求道者ムサシ02
わたしはキリシュとの戦いに集中する。
わたしたちくらいになると、相手の動きの読みあいとなる。
何手も何手も頭の中で戦う。
まるで将棋の名人戦のように。
もう、キリシュとの戦いは何度もシミュレーションしている。
わたしはイメージの中で戦うことができるのだ。
たぶん、キリシュも同じだろう。
わたしたちは向き合って静止する。
その瞬間から、脳内では戦いが始まっている。
相手の闘気を読んで、いろいろなケースを考えるのだ。
それはまるで実際の戦いと同じ。
これがキリシュとわたしの戦いだ。
そして、こんな戦いができるのは、この国ではいまのところキリシュだけだ。
この好敵手を倒してしまうのはもったいない。
しかし、これはわたしが超えるべき壁なのだ。
わたしはいろいろな動きを読んで、勝てることを確信する。
自然と唇の端が上がってしまう。
いかんいかん。
キリシュ相手に少しでも感情を読まれるのはよくない。
さて、行くか。
「おい、マネージャー何してるんだ。
もし困ったことがあったら、我に言ってくれ。
いつもチケットとか無理を言ってるんだからな」
わたしたちの戦いに割り込む声。
この闘気に満ちた空間に入り込むやつがいるのか。
わたしは、声の方を見る。
そこには、いかにも戦士という感じのおっさんがたっていた。
なんか白い法被に鉢巻とかしている。
こいつは…なんなのだ。
わたしは、とりあえずこいつの闘気を読む。
そして、この男と戦った場合のイメージを頭に浮かべる。
えっ、そんな。
イメージの中でわたしはこの男を斬る。
その剣は避けられて、男は距離をつめる。
そのまま、デコピンを一発。
それでわたしの頭はなくなる。
どういうことだ。
男の目を見る。
その目を見て、確信する。
わたしはこの男には勝てない。
キリシュなら修行をつめば、その差を埋められると思った。
しかし、こいつは無理だ。
この力の差は、絶対に埋まらない。
「何?こいつら?
もしかして、ジュエルボックスの敵とか?
燃やしちゃおうか?」
そこに、別の女の声が割って入る。
わたしはその女を見てしまうのだった。