白銀美桜04
わたしたちが出口に向かうと、キリシュさんとベルナさんが立っている。
なんかもめごとでもあったのかな?
こっちの世界では、向こうと違っていろいろなもめごとがある。
それを退けてくれるのが、キリシュさんだ。
あまり強そうではないけど、元フィリップ組の人だったらしい。
今は芸能事務所になって、わたしたちのチーフマネージャーをしてくれている。
この世界のいろいろなことに精通していてたよりになる人だ。
「キリシュさん、大丈夫ですか」
わたしはキリシュさんに声をかける。
なんか、血まみれの人が転がってるし。
「大丈夫ですよ」
そう言って微笑むキリシュさん。
「あ、これは大変なところを、すぐに片づけます」
ベルナさんは慌てて転がっている人を片付けにかかる。
こういうのも、慣れてしまった。
たぶん、キリシュさんってすごく強いんだと思う。
ベルナさんは…強そうには見えないけど。
この人もすごい、この時間に終わっても翌朝にはライブ会場も練習室もぴかぴかになっている。
一体いつ寝てるんだって感じ。
劇場を愛してるんだなって思う。
「もし、治療が必要なら言ってください」
ベルナさんもなんか血だらけだし。
わたしの能力は歌でケガの治療をすることだから。
地味な能力だけど、自分では気に入っている。
「大丈夫です。一時間もすれば治ります。
美桜さまのお手を煩わせる必要はありません」
「そうじゃ。ベルナは大丈夫なのじゃ」
リムちゃんが言う。
そういえば、リムちゃんの知り合いのおじさんだったな。
リムちゃんが大丈夫っていうのなら大丈夫か。
「では、気をつけてお帰りください。
おい、ちゃんと守るんだぞ」
キリシュさんはボディガードの2人に声をかける。
本当は美羽と一夏がいたらそんなの必要ないんだけど。
キリシュさんにアイドルのやることではありませんってたしなめられたのだ。
「わかりました」
2人はキリシュさんに敬礼する。
わたしたちは寮まで送ってもらう。
って言っても3分くらいの距離なんだけどね。
出待ちとかもあるから、心配なんだろうな。
わたしたちが外に出るとなんか騒がしい。
みんなにつられて貴族街のほうを見ると、炎と煙が上がっているのが見える。
もしかして火事?
でも、遠いから大丈夫みたいだ。
なんか関係なさそうだ。
わたしたちは、火事騒ぎの中、寮への道を歩いていくのだった。