表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/61

第13話「勇者の一人くらい……」

俺は操作している甲冑(かっちゅう)にガードの体制を取らせる。

相対するソーレは()()()()()()()()()()()


今のうちに目を閉じて、視界をTPS視点に切り替え

甲冑とソーレが視界に入るようにカメラ位置を調整する。


ひとまず、準備は整った。


さて……どうするか……


いくら兵士だからといってもソーレは女。

傷付けるのは後味が悪い。


でもなぁ……そんな甘いこと言ってられないよなぁ……


ソーレはおそらく女神から

『何らかの指示』を受けているはず……。


何かされる前に、この試合を早く終わらせたい。


…………わざと負けるか?


でも、兵士に負けたとあっては

勇者のランクが相当下になりそう……


…………よし、決めた!


ソーレには悪いが、()()()()()()()()()()


甲冑が装備しているのは木剣だし、死なせてしまうことはないだろう。

それに、回復魔法が使える人もいるし多少の怪我は許してくれ……


あとで謝るからさ――。


俺は甲冑のガード体制を解き

揺さぶりのために左スティックを左右にかちゃかちゃさせて

軽快なステップを踏ませる。


少しずつ……少しずつ……

ソーレとの間合いを詰めさせる。


甲冑――お前の性能……確かめさせてもらうぞ!


俺は攻撃ボタンを押し、

甲冑もそれに従い、木剣をソーレに向かって縦に振るが

ソーレはそれを最小の動きで横に回避――、


ソーレが反撃に甲冑に対して剣を突くが

すかさず回避ボタンを押して

甲冑は大きな音を立てながら後方にドッチロールをして回避――、


なるほど……甲冑の挙動はこんな感じが……


じゃあ次は……


甲冑は左右に軽快なステップを踏みながら

ソーレに近づいていく。


だが――()()()()()

(あお)るようにステップを踏み続ける。


ほれほれほれ〜〜〜


ソーレは警戒したのか、後方に飛び距離を取ろうとするが

俺もすかさずステップを踏みながら距離を詰める。


ほれほれほれ〜〜〜どこへ行こうというのかね。


ソーレも煽られていることに気付いたのか

目が鋭くなっているような気がする。


ソーレは後方に飛ぶのをやめ

瞬時に甲冑へと剣を突く――、


()()()()()()()、っと――。


俺はガードボタンをソーレの攻撃に合わせて押し

ソーレの攻撃を弾く。


出来る気がしてたぜ……()()()をよ……。


ソーレは剣が弾かれたことで

腹部(ふくぶ)に隙ができた。


美味しくいただきまーす。


俺が攻撃ボタンを押すと、甲冑は

木剣の先端を()()()()()()()()()()()()()()()()()


「ぐほっ……!」


ソーレは思わず、膝を落とし

その場に倒れ込んでしまった。


…………あ。


やっちまった……。


つい楽しんでしまった……。


ソーレはその場でピクピクと痙攣(けいれん)している。

あれ、大丈夫だよな……木剣だから……多分大丈夫だよな?


「女性と戦いたくないと言う割には、結構容赦ないことしますね」

「いやいや、あそこまで強い攻撃になるとは思ってなく……」




……………………。




()()()()()()()()()()()




いや、この声――――




「あぐっ!!」


気付けば俺は、背後から押し倒され

両腕を後ろに拘束されていた。


「一体……どうやって……」


俺を拘束していたのは()()()()()()


「あなたに教える義務も理由もありません」

「へぇ……いじわるしますね……」


俺は甲冑が戦っていた場所をチラ見すると――


確かにそこには今もなお

()()()()()()()()()()()()()()()()()()


どうなってる……ソーレが二人……?

……もしかして魔法ってやつか……?


「くっ……!」


拘束を振りほどけない……

こいつ……力強ぇ……


これは……仕方ないな……


()()()……」


悔しいが俺の負けだ……

両腕を後ろで拘束されて、コントローラーも扱えない。


だが……これで試合は無事終わる。

特に何か起こるわけでもなくて良かった……。


ギュ――――


しかし――、()()()()()()()()()()()


「おい、降参だ。俺の負け。だから早く離し――うぉぇッ!?」


ソーレは(ひじ)で俺の喉を押し潰し、無理やり黙らせてきた。


「っ――――な……にを?」


ソーレは俺の耳元で小声で(ささや)く。


「私……()()()()()()()()()……」


はぁ……?

知らねーよ。


ぐっ……息が……ぐるじ……


「だからさっき女神様に確認したんです。『()()()()()()()()()()()()()()()()()?』って……」


…………なに……言って――?


「そしたら許可をもらえたんです。『()()()()()()()()()()()()()』って……」


…………!?……おいおいおい――!!


「試合の前に女神様が言いましたよね?――『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』って……この意味、分かりますか?」


メキョギ……ブチッ――――


俺の右腕から()()()()()()()()()()()()


「んんんんんんんんーーー!!!!んん!!んんんーーーー!!!!」


痛みで叫ぼうとする俺の口をソーレは強引に(ふさ)ぐ。


今までの人生で味わったことのない痛みが走り続ける。


小指をタンスの(かど)にぶつけた時?

鉄棒(てつぼう)していた時に誤ってキンタマを思いっきりゴリっとした時?


全然、比にならない――。


血の気が引いて、冷や汗がびっしょりと体にまとわりつく。

意識が朦朧(もうろう)としてくる……。


どうやら失禁はしなくて済んだようだ……

少しずつだが痛みに慣れてきた……


いや、やっぱ痛いわ……。

けど……大分マシになってきた。


全身から力が抜けていく。

全然力が入らねぇ……


ガバッ――――


俺はされるがままに、ソーレに

うつ伏せの状態から()()()()()()()……


ソーレが俺に()()()()()()


なんだこれ……。


ソーレは俺の右手に手を合わせてきた。

最悪だ……女と手を繋ぐのは小学校の体育会以来だぞ……


こっちは右腕が折れてんだぞ……

離せよ……


ソーレは顔を近づけてきて――(ささや)く。


「では、死んでください……」


どこかに隠し持っていたのか、

俺の首元にはナイフが()えられていた。


女にこんな密着されて

嬉しくないって思うのは人生、最初で最後にしたいね。




()()()()()()()()




右手はソーレの手と密着し、()れているし

俺の左手にはコントローラーが(にぎ)られている。


俺は朦朧(もうろう)とする意識の中で

たった一つのことしか考えられなくなっていた。






()()()()()()――。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ