリムゾン……なんか……切ないぜ……


 ……あ、()()()()()


 やばいやばい、こっち来る……。


「ふふっ、手繰(てぐり)。お前は一人か……仕方ない。俺が共にしてやろう……」

「あ、あはは〜……ありがとう……」


 しまったぁ〜〜〜ついクリムゾンを見過ぎた〜〜〜!


 しかも今の俺は良い意味でも悪い意味でも目立った存在……

 今まで避けていたクラスメイトからも声をかけられやすくなっている……


 俺は一人で飯を食いたいし、今後のことを考える時間が欲しいのに……


 だが、あまりにクリムゾンが可哀想で……とても断れなかった。


手繰(てぐり)……貴様(きさま)はゲームが好きなのか……?」

「あぁ……うん、好きだよ。鈴木くんもゲーム好きなの……?」

(われ)のことは気楽に『()()()()()』で良いぞ。そして我もゲームは好きだ」


「へ、へぇ〜……どんなゲームを普段はやってるの……?」

「ククッ……我は別次元の存在……ゆえに世界について知るためジャンルは問わずゲームを(たしな)んでいる……だが、最近やっていたのは人の常識を知るためのゲームだな……」

「へぇ〜……人の常識を知るゲーム……」


 シミュレーション系とかか……?


「特に女子の気持ちを読み解くのは本当に難解だ……数多(あまた)の選択肢の中から1つを選ばなければ悲しい結末が待っている……」

「女子の気持ち……数多の選択肢……それは難しそうだね……」


 多分、クリムゾンがやってるの美少女ゲームだわ。


「その中でも難しかった人はいたの?」

「ふむ……難しかった……ククッ……我にとってはどのような女子もイチコロなのだが、強いて言うなら――」


 この後、相当細かく美少女ゲームの話をしてくるクリムゾン……。

 俺は脳みそを空っぽにして『へぇ〜』『なるほど〜』『そうなんだぁ〜』と(うなず)くロボットになった。







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