フィリップ組キリシュ22
「とにかく、ジュエルボックスに害があるものは、全部燃やさないとね。
ゴミはきちんと燃やさないといけないからね」
女はよそを向きながら言う。
たぶん、この女、怒りにまかせてとんでもないことをやったんだろう。
いきなり、出てきたやつを燃やすとか。
「でも、殺したのはクレメンス家の人間とマフィアだけだよ。
奴隷はみんなちゃんと解放しておいたしね。
いいことをしたって感じじゃないかな」
「まあ、ジュエルボックスとの関係はわかんないだろうな」
「そうそう、壁に『正義の味方参上!奴隷商人成敗』って書いておいたんじゃ。
たぶん、やつら、正義の味方がやったと思ってるはずじゃ。
おまえらと違ってわしはいろいろ考えてるんじゃ」
「もしかして、その恰好で行ったんですか」
「そうじゃ、これがわしらの戦闘服じゃからな」
胸をはるじじい。
いや、その恰好は。
どう考えてもライブ終わりのファンじゃねえか。
たぶん、こっちに話を聞きにくるだろう。
じじいのローブの背中にはジュエルボックスのロゴと一夏命、夜露死苦とか書いているし。
他のやつらも同じようなものだ。
このじじい、もしかして壁に落書きとか昔はやった暴走馬族とかそういうのじゃないだろうな。
「わかりました。
なんとか知らないで通します。
あなたがたも、これ以上、他でこのことを言わないでくださいね」
「大丈夫じゃ。
明日になったら忘れとる。
わしは自慢じゃないが、今日の昼ごはんを食べたかどうかさえ覚えておらんのじゃ。
鳥やドラゴンは脳みそがクルミくらいの大きさなのじゃ。
スライムはもともと脳みそなんてないしな」
何自慢だ。
「なんだと、じじい!」
おっさんがじじいを睨む。
じじいはしれっとしている。
「とにかく、これを持って帰ってください」
俺は4人に次のライブのチケットを渡す。
あんまりここにいてほしくはない。
たぶん、騎士団が探しているだろうからな。
「あっ、そうじゃ。
こいつはもらって行っていいかな。
なかなかのものを持っておる」
じじいはムサシの肩に手を置く。
「こいつは強いぞ。
人間、生きているときはいろいろ無駄なことを考えるが、死人はそんなことはない。
最強の死霊騎士になる素質がある」
ムサシはじじいが歩き始めるとその後ろをふらふらとついていくのだった。
その表情には笑みさえ浮かんでいるように見えた。




