フィリップ組キリシュ20
ムサシはにやりと笑う。
たぶん勝ちを確信したんだろう。
俺たちクラスになると頭の中で戦いをシミュレーションすることができるのだ。
そして、戦えば戦うほど、そのシミュレーションは正確になる。
たぶん、ムサシの脳内では俺との戦いは終わっているのだろう。
俺の方はそれを破る妙手が必要となる。
しかし、そんなものはない。
ただ、俺の動きは流派や基本に縛られない。
だから、相手が読んだとおりの動きになるかどうか自分でもわからない。
もし、俺の動きが相手を超えることができれば、なんとかなるかもしれない。
しかし、俺の脳内シミュレーションでは、ムサシに100回は斬られている。
ただ、ひとつだけ方法はある。
この動きなら、相打ちを狙えるかもしれない。
名付けて、骨を斬らせて骨を斬る。
いずれにせよ、俺が死ぬことは決定のようだ。
本当は彼女たちがもっと人気になっていくのを手伝いたかったな。
彼女たちの芸は本物だからな。
王都のみんなが彼女たちのライブに熱狂する。
そんな光景が見えるようだ。
俺は剣を下げる。
そう、ガードはしない。
心臓を貫かれたら、残った力で相手を斬る。
こんな方法しか思いつかなかった。
ムサシと俺は静止する。
次に動いたときに決着がつく。
「おい、マネージャー何してるんだ。
もし困ったことがあったら、我に言ってくれ。
いつもチケットとか無理を言ってるんだからな」
不意に俺たちの勝負を邪魔する声。
そこには美桜命と書いた純白の法被のおっさんが立っていた。
白は白銀美桜のメンバーカラーだ。
「何?こいつら?
もしかして、ジュエルボックスの敵とか?
燃やしちゃおうか?」
赤のジャージの女、背中には佐那ちゃん大好きって書いてある。
その他に緑のスーツの少年、青いフードのじじいもいる。
こいつらにフリップ組は潰されたのだ。
俺も一撃でのされた。
何もできなかった。
しかし、こういうイレギュラーを合図に相手が動くというのはある。
俺は、ムサシを見る。
様子がおかしい。
なんか、フリーズをしている。
どういうことだ。
俺はそのまま、ムサシの方に歩いていくのだった。