求道者ムサシ01
やっとキリシュを追い詰めた。
長年追いかけていた敵。
わたしが初めて負けた敵だ。
それも簡単にあしらわれただけだった。
双頭の虎、破壊剣レナードと風の牙キリシュ。
2人の最強剣士を要するS級パーティだった。
キリシュはなんちゃってS級と言われるような男でわたしも期待していなかった。
双頭の虎はレナードだけという噂だった。
キリシュは身体も小さく、そこまで強いという感じはしなかった。
それで、レナードに挑んで、なんとか戦うことができることとなった。
それはわたしの勝利に終わった。
最後の一撃を入れる寸前にキリシュの剣が2人の間に割って入った。
その剣にわたしの攻撃は弾かれた。
わたしの攻撃が止められるのは、これが初めてのことだった。
わたしの刀から抜いた剣身は速すぎて見えないと言われていた。
わたしの剣はいつの間にか相手を貫いている。
その間に止められたことはなかった。
それをやすやすと行ってしまう。
わたしの興味はレナードから、キリシュに移った。
このへらへらした小さな男が双頭の虎を支えていることに気が付いた。
わたしはキリシュと戦うことに決めた。
それなのに、キリシュはたやすくわたしの間合いに入り込み、腹に当て身を決めた。
まともな戦いではなかった。
しかし、圧倒的な力の差を感じた。
わたしはキリシュを追いかけることができなかった。
それから、キリシュに勝つことが目的となった。
わたしはキリシュをつけねらった。
キリシュはわたしの相手をしてくれなかった。
別に不意打ちをして殺したいわけではない。
キリシュと正々堂々と戦うチャンスはめぐってこなかった。
そのうち、双頭の虎はドラゴンの山のクエストに出かけた。
それでレナードは死に、キリシュだけが戻ってきた。
そのクエストから帰ってきたのは、キリシュと後ろに控えていた新人冒険者だけだった。
そのあと、キリシュは冒険者をやめた。
わたしはキリシュと戦う機会を失ったのだった。
今回、極道会からキリシュと戦わせてやるという話があった。
うさんくさい話だが、わたしは受けることにした。
わたしはマフィアというのは好きではない。
基本的に弱いものいじめが仕事。
ただ、わたしは正義とかそういうのはどうでもいい。
修羅に身を落としても強くなりたいのだ。
最強の先になにがあるか知りたいのだ。
人間、どこまで強くなれるのか。
その先には、何があるのか。
俺はキリシュに勝つことによって、一段上に上がることができるのだ。
俺はキリシュに向かって闘気を身体に貯めるのだった。